本当のアルバム完成形
「Ghost Stories Live 2014」 Coldplay ★★★★☆(4.5/5.0)
コールドプレイ6枚目のアルバム「Ghost Stories」は、世界中にその名を轟かせたVIva la Vida を含む4thアルバム、ポップさに振り切ったカラフルな5thアルバムときた流れからは想像できない作品だった。多くのファンが戸惑いを隠せなかった6thアルバムだが、今回はそのライブCDをあえてレビューしたい。
Topic 1 モノクロの世界
「Ghost Stories」は、前作のカラフルさから一転して、一貫したモノクロ調のコンセプトアルバムだ。Vo.クリスマーティンの妻との別離がどうみても影響した作品だ。モノクロ調の作品と言えば、コールドプレイ最高傑作(と個人的にみなしてる)2thアルバム「静寂の世界」が思い浮かぶが、あの作品がピアノやギターなどを用いて時にその激情を表現していたのに対し、今作ではエレクトロ系のアプローチで努めて欝々とした沈み込むような感情を表現している。
Topic 2 寄り添いやすい作品
とこのように書くと、とっつきにくい作品だと誤解されやすいが、実は寄り付きやすい作品なのだ。これまで、特に前作ではスケールの大きい音楽で、これぞ世界のビッグスターといった作品だったのだが、前述のとおり今作は離婚を経て、悲しみ嘆く男の作品だ。それはもうちっちゃい。ミニマムなのだ。そして、その誤解を解くべく、ライブCDを一度聴いてほしいのだ。
Point 1 ライブの雰囲気
スタジアムアーティストであるコールドプレイでしたが、今作の作風に合わせホール級の比較的小さな会場でライブが行われました。客との距離感がいいし、演奏するバンド側も肩の力が抜けた感じでアルバム以上に暖かい雰囲気が演奏やアレンジに現れています。
軽快なナンバーである「Ink」、大げさに盛り上げるようなアレンジでなくても観客との掛け合いもあり、ライブでもベストアクトなんじゃないかと。
そして、溜めて溜めての「A Sky Full Of Stars」。アルバムでも沈み込んでからの解放感が半端ないんですが、ライブでは観客の爆発的な反応をあいまって、クライマックス感がすごいです。
観客との距離感が近い中で演奏されて、初めてこの「Ghost Stories」は完成したのではないかと思います。このライブを一度聴いたうえで、もとのアルバムを聴いた時の理解の度合いは全然違います。そして、つらいときに寄り添ってくれるような大切な作品になってくれると保証します。隠れ名作だやっぱ。
- Always In My Head ★★★★
- Magic ★★★☆
- Ink ★★★★☆
- True Love ★★★☆
- Midnight ★★★☆
- Another's Arm ★★★
- Oceans ★★★
- A Sky Full Of Stars ★★★★☆
- O ★★★★
Ghost Stories Live 2014 (CD/DVD Pack)
- アーティスト: Coldplay
- 出版社/メーカー: WARNER
- 発売日: 2014/09/17
- メディア: CD
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洗練というにふさわしいが…
「The Getaway」Red Hot Chili Peppers ★★★★(4.0/5.0)
「こ、これが大人な魅力というものなのか…」昨夜、私は信じられないといった表情でこうつぶやいた。バーで年上美女に口説かれたわけではない。(そうあってほしいが)
そうではなく先日加入したばかりのApple Musicで、CD購入を待ち切れず配信されたばかりのレッチリ新作「The Getaway」を聴いたのだ。これは、起こる。レッチリファンの大論争が…。
Topic 1 それはちょっとした事件だった
混乱するのも無理はない。RadioheadやJake Buggといった注目のアーティストの同時リリース(レディオヘッドは既に配信していたが)、James Blakeも含め先月からのリリースラッシュに世界10億のロックファンは動揺していた。そしてレッチリは衝撃を与えるべく5年ぶりの新作を携え、帰ってきたのだ。
Topic 2 新ギタリストジョシュの本格参加
前作より、ギタリストがジョンフルシエンテからジョシュ・クリングホッファーへ替わっていたのだが、その前作「I'm With You」自体は、ジョン在籍時の楽曲とあまり変わらないようなアプローチであり、ジョシュの参加よりもむしろ勢いを取り戻したかのようなベースのフリーあるいはドラムのチャドがグイグイ引っ張っている印象であった。そういう意味で、加入より6年以上経たジョシュが、どんな色を出してくるのかにもとても注目していた。
Point 1 明らかに違うサウンドプロデュース
全体を通して、サウンドプロデュースであったりアレンジが洗練されている気がする。これはおなじみのプロデューサーリック・ルービンから代わったデンジャー・マウスの影響だろうか。
先行されていた楽曲、「The Getaway」もそうだが、「Dark Necessities」こいつが凄い。ピアノやリズム隊のソリッドな演奏が初聴の時点で印象的だったが、聴きこむほどに更によく聴こえてくる。ジョシュのギターも、ジョンとはまた違う音作りやメロディが如何なく発揮されている。よく「ガム曲」「スルメ曲」と言われるが、こいつはどっちも備えたハイブリッド型で、間違いなくこれまでの名曲に肩を並べるのだ。
Point 2 Gt.ジョシュが放つ色
前述したように、Gt.ジョシュが今作ではようやく自分の色を出している。「Goodbye Angels」は確かVo.アンソニーの失恋をもとにした楽曲なのだが、ベースと絡み合うギターがいい。そして、「Sick Love」渋いギターの面目躍如である。2分過ぎのギターソロを聴いてくれ。この空間系の音作り。これを待っていたのだ。これまでで一番かっこいいジョシュのギターがそこにあった。必聴。
Point 3 リズム隊による引き締め
ピアノだったり、女性コーラスを大胆に取り入れたりした楽曲も並び、中盤以降中だるみしてしまいそうだが、ベース・ドラムの演奏が相変わらずうまく楽曲を引き締めている。終盤メランコリックな曲調が続くが、「Encore」は落ち着いたメロディにソリッドなベースがうまくグルーブ感を生んでいるし、「The Hunter」では派手ではないが静かで限界まで贅肉をそぎ落としたようなドラムが曲の哀愁感を引き上げている。
集大成が、「Dreams of a Samurai」である。ピアノから入り、サイケデリックな女性コーラスからギターと鋭いリズム隊が絡み合うセッション臭い一曲に、このアルバムのほとんどが詰まっている。事前予想どおりの名曲でよかった笑
プロデュースの効果だろうが、13曲50分少々でアルバムとしても尻すぼみにならない構成になっており、まさに盤石の作品となっている。ただ、悔やむべきは文句なしのアッパーチューンだけが足りないことだろうか。メロディの強い楽曲が少なく「Can't Stop」「By the Way」ばりの一発ノックアウトされるような楽曲があれば、間違いなく最高評価だっただろう。
興奮のあまり非常に長々と書きすぎてびっくりしましたが笑(文字数を確認して)、とにかく落ち着いた大人な作品(個人的には前作より好き)である。ベテランとしてのこの作風、これまでのレッチリとしては星3つ半、いちアーティストとしては星4つといったところだろうか。おそらくファンは賛否両論だ、これまでを良く知る人ならなおさら。ただひとつ、意外とライブでの演奏で化ける楽曲多いと思います。「Dark Necessities」はもちろんだが「Go Robot」「Sick Love」あたりはめっちゃ聴きたいですね。そういう意味でフジロックいけないのは残念です。行かれる方、もちろん必聴ですよ笑
- The Getaway ★★★☆
- Dark Necessities ★★★★☆
- We Turn Red ★★☆
- The Longest Wave ★★★☆
- Goodbye Angels ★★★☆
- Sick Love ★★★★☆
- Go Robot ★★★★
- Feasting on the Flowers ★★☆
- Detroit ★★☆
- This Ticonderoga ★★
- Encore ★★★☆
- The Hunter ★★★☆
- Dreams of a Samurai ★★★☆
ずっと聴いていられる深み
「A Moon Shaped Pool」Radiohead ★★★★☆(4.5/5.0)
先月、世界中の音楽ファンに突然の新作を配信により発表したRadiohead。
今週水曜に国内盤がリリース、明日にはいよいよ全世界でCDリリースされる彼らの5年ぶりの新作、9thアルバムを一足先に紹介したい。
Topic 1 純粋に音楽としてどうか
彼らは、代表作「OK Computer」や「KID A」を始めとして、作品は常にその革新性と共に語られてきた。作品としての魅力は申し分ない。しかし、俗にいう音楽マニアの中には、Radioheadを褒めておけばいい風潮を感じる人も多いし、彼らの音楽を聴くのに音楽的素養を求めるような論調の人もいる。実際今作の感想をネットで様々見た中にも、試聴者の音楽的素養を前提としてどうなのか、みたいなものもあった。もちろん、そういった知識からアーティストの狙いに気づくことも聴く側の楽しみのひとつだ。ただ、メインじゃない。聴いた楽曲から感じることこそ重要なのだ。
Topic 2 派手さはないが深みはある
そういう持論から、レビュー自体がどうしても主観的な感想ばかり並んでしまうかもしれないが、「かっこいい」とかだけでは魅力は伝わらないはずなので、なんとか上手く伝えたい。(下手くそだろうが少しずつ上達すれば…うーん笑)
長々無駄話が続いたが、今作に革新性だったり、派手な展開だったりは少ない。かつての「The Bends」のような轟音ギターはもちろんない。(今さらそれを求めるファンは少ないだろうが)でも、どこかにいい意味での「違和感」がある。(余談dが、名曲の条件は、普通の曲にはない「違和感」だと思っている。)この違和感が何度も聴きこむうちになじんでいく感覚。これこそこのアルバムの深みである。
Point 1 印象的なコーラスとストリングス
先行公開されていた「Burn the Witch」から、先日レビューしたように新鮮なストリングスの取り入れ方が耳を引く。そして、同じく先行公開の「Daydreaming」と「Decks Dark」は静かな曲調だが、美しいコーラスが効いている。以前にレビューした際にも言ったのだが、曲に童話感というか異世界感が感じられるのは、このコーラスのせいなのか。
Point 2 多様なメロディを彩るアレンジ
このアルバム、何よりボーカルであるトムヨークの優しい歌声が素晴らしい。派手ではない曲調の楽曲が並ぶアルバムを決して地味なものにしないのはこの歌声とメロディの賜物だ。
そして、多彩なアレンジも違いを生み出している。「Desert Island Disk」ではアコギにドラムのリズムが絡み合って、テンポは遅いのに踊れるような錯覚さえ感じる。「Ful Stop」、「Identikit」は待望のエレキギターも躍動しつつBPMの高い勢いのある楽曲だ。この2曲は結構ライブで聴くのが楽しみだ。なんだかんだ言ってもやはりロックキッズの血だろうか。
後半の楽曲も、派手ではないがメロディの良さとアレンジが効いている。そんな中異色なのが最後の曲「True Love Waits」。一転してピアノとトムの歌声のみで進行する曲だ。コード進行もシンプルだが、何より最高の歌声だろう。この曲を聴いていると、どこまでも沈み込んでいくようで、これまでの複雑かつ多彩なアレンジとは対照的なこの楽曲がこのアルバムを更に高めている。
もはや、かつてのような革新性はないし、派手さもないが、これまでのキャリアにも裏打ちされた確かな技量が見事に発揮された作品だと思う。何周しても飽きないし、聴きやすい。ライブでは、どう再現されるのか。サマーソニックでの来日公演も非常に楽しみだ。そして、おそらくまた楽曲の感想も変わってくるんだろう笑
- Burn the Witch ★★★★☆
- Daydreaming ★★★★
- Decks Dark ★★★★
- Desert Island Disk ★★★
- Ful Stop ★★★★☆
- Glass Eyes ★★☆
- Identikit ★★★★
- The Numbers ★★★☆
- Present Tense ★★★☆
- Tinker Tailor Soldier Sailor Rich Man Poor Man Biggar Man Thief ★★★★
- True Love Waits ★★★★☆
A Moon Shaped Pool [国内仕様盤 / 解説・日本語歌詞付] (XLCDJP790)
- アーティスト: Radiohead,レディオヘッド
- 出版社/メーカー: XL RECORDINGS / BEAT RECORDS
- 発売日: 2017/08/11
- メディア: CD
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エミリーが生まれ落ちた日
Esperanza Spalding JAPAN TOUR 2016 @梅田Club Quattoro
今回ライブがあった梅田クラブクアトロ。地下鉄御堂筋線を利用しましたので、梅田駅南改札口を出て、「Whityうめだ」という地下街を進み、泉の広場からM-14出口を出てすぐそばにありました。ここでのライブは今回で2回目でした。
以降、ネタバレあり。なのでここで一言。運よくこの記事を見て、東京公演を検討されている方がいらっしゃったら、迷わず行け!!行けばわかるさ(それくらいイイよ笑)
Point 1 コンセプトアルバムのビジュアル的再現
舞台には、本棚だったり外国でよく見る柵?のようなものにメルヘンチックな装飾まであり、今回のアルバムのコンセプトを表しているようだ。
10分程あやしげなインスト曲が流れたのち、バンドメンバーが登場。続いて、いよいよエスペランサが登場。おなじみのアフロヘアに黒と白のごついドレスを着て登場、会場も沸き立つが、ここから某小林幸子ばりの衣装細工でさなぎのようなものが全身が覆われ、中か膜を破り、王冠を載せ、ドレッドヘアをたなびかせるエスペランサ改めエミリーが誕生。ここから本編スタートだ!!
アルバム「EMILY'S D+EVOLUTION」の曲中心に演奏された。
冒頭の「Good Lava」から素晴らしい演奏で心が掴まれる。
一方で曲間には小芝居も挟まれ、ミュージカルのようでもあった。おそらくこれもコンセプトを表す一環なのだろう。
Point 2 エンターテインメントとして成立させる抜群の演奏力
コーラス隊の女の子が不意打ちでギターを持ち出しバッキングギターを担当したり、同じく高身長の男性が怒って舞台中央の椅子に座り込んで決まったりと、思わずクスリと笑わせるような演出もさておき、圧巻だったのがアルバム内でも輝いていたグッドチューン「Funk the Fear」。イントロからタイトな演奏で引き込み、間奏を迎えるとバンドメンバー全員が自由奔放にパフォーマンスし出す笑 楽器隊3人が迫力あるJam セッションを始めると、コーラス隊は舞台中央でまるで主役とばかりにダンス大会を始め、しまいには客席にも乱入し、もうどっちを見ればいいのか分かりませんでした笑
そして、本編ラストには楽器隊3人により再びジャムサッションが始まる。これは、もうギター、ベース、ドラム全部に見せ場があり、レッチリばりの熱量を誇る素晴らしいアクトでした。会場はこの日一番の盛り上がりを見せ演奏終了。照明がつき、BGMが鳴り始めるも観客はアンコールを求める拍手が鳴りやみません。
すると、エスペランサが一人でベースを携え登場。MCを交えつつ一曲披露。
素敵なアンコールが見られて幸せでした。
アルバムのコンセプトをビジュアル的にも再現しつつ、タイトで完璧に構築された演奏が見事でした。間に挟む芝居などのおかげもあって、雰囲気自体は和やかでほんとにいいライブでした。エスペランサのボーカルとしての実力と、ベーシストとしての実力どちらも堪能しました。やっぱり世界レベルはすごいです。
確認できればまたセットリストあげます。
追記
セットリスト
M1 Farewell Dolly
M2 Good Lava
M3 Rest & Pleasure
M4 Ebony & Ivy
M5 Elevate or Operate
M6 Noble Nobles
M7 Judas
M8 Funk the Fear
M9 One
M10 Earth to Heaven
M11 Unconditional Love
En1 Controversy(Prince cover)