音楽紀行(ライブレポ、アルバム感想・レビュー)

ライブに行ったレポートやアルバムの感想・レビュー。好きな音楽を見つけるツールにも

「If Love Is A Law」と「Dead In The Water」和訳&考察

「If Love Is A Law」和訳

Here am l

ここさ
I'm high up on a ledge

僕は岩礁の上高く、
I'm standing on the edge of night

夜の淵に立つ
In a lonesome town

寂しき街に
Where love has been and gone

愛する君の姿はなく
I'm waiting for the storm to come back

僕は待つ、嵐がまた来て
And take me down

僕を連れ去ってくれるのを
The things I left unsaid

口にできなかった言葉が
Were lying on the bed

ベッドの上に転がっていた
Right next to the face you wore

顔をしかめる君を隣にしていながら…
When you left me on my one

そして君は僕のもとを去り
Now I'm up here on my own

僕は今ひとりここにいる
And I must say…

だからこう口走るほかない…
(※)I didn't come here to make up your mind

君に別れを決心させるためにここに来たんじゃない
But, I do believe that you were wasting my time

でも、君はそんな僕との時間を台無しにした
There's no more tears left to cry myself blind

いっそ我を忘れて泣きわめきたくても、涙はとっくに涸れてしまった
If love is the law then this is a crime

もし愛のあるべき形が法律で決まっていたなら、この別れは罪だろう

 

Memories

思い出は
Forever set in stone

僕の中に永遠に刻みつけられている
When all is said and done

結局思い返すと、
They're just like the falling leaves

とりとめのない落ち葉のようなものなんだけれども
That you gather in your head

君の頭の中にも降り積もっているはずさ
When the sun's about to set

日が沈もうとする最中に
I sail out on stormy seas

僕は荒れ狂う海原へ漕ぎ出す
But, I cannot find the shore

でも君のいる向こう岸は見当付かず
Can't hear you anymore

君の声だって一切届かないのだから
And there's nothing left for me

僕には何も残っていない
I'm lying broken on the glass

僕は粉々になったガラスの上へ横たわる
And this ship's about to crash

この船は今にも難破するだろうから
And I must say…

こう口走るほかない…

(※)繰り返し

 

「Dead In The Water」和訳

…For the shore

…君のいる向こう岸へ向かう
As the night is slipping through my hands

僕の両手から夜陰は滑り落ち
l fall into the sea

僕は海へと沈んでいった
Like the empire built on the sand

砂上の楼閣であるかのような
I've been thinking 'bout the days 

あの日々を僕は思い返していた

When we had no money

僕らが一文無しだったあの頃
That photograph of you

あなたのあの写真
Well it still seems funny

今みてもおかしく思える
Gotta get back to the promised land

さあ、約束の場所へと辿り着かないと…
(※)So don't walk away love

だから愛する君よ行かないでくれ
There's never enough
That could make me crash
On the broken glass

粉々になったガラスへと倒れ込むにはまだ早い
Let the storm rage

嵐が吹き荒れたって構わない
I'd die on the waves

僕は波に飲まれて息絶えるかもしれない
But, I will not rest

それでも僕に安らぎは訪れない
While love lies dead in the water

水の中で君との愛が消えてしまわぬ限り
Dead in the water..

水の中で息絶えていく…


I'm waiting for the calm

僕は嵐が静まるのを待っている
As the storm is getting under my skin

心までも嵐に翻弄されながら
I'm trying to fix the hole in my head

僕はぽっかり空いた頭の穴を懸命にふさぐ
Where the rain gets in

雨がそこへ降り注ぎ
It's dripping in my ear

耳へと滴り落ちてくる
And it don't sound funny

それは間抜けな話じゃない
I'm gonna take you out

僕はきっと君を連れ出す
When I get some money

少しお金を手に入れたら
We're trying to get it back to the promised land

僕らは約束の場所へと辿り着かないと…

(※)繰り返し

 

 この2つの歌はNoel Gallagher′s High Flying Birdsの新作「Who Built The Moon ?」に収録されている2曲である。

 本作は「まるで映画である」コンセプトアルバムでもあるが、愛について歌っている歌詞についても注目して聴くとまた素晴らしい。

 紹介したこの2曲は世界観が同じものだ。「If Love Is A Law」で「僕」は愛する君との別れを嘆き、海の向こうにいる彼女を追って海原へと漕ぎ出す。

「Dead In The Water」では、荒れ狂う海に沈み、水中で今にも息絶えようとする中、彼女への愛情を確認し、2人の「約束の地」へと思いをはせる。

 美しくも儚い世界観です。

 

 

 

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 メロディに乗せてここまで儚い愛について歌ってみせたノエル、惚れてまうやろ~というオチ。

音楽の坩堝の中で

「Who Built The Moon?」Noel Gallagher′s High Flying Birds (★★★★☆)

 ノエルの新作は、リアムの起死回生の傑作リリースから遅れること1ヶ月、ようやく世に出た。

 この作品はとんでもない、そう断言できる。じっくり感想を。

 

Topic 1 誰もが予想し得ぬ内容

 2ndアルバムのリリース後、ノエルはワールドツアーに回るとU2のツアーに帯同したりとライブ活動を続けつつ、新作についての情報が出たのは夏もそろそろ終わるという9月。そして先行リリースされたのは「Holy Mountain」だった。予想し得ぬ曲調にファンはもちろん驚いた。

Topic 2 賛否両論を巻き起こす

 Oasis,そしてソロでの2作では明らかに見られなかったような楽曲である。

 ノエルが「賛否両論は想定していた。」と語ったように、ファンは明らかに動揺していた。底抜けに明るいメロディ、意図的な音作り、音数の多さ。(ポール・ウェラーがオルガンで参加!)今度のアルバムで一体何が起こっているのか、ファンの議論は続いた。

 

Point 1 多彩な音楽で愛を歌う

 冒頭のインスト曲「Fort Knox」、前述の「Holy Mountain」に始まり、あのマーヴィン・ゲイが思い浮かんだという「Keep On Reaching」や、インドだかエジプトの風味を感じる「Be Careful What You Wish 」など、まるで全部別人が書いたんじゃないかってくらいに多彩だ。思えば前作でも様々な試行錯誤があったのだが、今作では見事にそれを昇華させた感じ。

  一方でこの作品では一貫して「愛すること」について歌われている。多彩な楽曲たちを一貫したテーマでつなぐ、このアルバムを一言で表すならばきっとこうなる。

 

Point 2 メロディの魅力

 様々なジャンルの曲に意欲的にチャレンジする今作において、生命線はメロディだ。

 本作のテーマである愛についての歌は、メロディによってとてもドラマティックに伝わる。確かにOasisでの楽曲のようなシンガロングが巻き起こるようなキラーチューン的なメロディではないが、ノエルのソロであることや今作は音数が多いことを考えるとあっさりめで良かったように思える。

 「It′s A Beautiful World」は愛の本質を歌う、本作の核となるような曲だが、まさにノエルが歌う必然性を感じるメロディである。

 これまでのソロ作品の一部は、「これリアムが歌ったらどうなるだろう?」なんて考える余地がある曲もあったが、本作の楽曲たちはノエル以外が歌うシーンを想像できない。

 

Point 3 一編の映画のように

 このアルバムを聴いていると、一編の映画のように感じる。

 騒がしいだの、運動会に流れそうなどと言われた「Holy Mountain」も、物語の始まりを高らかに告げる曲だと考えれば納得である。

 曲間に挿入されている「Interlude (Wednesday Part 1)」はフランス映画に流れてそうなイメージで作ったらしく、物語をうまくつなぎ、終盤へと導く。 

 「If Love Is The Law」は、ジョニー・マー(前作に引き続き参加!)のギターやハーモニカもあり明るい曲調でありながら、歌詞は悲壮な別れを歌っている。(邦楽で言えばMr.Children「Over」みたいなイメージ)相手を失った悲しみに涙を枯らし、「If love is the law then this is a crime(もし愛が法律であるならば、これは罪である)」と別れを恨む一節は至高。(ボーナストラックである「Dead In The Water」とは世界観を共にする楽曲だと思われる、別記事にて紹介)

「If Love Is A Law」と「Dead In The Water」和訳&考察 - 音楽紀行(アルバムレビュー)

 

 今作で最も衝撃度だったのはラストの「The Man Who Built The Moon」だった。前曲の明るい余韻を消し去るような壮大でダークな曲調、(ノエル曰く1年以上かけて書いた)サビの部分はなんとも表せない感覚だ。メロディの裏でストリングスが入るが、不協和音にならないギリギリを狙ったような違和感を(おそらく意図的に)与える。聴き手をパッと突き放したまま闇へと消え去ってしまうかのように「End Credit (Wednesday Part 2)」が流れる。こんな終わり方はこれまでなかったし、想像もできなかった。

 

  圧巻である。これまでにOasisとしてあらゆる楽曲を世界に送り出しているノエル。今作は「オアシス印」を拭い去り、でもメロディの良さは殺さず、これまでにない様々なジャンルの楽曲を並べた意欲作であり、ノエル自身の冒険心が生んだ傑作だ。ぜひアルバム通して聴いて欲しい作品。

(追記 ボーナストラック2曲も良い曲!あと国内盤のDVD特典も各楽曲の解説やノエル50年史と盛りだくさんで面白い!)

 

  1. Fort Knox ★★★★
  2. Holy Mountain ★★★★
  3. Keep On Reaching ★★★☆
  4. It′s A Beautiful World ★★★★
  5. She Taught Me How To Fly ★★★★
  6. Be Careful What You Wish For ★★★
  7. Black & White Sunshine ★★★★
  8. Interlude (Wednesday Part 1) ★★★☆
  9. If Love Is The Law ★★★★
  10. The Man Who Built The Moon ★★★★★

(太字がベストトラック)

 

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宇宙クラスのスケールへと飛び込む

 MUSE来日公演「MUSE Presented by Hard Rock Experience 日本版IRの未来」@横浜アリーナ(2017.11.14)

 MUSE来日公演2日目はスタンディングブロックでの参加。2日目の模様は公式Facebookでも横浜アリーナから生中継されるとのことで、どんなパフォーマンスが飛び出るのか期待…。

 Point 1 1日目の異なる選曲!

 「Dig Down」「Psycho」と始まり、もうスタンディングブロックは盛り上がりが段違い!サビの大合唱はもちろん、海外のライブみたいにギターリフの合唱まで起こっていて、「スタンディングでの観戦は大正解だった!」と即確信。

 そして不意打ちの「Hysteria」がめちゃくちゃ良かった。ファン人気のこの曲を僕はそこまで好きではなかったのですが、イントロでのクリスのベースがかっこよすぎて思わず涙が…ライブを通じて凄く大切な曲になりました。

 更には「Stockholm Syndrome」まで飛び出し、強力なラインナップに会場大盛り上がり!そして早くも僕は息絶え絶えに笑

 「New Kind Of Kick」や「Munich Jam」では、(2日目は音の調子も良かったこともあり)スタンディングで近い位置から聴くと、楽器の鋭い演奏がより一層伝わってきました。 クリスとドムが、いかに実力ある演奏者で、バンドの個性を形作るリズム隊としての魅力を持ってるか、じっくりと味わえる場面でした。

Point 2 多幸感溢れる会場

「Starlight」では昨日同様に大御所演歌歌手と化したマシューがセンター席を闊歩していく笑運良く僕もハイタッチ出来てめちゃくちゃ嬉しかった!もちろんスタンディングの人たちは皆この辺りから訳が分からないテンションになってました!

 「Mercy」では人型の紙吹雪も大量に舞い、多幸感溢れる観客席をよりきれいに彩っていました!間違いなく「Drones」というアルバム~新たに生まれた今後のライブ定番アンセムです。

Point 3 異空間に包まれる 

 「The Globalist」から聖歌隊とマシューの歌声がこだました「Drones」は、この日のライブで唯一、観客の誰もがその異世界のような空気感に包まれ、ただゆっくりと飲まれていくような瞬間でした。

 

「Knights Of Cydnia」のシメはやっぱり最高の一言で、最後の最後まで観客が大合唱で1つになるのはさぞや美しい光景だったと思います。

 2日間の参加でしたが、洋楽を聴き始めた当初から長く聴いていたアーティストの初めてのライブはやっぱり想像を易々と超えてくるし、凄く大きな衝撃を残していきました。

 

 やっぱり次回来日の際には大阪など複数都市でのライブでMUSE旋風を日本列島に轟かせて欲しい、なんて強く思いながら横浜の町を後にしました。終了!!

2日目セットリスト

  1. Dig Down (Intro:SFX)
  2. Psycho (Intro:[Drill Sergeant])
  3. Hysteria(Intro:′Back In Black′ riff)
  4. Plug In Baby
  5. The 2nd Law: Isolated System
  6. Stockholm Syndrome(Intro:′Reapers′ riff Outro:′Reapers′′Endless Nameless′ riff)
  7. Super Massive Block Hole
  8. Take A Bow
  9. New Kind Of Kick (The Cramps cover)
  10. Madness
  11. Dead Inside (Intro,Outro:′Who knows Who′ riff)
  12. Munich Jam
  13. Starlight
  14. Time Is Running Out(Intro:′Voodoo Child′ riff)
  15. Mercy
  16. The Grobalist
  17. Drones
  18. Uprising
  19. Knights Of Cydnia (Intro:′Man With A Harmonica′ Outro:′Abbey Road′)

 

Dig Down

Dig Down

 

 

 

Drones

Drones

 

 

アスリート系スタジアムバンド

 MUSE来日公演「MUSE Presented by Hard Rock Experience 日本版IRの未来」@横浜アリーナ(2017.11.13)

 MUSE待望の来日公演に2日間行きました!高校生の頃から聴いていた大好きなバンドで、ようやく初めてライブが見れる!と楽しみにしていました、ほんとに凄かった…

 2日間の感想をつらつら書きます。

Point 1 横浜アリーナにて 

 1日目はじっくり演奏や演出、会場の盛り上がりを感じよう!とアリーナ指定席で見ていた。(横浜アリーナはスタンディング部分がセンター席、1階指定席がアリーナ席、2階指定席がスタンド席となっていて注意が必要!)

 アリーナCブロックということでステージ真っ正面後方の位置なんですが、アリーナの割に凄く会場の距離感がコンパクトに感じる!

 Point 2 ライブの玄人

 入場の遅れなどもあり、やや時間押しで開演。

 開幕は最新曲「Dig Down」で、この選曲がまさに玄人の仕業。MUSEの登場に早くも大歓声が湧く中、彼らはじっくりじっくりとこの曲を聴かす。照明も相まってじわじわと会場をマシューのハイトーンボイスが染め上げていく感覚。そしていつ感情を爆発させてくれるんだ…という焦らしプレイ。

 そしてためてためての、「Psycho」ですよ!!しっかり訓練されたファン達の「アイサー!!」と揃ったレスポンスが輪をかけて会場を熱くし、いよいよスタート!といった具合。

 「Plug In Baby」を続けざまに披露すると、早くもサビの大合唱!日本人は合唱しないなんて幻想はここにはない。

Point 3 サプライズだらけのステージ

「日本では15年ぶりの披露だね!」と言って演奏されたのはなんと、「Showbiz」!この選曲には度肝を抜かれたファンも多かったはず…。今回はアルバムツアーではないため、自由なセットリストが組めるのだろう。

 ライブは進み、「Starlight」ではマシューがど派手でカラフルな着物を羽織り、なんとステージを降りセンター席を練り歩く!このサプライズには観客も「もうとにかく騒いでしまえ!」となってこの日1番の盛り上がりを見せました。

 終盤の「The Globalist」は、今回のライブを語るには外せないハイライトだ。この日唯一のマシューによるピアノに始まり、めくるめく展開から「Drones」へとつながる流れは美しく、固唾を飲んでじっと聴いているしかなかった…(「Drones」ツアーでの単独公演がなかったとことかも考えの選曲だったのかな?)

 

 ラストは「Uprising」からの「Knights Of Cydnia」で、夢だったあのギターリフの大合唱もバッチリ巻き起こっていた!

 こうして祝祭のような晴れやかな雰囲気のまま、流れるように終演を迎えた。

 MUSEは力強いロックバンドで、なおかつストイックで鋭い印象。4月に観たColdplayが「エンターティナー的スタジアムバンド」だとしたら、MUSEは「アスリート的スタジアムバンド」だなあと感じた。とにかくよかった!明日はどんなことが起こるだろうか…と期待を膨らませつつ公演2日目に。続く

1日目セットリスト

  1. Dig Down (Intro:SFX)
  2. Psycho (Intro:[Drill Sergeant])
  3. Map Of The Proglematique(Outro:′Who know who′ riff)
  4. Plug In Baby
  5. The 2nd Law: Isolated System
  6. Showbiz
  7. The Handler
  8. Super Massive Block Hole
  9. New Kind Of Kick (The Cramps cover)
  10. Madness
  11. Dead Inside (Intro,Outro:′Who knows Who′ riff)
  12. Munich Jam
  13. Starlight
  14. Time Is Running Out(Intro:′Voodoo Child′ riff)
  15. Mercy
  16. The Grobalist
  17. Drones
  18. Uprising
  19. Knights Of Cydnia (Intro:′Man With  A Harmonica′ Outro:′Abbey Road′)

2日目の感想はこちら

宇宙クラスのスケールへと飛び込む - 音楽紀行(アルバムレビュー)

 

Drones

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これからのライブは変わる

 サカナクション「SAKANAQUARIUM2017 10th ANNIVERSARY Arena Session 6.1ch Sound Around@大阪城ホール

 サカナクションのデビュー10周年アニバーサリーツアーのファイナル、大阪城ホール公演に行って来ました。いやーほんとに素晴らしいの一言です。

 

Topic 1 サカナクションの特異性

 私個人は2016年のサマソニで見た以来で、単独公演は初めてでしたので、めちゃくちゃ期待していました。

 彼らの音楽は今の邦楽シーンでは変わった存在だと思います。ボーカルの山口さんがライブ中のMCで述べていた言葉を借りると、自分たちがやりたい音楽をいかに表現するかという「マイノリティ」の面といかに多くの人たちに聴いてもらえるような売れる音楽として伝えるかという「マジョリティ」の部分のバランスを冷静に考えているアーティストです。

 

Topic 2 革新的な音響システム

 今回のアリーナ公演では6.1ch サウンドアラウンドと呼ばれる音響システムが採用されています。

 アリーナのような会場は広く、迫力ある演出ができる一方、座席の位置によって肝心な演奏の聞こえ方が変わってしまったり、会場の広さ故に音がこもって聞こえたり反響してしまうという難点があります。そこを解消すべくステージ横にある通常のオーディオに加え、会場中央や後方の天井部分に巨大なオーディオを、客席付近にも大量にスピーカーを設置していました。これによって信じられないような音響を観客に体感させようとする取り組みでした(大量のスピーカー故に多くのPAが調整していらっしゃり、赤字のようです笑)

 

Point 1 音と照明のアトラクション

 こうした音響システムは、観客の度肝を抜きました。

 開演した最初の1音で会場中にどよめきが起きたライブは初めてでした。それくらいとんでもないもので、多くのスピーカーによって音の発生源も自由に変えられてしまいます。音が上下前後左右へと、自由自在に移動してしまったり文字通り「走り抜けて行く」ような体感があり、これまでに体感したことのないもの。

 さらに照明や映像も曲に合わせて様々嗜好が凝っており、音と一体となってとんでもない演出となっていました。

隣の観客の方が、「音と照明のアトラクションみたいだ!」とおっしゃっていたのが印象的でした。

 

Point 2 繊細かつ力強い音

 1番驚いたのは、とにかく演奏がめちゃくちゃいい音で聴けたことです。

  音圧は立派な映画館のようにダイレクトにズンズン響くし、重低音はそれ専用のスピーカーがあるらしく身体の芯に響いてくる感覚でした。

 さらに音圧が高いと場合によっては音が割れて聞こえたりすることも多いのですが、細かな1音まで綺麗に聞こえました。スネアドラムや電子音、ギターやベースのフレーズまでそれぞれしっかり分離して聞こえ、まるですぐそばで演奏されてるかのようで驚きました…とんでもない!(ヘタなホール公演より断然音響が良かったという程!)

 

Point 3 サカナクションの技量

 でもこれらの圧倒的な演出を実現させるのはやはりサカナクションの技量の高さ、そしてなにより曲の魅力でした。 

 「新宝島」で爆発的なスタートを切ると、「アルクアラウンド」など代表曲の連続で観客はめちゃくちゃ踊りまくっていたし、(夜の踊り子では11人の山口一郎がステージに笑)個人的には「壁」や「グッドバイ」にグッと来ました。

 ライブ中盤の「ボイル」から「三日月サンセット」の流れはライブにおけるターニングポイントと言える圧巻のパフォーマンスでしたしら「SORATO」「ミュージック」はソニマニで見たJUSTICEばりのキレキレのエレクトロサウンドで圧倒されました。

 ラストでは「目が明く藍色」で、「ああ、サカナクションすごいな…」て大団円。素敵すぎた贅沢な2時間弱でした!

 

 アンコールのMCでは山口さんが、(リリース事情などぶっちゃけたり、ビクターをディスったりめちゃくちゃ言いながら)これまでのシングルを収録したアルバムと、今のサカナクションの音楽を「まっさらな状態」で収録したアルバムの2枚組でリリースしたいとおっしゃっており、来年春ごろのリリースやライブが期待されます!

 アンコールで披露された新曲も、ノリノリのベースラインや女声コーラス、サビでのシャウトっぽいような歌い方も印象的な(山口さん曰くもっと良くなるよう作り替えるらしい)楽曲で音源化が楽しみです!

 

 6.1chサウンドアラウンドは、一度体験したらもう戻れないようなとんでもないもので、これまでのライブの歴史を塗り替えてしまうような音響システムだと掛け値なしに言えます。いつかこのシステムが標準となる時代がきたら素晴らしいし、それが日本から始まるとしたら面白い、夢のある話だと思います!(フェスで導入されたり、6.1ch専用ホールができたり…)

 とにかく素晴らしいライブでした、見れて良かった!

 

セットリスト

  1. 新宝島
  2. M
  3. アルクアラウンド
  4. 夜の踊り子
  5. Aoi
  6. シーラカンスと僕
  7. ユリイカ
  8. ボイル
  9. 『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』
  10. 夜の東側
  11. 三日月サンセット
  12. SORATO
  13. ミュージック
  14. アイデンティティ
  15. 多分、風。
  16. グッドバイ
  17. サンプル
  18. Team Sakanaction Sample "6.1ch Sound Around Session"
  19. 新曲
  20. 目が明く藍色