音楽紀行(アルバムレビュー)

邦楽、洋楽問わず聴いたアルバムのレビューを。あと、いい音楽を見つけるツールにも。

音楽の坩堝の中で

「Who Built The Moon?」Noel Gallagher′s High Flying Birds (★★★★☆)

 ノエルの新作は、リアムの起死回生の傑作リリースから遅れること1ヶ月、ようやく世に出た。

 この作品はとんでもない、そう断言できる。じっくり感想を。

 

Topic 1 誰もが予想し得ぬ内容

 2ndアルバムのリリース後、ノエルはワールドツアーに回るとU2のツアーに帯同したりとライブ活動を続けつつ、新作についての情報が出たのは夏もそろそろ終わるという9月。そして先行リリースされたのは「Holy Mountain」だった。予想し得ぬ曲調にファンはもちろん驚いた。

Topic 2 賛否両論を巻き起こす

 Oasis,そしてソロでの2作では明らかに見られなかったような楽曲である。

 ノエルが「賛否両論は想定していた。」と語ったように、ファンは明らかに動揺していた。底抜けに明るいメロディ、意図的な音作り、音数の多さ。(ポール・ウェラーがオルガンで参加!)今度のアルバムで一体何が起こっているのか、ファンの議論は続いた。

 

Point 1 多彩な音楽で愛を歌う

 冒頭のインスト曲「Fort Knox」、前述の「Holy Mountain」に始まり、あのマーヴィン・ゲイが思い浮かんだという「Keep On Reaching」や、インドだかエジプトの風味を感じる「Be Careful What You Wish 」など、まるで全部別人が書いたんじゃないかってくらいに多彩だ。思えば前作でも様々な試行錯誤があったのだが、今作では見事にそれを昇華させた感じ。

  一方でこの作品では一貫して「愛すること」について歌われている。多彩な楽曲たちを一貫したテーマでつなぐ、このアルバムを一言で表すならばきっとこうなる。

 

Point 2 メロディの魅力

 様々なジャンルの曲に意欲的にチャレンジする今作において、生命線はメロディだ。

 本作のテーマである愛についての歌は、メロディによってとてもドラマティックに伝わる。確かにOasisでの楽曲のようなシンガロングが巻き起こるようなキラーチューン的なメロディではないが、ノエルのソロであることや今作は音数が多いことを考えるとあっさりめで良かったように思える。

 「It′s A Beautiful World」は愛の本質を歌う、本作の核となるような曲だが、まさにノエルが歌う必然性を感じるメロディである。

 これまでのソロ作品の一部は、「これリアムが歌ったらどうなるだろう?」なんて考える余地がある曲もあったが、本作の楽曲たちはノエル以外が歌うシーンを想像できない。

 

Point 3 一編の映画のように

 このアルバムを聴いていると、一編の映画のように感じる。

 騒がしいだの、運動会に流れそうなどと言われた「Holy Mountain」も、物語の始まりを高らかに告げる曲だと考えれば納得である。

 曲間に挿入されている「Interlude (Wednesday Part 1)」はフランス映画に流れてそうなイメージで作ったらしく、物語をうまくつなぎ、終盤へと導く。 

 「If Love Is The Law」は、ジョニー・マー(前作に引き続き参加!)のギターやハーモニカもあり明るい曲調でありながら、歌詞は悲壮な別れを歌っている。(邦楽で言えばMr.Children「Over」みたいなイメージ)相手を失った悲しみに涙を枯らし、「If love is the law then this is a crime(もし愛が法律であるならば、これは罪である)」と別れを恨む一節は至高。(ボーナストラックである「Dead In The Water」とは世界観を共にする楽曲だと思われる、別記事にて紹介)

「If Love Is A Law」と「Dead In The Water」和訳&考察 - 音楽紀行(アルバムレビュー)

 

 今作で最も衝撃度だったのはラストの「The Man Who Built The Moon」だった。前曲の明るい余韻を消し去るような壮大でダークな曲調、(ノエル曰く1年以上かけて書いた)サビの部分はなんとも表せない感覚だ。メロディの裏でストリングスが入るが、不協和音にならないギリギリを狙ったような違和感を(おそらく意図的に)与える。聴き手をパッと突き放したまま闇へと消え去ってしまうかのように「End Credit (Wednesday Part 2)」が流れる。こんな終わり方はこれまでなかったし、想像もできなかった。

 

  圧巻である。これまでにOasisとしてあらゆる楽曲を世界に送り出しているノエル。今作は「オアシス印」を拭い去り、でもメロディの良さは殺さず、これまでにない様々なジャンルの楽曲を並べた意欲作であり、ノエル自身の冒険心が生んだ傑作だ。ぜひアルバム通して聴いて欲しい作品。

(追記 ボーナストラック2曲も良い曲!あと国内盤のDVD特典も各楽曲の解説やノエル50年史と盛りだくさんで面白い!)

 

  1. Fort Knox ★★★★
  2. Holy Mountain ★★★★
  3. Keep On Reaching ★★★☆
  4. It′s A Beautiful World ★★★★
  5. She Taught Me How To Fly ★★★★
  6. Be Careful What You Wish For ★★★
  7. Black & White Sunshine ★★★★
  8. Interlude (Wednesday Part 1) ★★★☆
  9. If Love Is The Law ★★★★
  10. The Man Who Built The Moon ★★★★★

(太字がベストトラック)

 

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