音楽紀行(アルバムレビュー)

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世界一細かいミスチル新曲「here comes my love」5分58秒の感想

here comes my love

here comes my love

イントロ

(0:00~)

 まず、ピアノのみのイントロのコード進行がすさまじい。「A,F#m,C#」「A,F#m,G#」って進行してるんですか、C#とG#が変わるだけで聞こえ方が変わってくる。

「A,F#m」は神秘的でどこか儚い曲調を伝えつつ、後に続く「C#」は暖かいコードなだけに違和感を持たせる。

もう一回「A,F#m」と繰り返して違和感なく続く「G#」によってすっとAメロへと導く狙い。ここの16秒から既に、桜井和寿がいかにコード進行を組み上げるイカれた才能を発揮してるか分かる。

 1番

Aメロ

(0:16~)

 イントロからそのままピアノのみで進行。シンプルなんだけど「思うかな」のところでボーカルとユニゾンする、ここ別々のメロディと思い込んでいたのが重なって素敵。

(0:44~)

 「ぐえっ!?」って息を漏らしてしまう、みぞおちにドスっと来るバスドラム。どこまでも響いていきそうなリバーブがやや効いたスネアドラム。ドラムの硬い音が曲をシリアスに引き締めてる。

 ふと耳をすます。「ズンズン」と鳴るベースの音の切り方が細かく部分ごとに変えられてる。なるほど、楽曲の重厚感は硬い響くドラムと裏で鳴るベースの賜物か。

Bメロ

(1:13~)

 再びピアノのみに。さっきまで重厚なサウンドって言ってたのに、急にスッと照明が消えたかのように、モノクロになったかのような喪失感にドキッとする。「引きの美学」である。

(1:23)

 とピアノに聞き入るのも束の間、シンバルを合図に一気にまたバンドサウンドが広がる。距離を一気に詰められたような錯覚に心をグッと持っていかれる。

(1:34)

 ミスチル得意の、「ドンドン!」×2は「サビに入るからしっかり聴いていけよな」の合図。

 「祈る「ように」」「叫ぶ「ように」」にあわせて「ドンドン!」ってやってるんだけど、注目すべきはこの後。歌詞に対するメロディの作り方の妙。「はぐぅ↑れないように」は、「ように」に当てはめるメロディは3回とも同じにして、なおかつ「サビにこれから入るよ」って思わせるメロディの上ずりを「は「ぐぅ!」れない」の部分で作ってみせてる。は~どうかしてる。

 

サビ

(1:41~)

 ここサビということで、目立つメロディにバッシングギター(ジャーンってやつ)とリードギター(単音のパート)が前面に出てて、更にストリングスが薄く張られてて、とかく音数が多いんですが、じゃあなんでごちゃごちゃ感が無いのかというとベースとドラムがこの部分では努めて堅実な演奏をしてるから。(ドラムはシンプルな四つ打ち、ベースはルート弾き)

 こういう面でミスチルのリズム隊は、必ずしも派手なパートを弾くわけではないけど楽曲中のバランス感覚がめちゃくちゃ優れてると思う。

(2:09)

 サビが終わると、ピアノとギターのみに。寂しさのある冒頭同様のピアノに、哀愁すらある、にじむようなギターのメロディが絡み付くことで、聴こえ方も当然変わってくる。2番以降の、歌詞を含めた楽曲の意味合いやメッセージが変わるということの明示。

 

2番

Aメロ

(2:22~)

 バンドサウンドで頭から進行する。

 ギターが楽曲の前面に出るようになって顕著になったのは、桜井さんと田原さんの弾くギターがそれぞれ違う個性を持ってる点。桜井さんの弾くギターはジャキジャキしたような、真っ直ぐピーンと伸びていくような音。対して田原さんの弾くギターは、アルペジオやスライドギターを駆使しつつ、先の通りにじむような音。

 2つ異なる個性のギターフレーズが交差するので聴いていて退屈しない。

 

Bメロ

(2:50~)

 ここでもピアノにギターのフレーズが追加されている。

(3:12)

 ここがこの楽曲で1番痺れた。「ドンドン!」の後の「ギュ~ン」って鳴るギターのチョーキング。あれは雷鳴、2番だからって油断してるリスナーをノックアウトする電撃。

 そこから間髪入れず、これからの明るい展望を示すような晴れやかなトランペットが鳴り響く。濃密な展開に「なんじゃこりゃ~」ってなる。

 

サビ

(3:18~)

 ここにきて今度はフルートのフレーズが増える。アレンジ神がかり過ぎ。「泳いでるよ」のところでバックに流れるフルートとかさりげないけど優しいフレーズ。

(3:45)

「待つ方へ」のところで鳴る田原さんの枯れたようなギター、細かいけどサビとCメロとの合間を埋めるめちゃくちゃクールな1音。

 

Cメロ

(3:50~)

 ここではストリングスではなくフルートが全体を彩る。少し前までのストリングス一辺倒な過剰アレンジはどこへやら、多彩なアレンジの多さは、「REFLECTION」でやれる全てをやりきったミスチルが、「ヒカリノアトリエ」以降でやってきた新たな試みの結実に他ならない。

(4:15)

 どこまでも昇っていくような、高揚感のある「パパパー」ってトランペットに導かれてそのまま間奏へ突入する。

 

間奏

(4:20~)

 さあ事件である。いつの間に田原さんはブライアンメイになったのか。サビの音階がそのまま1音上がってのギターソロ。QUEENを、「Bohemian Rhapsody」を彷彿とするような天にも昇るかのようなフレーズ。ああ、そうかこれが「フレディマーキュリー」っていう仮タイトルで作ってた曲か、と納得。デビューして25年経ったバンドから、これまでなかったよなアプローチで、こんなロックバラードが繰り出されるなんてもうお手上げ。「トゥルルルルルルル」って音階を昇っていくギターと共に、僕も果ててしまいたい。

 

ラスサビ

(4:50~)

 とんでもない楽曲を完成させた華々しいウイニングランに他ならない。しばし聴くのみ。

 

アウトロ

(5:34~)

 イントロと同じピアノのフレーズで締められるところだが、フルートが鳴るところが憎い演出。悲しいメロディだけどなんとなく希望もみえるかのような、明るい先行きを暗示するようなアウトロになってて、ここまで5分半にわたり何度も心を揺り動かされたわけだけど、スッと落ち着かせることができるような終わり方。

 

歌詞について

 歌詞は妊活をテーマにした、タイアップするドラマの内容にリンクしているなあと感じます。捉えようによっては恋人同士であったり、あるいは精子卵子の比喩と捉えることもできるかなと思います。

「飲み込んでくれ 巨大な鯨のように」「この海原を僕は泳いでいこう」という表現が暗示してるかな?と思いますし、

「あって当然と思ってたことも実は奇跡で 数えきれない偶然が重なって今の君と僕がいる」というのも、お互いの両親もかつては自分達のように巡り合い、天文学的な確率で僕らという生命を宿したんだということを言っているように思います。

 そう考えると、「here comes my love」とは、(「これこそが僕の愛情だ」「僕の愛情がやってくる」と二通りの訳し方があるのですが)

あなたのもとへ愛情を届けたいという意味と、いずれ宿すであろう新たな生命こそが僕の愛情の証なんだという意味にとれるように思います。タイトルがテーマを雄弁に語っていたんだなあと。

 

 

 昨年末に、ミスチル全曲振り返って「さて次はどんな曲できるのかな~」なんて期待してたら、またとんでもない曲出してきたなあと…。

 今年中に出る予感のある新アルバムも楽しみです!

 

25年分の感謝と、全曲219曲レビュー。 - 音楽紀行(アルバムレビュー)