音楽紀行(アルバムレビュー)

邦楽、洋楽問わず聴いたアルバムのレビューを。あと、いい音楽を見つけるツールにも。

Pale Wavesというバンドについて

「MY MIND MAKES NOISES」/ Pale Waves (★★★★)

  「Their songs are on my mind all of the time.」初めてこのバンドのライブを見て以来私の心には、ずっと彼女たちの曲が響いているようだ。そんな大好きなバンドがデビューアルバムを出した。

 このアルバムを聴けばPale Wavesがいかなる音楽性を有し、いかに輝きを放つ魅力的なバンドなのかが分かる。アルバムのレビューはそのままこのバンドについて語ることにもなるのだ。

 先日Summer Sonic 2018にて初来日し圧巻のライブを披露して以降、日本での人気もうなぎ上り。そんな大注目のバンドによる1stアルバムを全力で紹介したい。

Topic 1 アイコニックなビジュアルとポップなメロディ

 Pale Wavesは、Heather Baron-garacie(Vo/Gt),Ciara Doran(Dr),Hugo Silvani(Gt),Charlie Wood(Ba)の4人からなるバンドである。バンドの中核を担うのは、バンド結成の礎となったヘザーとシアラ。彼女らのゴスっぽい風貌も目を引くが、音楽性は反面明るくきらびやかなギターポップである。

Topic 2 デビュー前から注目されるニューカマー

 イギリスではよくあることなのか、アルバムを出す前からNME誌の表紙を飾り、BBCやMTVでも注目の新人として取り上げられるなど既に注目されている。その盛り上がりは日本にも伝わり、先立ってリリースされていた数曲のシングルに早くも多くの音楽ファンは魅了され、そして初来日すると前述の通り日本のリスナーを熱狂させた。

 そして、サマーソニックや翌日のインストアライブでも披露された楽曲を詰め込んだ待望の1stアルバムが満を持してリリースされたのである。

Point 1 徹頭徹尾ギターポップ


Pale Waves - Eighteen

 冒頭の「Eighteen」、サビのポップさが突き抜けている。メロディのみずみずしさ、万人に対する訴求力はテイラースウィフトやアリアナグランデにも引けを取らないのではないか。


Pale Waves - There's A Honey (Live) - Vevo @ The Great Escape 2018

 「There's A Honey」は彼女らのデビューシングルであり、既にライブにおける必殺チューンとなっている。なぜならば、バンドの魅力がメロディの良さのみにあらず、各楽器の響きにあるということを証明する強力な曲だからだ。ベースの小気味良いラインが楽曲を引っ張り、ドラム、特にスネアドラムのエコーがかった響きがきらびやかな楽曲に奥行きを生んでるように感じる。そしてリズミカルなギターのリフがドンッと入ってくる。素敵な演奏を身にまとい、突き抜けてポップなメロディが「誰もが口ずさめるような楽曲」へと昇華される。

 結論から先に言うと、今作には終始こうしたギターポップが並んでいる。「同一ジャンルの楽曲ばかりで変化が無い。」という感想に頷けないでもないが、そんな感想を力技でひっくり返すような、理屈じゃない勢いのようなものを、やはり感じずにはいられない。(思えば、同レーベルのThe 1975やWolf Aliceだって1stアルバムから楽曲に幅があったかといえばそうではなかったはずだ。だが、それでも多くのリスナーは魅力を感じ取っていた。)

Point 2 圧巻の4連発 

 「When Did I Lose It All」「She」は作中にて数少ない素朴なバラード。極力シンプルな進行でヘザーの歌声に焦点が集まる。「Eighteen」と同じ登場人物を描いたという「When Did I Lose It All」の歌詞も注目ポイントである。

 そして流れ込むエモーショナルなギターソロが堪らない。この2曲をライブで聴き、会場中が感傷に浸る場面を想像するとゾクゾクする。

 


Pale Waves - Television Romance

  The 1975のメンバーであるマシューヒーリーとジョージダニエルがプロデュースした「Television Romance」は(まさにそのThe 1975っぽさもあり笑)「こりゃ売れるわな!」と納得しちゃう完成度。今後の代表曲になるだろう。

 最初から最後までどこにも文句のつけようがない、無敵のロックソング「Red」が続く。(こちらは「Came in Close」と同じ人物についての曲らしい。)

 そして本作で一番のチューンには「Kiss」を推したい。ドラムから流れ込むギターにイントロから拳を思わず突き上げた。Aメロのスタイリッシュなベースは鼻血もの。サビでのギター+シンセサイザーの疾走感は心躍らずにはいられなかった。

 ギターの音色がアルバムの終盤にぴったりな「Black」も含めた4曲は、Pale Wavesの良さがこれでもかと溢れており、今作1番の聴きどころ。Pale Waves聴いてみたいけど、どの曲から聴こうか迷ってるという方には、とりあえず「Television Romance」~「Black」の4曲を続けて聴くようにオススメしたい。

Point 3 一線を画す出色の出来栄え

 ラストの曲「Karl(I Wonder It's Like To Die)」は、ここまでの楽曲と一線を画す。

 日本でのインストアライブで披露された楽曲だが(なんでも世界初披露!?)、その時と同様にアコースティックギターのみで演奏される楽曲。ただただメロディを聴かせるスタイル。ストレートに琴線を揺らす曲調を耳にすると、急に人の素顔を覗き見してしまったようで、ドキリとしてしまう。

 では歌詞は何を歌っているかというと、どうやらヘザーのおじいちゃんについてらしい(本人談)。彼女が14歳の頃に亡くした「あなた」(=おじいちゃん)、その経験や経過した時間を今の視点から見つめて、死とは何か?と思いを馳せた歌である。

 ふと彼女がインストアライブにて、この曲が1番のお気に入りだと言っていたことを思い出した。なるほど、この曲こそがヘザー自身を最もはっきりと表した曲なのだ。

「'Cause you're on my mind all of the time

I wonder, what it's like to die?」という最後の一説こそがこの曲のメッセージの根幹だろう。解釈は聴き手に委ねられるだろうが、私はこの一節を聴いて、ヘザーは希望を持った素敵な人物なんだなあと感じた。

(「ライブでは演奏しないかも。この曲をライブでやったら、会場の人たちが泣いちゃうから、自分も含めて。」なんてヘザーは言っていたが、ぜひとも今後バンドにとってもファンにとっても大事な曲として演奏してもらいたい。)

 

 とにかくPale Wavesがどんなバンドか、どれだけ魅力的かほんの一部でも伝わると嬉しい。「とにかくライブが見たい!」「次のアルバムはまたどうなっていくのだろう?」などとあれこれ考えさせる彼女たちの音楽は、しっかりと私の心にも根を下ろしていった。若い私にとって、デビューからその行く様を追えるバンドは貴重で、しかも彼女たちは無限の可能性に満ちた宝箱のようなバンドなのだ。こんなハッピーなことがあるだろうか。

 Pale Wavesという名前に、以後お見知りおきを。

 

「My Mind Makes Noises」/Pale Waves ★★★★

 

  1. Eighteen ★★★★
  2. There's a Honey ★★★★
  3. Noises ★★★☆
  4. Came in Close ★★☆
  5. Loveless Girl ★★
  6. Drive ★★☆
  7. When Did I Lose It ★★★☆
  8. She ★★★
  9. One More Time ★★★
  10. Television Romance ★★★★
  11. Red ★★★★☆
  12. Kiss ★★★★☆
  13. Black ★★★★
  14. Karl (I Wonder What It's Like to Die) ★★★★☆

※太字はイチオシの1曲

 

MY MIND MAKES NOISES

MY MIND MAKES NOISES