音楽紀行(ライブレポ、アルバム感想・レビュー)

ライブに行ったレポートやアルバムの感想・レビュー。好きな音楽を見つけるツールにも

SUPERSONIC2020第1弾アーティスト紹介&日割り予想

 こんにちは、今年9月に開催予定のSUPERSONIC2020の第一弾出演アーティストラインナップ発表見ましたか?

ヘッドライナーにはThe 1975,Skrillex,Post Maloneと3日とも今最前線で活躍するアーティストが並び、それ以外にも若手からベテランまで盤石の布陣が揃っています。

supersonic2020.com

 

 今回はその全アーティストの紹介と、日割り予想なんかも書いていきます。自宅で過ごす時間も多くうずうずしてくる日々だと思いますが、9月の開催に向けて「このアーティスト見たいな!」と楽しみを蓄えておくための助けとなれば幸いです。

 

 

 

 

アーティスト紹介

 

The 1975 

 正真正銘今最も勢いのあるロックバンドの1つです。2018年にリリースし大反響を呼んだ「A Brief Inquiry Into Online Relationships」も記憶に新しいなか、早くも今年5月22日には最新作「Notes On a Conditional Form」のリリースも控えており、まさに絶頂期真っ只中!昨年のサマーソニックでも東京1日目・大阪3日目のメインステージに出演し、2019年のベストアクトとの呼び声高い圧巻のパフォーマンスを披露してくれました。

 

yamapip.hatenablog.com

 

最新作に収録される「Guys」 では来日公演で日本を訪れたときのことも歌詞で登場するという噂ですが、スーパーソニックのステージでその一節を耳にする瞬間は来るのでしょうか。サマーソニックへの幾度もの参加を経て、遂にヘッドライナーに登り詰めた彼らのライブ、見逃せません!

 

Skrillex

  2010年代のエレクトロ音楽シーンを牽引した1人、Skrillexが2日目のヘッドライナーを務めます。日本でもUltra Japanフジロックといった巨大フェスから京都での年末緊急来日公演など多くのライブを行ってきた他、宇多田ヒカルYOSHIKIとのコラボも記憶に新しいです。

 

デビューアルバムである「Recess」を聴くと彼の刺激的なトラックに血がどんどん滾ってきます。このアルバムの魅力を伝える記事はこちら。

iflyer.tv

 

ヘッドライナーとのことですから演出の規模や幅が広がると予想されますが、大きなスタジアムの会場でこんな刺激的なエレクトロサウンドがどんなステージを生み出すのか、自分には想像しえません。

 

Post Malone

 ヒップホップもロックもカントリーもR&Bも、あらゆる音楽を包含してポスト・マローン本人にしかできない音楽として昇華するスタイルで、いまやポップシーンに君臨する若き王。昨年出したアルバム「Hollywood's Bleeding」ではまさしく世界を席巻しました。昨年のグラミー賞でのRed Hot Chili Peppers(サマソニ2019ヘッドライナー!)とのコラボパフォーマンスも印象的。

大ヒットのきっかけになったのはSoundCloudにアップした楽曲「White Iverson」なのですが、こちらの楽曲にまつわる話をまとめてくださっている記事があるので合わせて紹介させてください。

note.com

 

3日間のスーパーソニックには様々なジャンルのアーティストが参加しますが、その大トリを彼が飾るのは全ての総決算であるとともにこれからの時代への希望を感じられるステージになるのではないでしょうか。更なる頂きへと手をかけようとしているまさに今、日本でパフォーマンスを目にすることができるのは一生の財産になるかもしれません。

 

Liam Gallagher

 いわずとしれた「ロックンロール・スター」ですね。Oasisのボーカルとして世界に拳を突き上げさせた生粋のロックスターも、ソロ活動開始から約3年が経ち円熟味を増しつつあります。昨年リリースした2ndアルバム「Why Me? Why Not.」には持ち味である歌声を堪能できるミディアムバラードも収録され、楽曲の幅も広がっています。

 

一番好きなのは歌っているオレ自身だ!とばかりにOasis期の楽曲も惜しみなく披露するライブ、イベント名にあやかって、「Supersonic」の大合唱は巻き起こるでしょうか?

 

Fatboy Slim

 イギリスが誇るビッグビートの火付け役、と紹介されることが多いのがFatboy Slimです。ビッグビートとはテクノの細分類ジャンルで、バンドサウンドとサンプリングのミックスが特徴らしいです。たしかに彼らの音楽は枠付けが難しく、つまりはエレクトロとロック・ポップを繋げていくようなものであると感じます。自分自身の経験を話すと、あるDJ体験イベントで1人1曲づつ会場で買ったレコードを用いて繋げてみようという企画があったのですが、自分がMy Bloody Valentineの「Only Shallow」を流した後の番にやってきた女性が華麗につなげたのがこのFatboy Slimだったのです。当時ロックばかり聴いてた自分も「これめっちゃかっこいい!」と思い、思わず彼女に「何ていうアーティストですか?」と尋ねたのを覚えています。

フェスの醍醐味は自分の興味が広がるチャンスに溢れている部分にあると考えています、イギリスのロックバンドが多く集まりそうな1日目のラインナップにFatboy Slimが名を連ねていることはとても大きなメッセージを感じます。

 

Kygo

 夏を彩るトロピカルハウスの申し子Kygoの日本での人気を今更語るまでもないかもしれません。幾度となく来日公演でも会場を沸かしてきた彼ですが、Skrillexと彼が並ぶラインナップはエレクトロ・ダンスミュージック好きの多くのファンを喜ばせたはず。3年ぶりの新作「Golden Hour」にリリースを今年控えたグッドタイミングでの来日になりそうです。

 

Wu-Tang Clan

 ヒップホップ集団といえば自分は昨年のサマソニでみたBrockhamptonが思い浮かぶのですが、彼らがPitchforkなどの記事で比較されていたのはこの伝説のグループWu-Tang Clanでした。自分のようにフェス出演をきっかけに遡っていくことができるのも楽しみの一つでしょうか。

 ラインナップ発表とともにざわめくヒップホップファン界隈の人々。聴いてみようと思い1stアルバム「Enter The Wu-Tang」を再生したらひっくり返りました。かっこよすぎる。1993年のアルバムですって。これが2020年に出ましたと言われても同じように卒倒していたと思います。

 

dews365.com

ヒップホップグループのライブはとにかく見ていて楽しいんです。特にWu-Tang ClanRZAを始めソロアーティストとしても活躍しているメンバーばかりで、さながら戦隊ヒーローか仮面ライダー勢ぞろいの劇場版見てるみたいになりそう。Post Maloneへと繋がるヒップホップの流れを堪能できると良いなあ、なんて楽しみにしています。

 

Official髭男dism

 第一弾ラインナップで唯一日本のアーティストとして名を連ねたのは、昨年の紅白歌合戦にも出演した人気爆発中の彼ら。様々なジャンルの音楽を噛み砕きつつ、しっかり日本語で歌われる自分なりのポップソングとして多くの人々へと届けている部分が見事です!大ヒットを巻き起こした「Pretender」から今年に入っても「I LOVE…」など楽曲リリースも続き、脂乗りまくりです。過去のサマソニで見たChance The RapperThe 1975などから得た影響や憧れをインタビューやSNSなどでも述べている彼らが、海外のアーティストも多く並ぶなかでどのようなパフォーマンスを披露するのかは必見だと思います。きっと気合入りまくりでしょう!

 

Digitalism

 ドイツ・ハンブルク州出身のエレクトロ・テクノ音楽デュオ。サマソニフジロックにも出演し、幾度となく日本のファンを沸かしてきました。彼らの作るトラックはとにかくかっこいいサウンド、「Glow」を生で聴けたときなんて「か、かっけえ…」と声を漏らしてしまうこと間違いなし。2017年のソニックマニアに出演したJusticeのように、フェスでのロックとエレクトロ・ダンスミュージックを繋いでくれるような存在となり、様々な層を巻き込んだステージとなる光景を期待してしまいます。

 

Don Diablo

 EDMとハウスミュージックの中間に位置するのがフューチャーハウスというジャンルだそうです。

checkout.tokyo

 

そこを牽引するのが彼、Don Diabloです。まさに「ドン」ですね。15歳の頃から音楽制作を始め、長いキャリアを築いてきました。踊れるトラックとポップさに振ったメロディの両獲り、というフェスの会場を湧かせるには十分すぎる武器でスーパーソニックの観客たちとの祝祭を作り上げてくれるはず。

 

Ian Brown

 さて今回のスーパーソニックにはマンチェスターを代表する三世代のロックシンガーが勢揃いしています。10-20年代Matty Healy(The 1975),90-00年代のLiam Gallagher(Oasis),そして80-90年代のIan Brown(The Stone Roses)です。もはや確信犯的な采配には胸が熱くなるファンも多いと思いますが、昨年には新作「Ripples」をリリースしソロ活動もまだまだ止まらなそうなイアンのパフォーマンスからマンチェスターの息吹きを強く感じられるような1日が始まる予感です。

 

Tones & I

 2018年に出演したBillie Eilishのように、サマーソニックは毎年その後大ブレイクしているアーティストをそのブレイク前から呼ぶことに定評がありますが、今年の大注目アクトの1つはまさにTones & Iでしょう。既にブレイク中ですが、今後より注目を浴びていきそうな存在です。その人気を牽引する大ヒット曲が「Dance Monkey」ですね。この歌声が日本の観客を前に響く光景は、スーパーソニックにおける一大ハイライトになりそうです。

 

WarNymph(Grimes DJ Set)

 今年新作「Miss Anthropocene」をリリースしたばかりのGrimesがまさかのDJセットで参戦します!WarNymphとは同作リリース前に妊娠中だった彼女がプロモーションを担わせる目的で作り上げたデジタルアバターの名前だそうで、今年に入りDJ Setでのライブを行う際のアーティスト名にもしています。

theface.com

彼女の楽曲もエレクトロ要素を含んでいますが、DJ Setでのトラックはよりその要素が増している印象です。野外での公演になるので、演出も含めてどのようなパフォーマンスとなるのか想像がつかず、ワクワク感がありますね。

 

Alec Benjamin

 昨年のサマーソニックにも出演した彼の「天使の歌声」が今年も帰ってきます。YouTubeチャンネル登録者数250万人超え、Spotifyのマンスリーリスナー数約1400万人と既に世界で圧倒的人気を獲得している彼ですが、デビューアルバム「These Two Windows」が5月29日にリリース予定。まだまだ人気が爆発していく予兆ありです。数年後のスーパースターを今のうちに見ておくべきかも。

 

yamapip.hatenablog.com

 

Aurora

 北欧はノルウェーのアーティストAuroraは、「アナと雪の女王2」のメイン楽曲「Into The Unknown」に客演するなど活躍し、昨年の来日公演もソールドアウトするなど日本での人気も既に高まりつつあります。その魅力は歌声と、音楽性からビジュアルまで統一させた唯一無二の世界観でしょうか。ライブを見て、彼女の音楽に世界観ごとどっぷり浸かれる瞬間を想像してしまいます。

www.udiscovermusic.jp

 

Beabadoobee

 The 1975,Wolf Alice,Pale Wavesなどサマソニを沸かせてきたアーティストたちが多く所属する音楽レーベル「Dirty Hit」にて、今頭角を現しつつあるアーティストの1人が彼女です。ベッドルームポップと呼ばれる穏やかな楽曲に始まり、直近にリリースしたEP「Space Cadet」ではよりギターの分厚い音が炸裂するような楽曲まで。ライブでもバンドチーム一丸で音源のイメージを悠々と超えていくパワフルな演奏が披露されます。是非とも観客の度肝を抜いて欲しい!

 

Blossoms

 イギリスで脈々と続くUKロックの遺伝子を引き継ぐバンド。今年リリースしたばかりでありのニューアルバム「Foolish Loving Spaces」ではますます音の彩りが増し、聴いていて楽しく踊れるライブの光景がひしひしと想像できます!2016年に出演したサマソニでのライブや2018年の来日公演も素敵なものだったといろんな場所で聞きます。その後の歩みが感じられるような、ネクストステージに達した彼らのパフォーマンスに期待です。

 

Conan Gray

 今年出演するアーティストのなかでも、個人的に注目度の高さで一、二を争うSSWが彼です。Lordeのアルバム「Pure Heroine」を聴いたことをきっかけにポップミュージックに興味を持ち、2017年に初めてリリースした楽曲「Idle Town」があっという間に数百万再生の大ヒット。翌年には初EP「Sunset Season」をリリース、そして今年にはデビューアルバム「Kid Frow」を出したばかりと、驚異のスピードで世界中に人気を広げています。ベッドルームポップと呼ばれた音楽性も広がりまくりで、日本にも所縁のあるという彼のライブが見られることがとても楽しみです!

 

Dominic Fike

 アメリカ・フロリダ州出身のラッパー・SSWである彼は、21歳の頃に起こした警察沙汰から自宅謹慎中に制作したEP「Don't Forget Me, Demos」がきっかけでメジャーレーベルとの契約を勝ち取ったそう。

ジャンルで分けるなら大枠だとヒップホップなのでしょうか?野外で風に吹かれながら聴いていたいなと思ってしまうトラックの優美さ、歌声の纏う雰囲気が大好きです。

彼の魅力を最も素敵な文章で紹介してくださっているのはこちらの記事だと思うのでぜひ!

note.com

 

Easy Life

 世界中で「今年最注目のニューカマー」と名高い評価を得ているイギリスのロックバンド。その大きな一因はイギリスBBCが毎年注目の新人を発表する「BBC Sound of」の10組に選ばれたこと。この「BBC Sound of」というのはまさしくブレイクへの太鼓判。過去にはBillie Eilish,Sam Smith,James Blakeなど名だたるアーテイストが名を連ね、今回出演するSkrillexが2012年、Beabadoobeeが今年選出されています。

大注目の彼らの音楽は、ジャンルを横断した音楽的アプローチから優美さが溢れ出す部分に魅力を感じます。と、言葉にしてもあまりうまく伝えられないのが事実。理屈でなく感覚でその魅力と対峙するのが一番だと強く思えるアーティストでもあります。まずは今年リリースした「Junk Food」を聴くことをおすすめします。

www.udiscovermusic.jp

 

IDKHOW

 正式名称「I DONT KNOW HOW BUT THEY FOUND ME」である2人組バンド。元Panic! At The DiscoベーシストDallon Weekesが、自身のソロ活動でのサポートを務めていたドラマーのRyan Seemanを誘い結成したそうです。

彼らの音楽は、ポップで踊れてアートでクールで…なんて並べ立てるとうさんくさい商材番組の司会のように思われそうなのですが、事実なので仕方ない!特に「Do It All The Time」は最高です、この曲聴いてみんなで酔いしれる時間が待ち遠しいです。

 

Jax Jones

  ダンスミュージックシーンを既に席巻するイギリス生まれの新星です。DJやプロデューサーとして大活躍の彼ですが、昨年リリースしたデビューアルバム「Snacks」ではTove LoDemi Lovato, Years&Years,Jess Glynneなど有名アーティストたちとコラボし大暴れ。2018年に行われた来日公演も大盛況だったそうで、下記の記事では彼のライブの魅力が伝えられています。

iflyer.tv

 

今回のラインナップにはエレクトロ・ダンス系アクトもビッグネームが多く並んでいますが、同日出演となれば彼らのアクトが始まる前から会場は盛り上がりが最高潮に達してしまうかもしれません。

 

Squid

 イギリス・ブライトンを拠点にポストパンクを奏でる彼ら、元はジャズバンドとして結成され、さらにはアートロック(Talking Headsなど)に影響を受けるなど様々な背景から彼ら以外からは聴けない音楽が何よりの持ち味です。そんな彼らは自身の音楽を「ハイになるようなマスポップ、『70年代のポストパンクに1つまみのDavid Byrne』って表現がしっくりくる」と紹介しています。

なんとこちらも先述の「BBC Sound of」に選ばれています!選出された10組中3組が今回の第一弾ラインナップに入っているのは、若手注目株が勢ぞろいしている証。

 

  2019年にリリースした最新EP「Town Centre」を聴いたとき、私は腰を抜かしました。終始不穏な空気が漂うオープニングトラック「Savage」から、テクニカルなギターイントロにふにゃふにゃした歌声、かと思えば歪んだギターの音色やシャウト気味の歌声へと刹那なだれ込む…しまいには管楽器の調べまで聴こえてくるようなカオスな「Match Bet」の流れは見事。いまだフルアルバムをリリースしていないバンドですが、既にリリースしている楽曲は振り幅広く自由自在。おそらく生で聴ける彼らの演奏は、替えのない体験になることでしょう。

 

Waterparks

 テキサス州ヒューストンの3人組バンド。ポップ・ロックに分類されそうな彼らの音楽は、とにかく耳に残るメロディが素敵です。Fall Out Boy, All Time Lowらの系譜を継ぐようなエネルギッシュな音楽は本家サマソニにも馴染みそうな雰囲気。昨年リリースした最新作「FANDOM」も絶好調、特に収録曲「I Miss Having Sex But At Least I Don't Wanna Die Anymore」はバンド屈指の人気曲になりました。

 

3年前には他バンドのサポートアクトとして日本でのライブもおこなっており、既にバンド公認の日本ファンアカウントもあるそう。ポップさが炸裂するステージで、さらに日本での人気も爆発しそうです!

 

 

日割り予想

 昨年のサマーソニック同様、今年も日ごとにジャンルを固めたラインナップになるのではないかと予想しています。

 

東京1日目/大阪2日目はロックDayとなることが予想されます。

既に日程の決まっているThe 1975,Liam Gallagher,Fatboy Slimに加えて、Ian Brown,Blossomsが自身のSNSでこの日の参加を明かしています。

またThe 1975とともに今春ツアーを回っていたBeabadoobeeもこの日の参加ではないでしょうか。そこからAuroraとつなげる。インディーロック寄りのアプローチを持ったサウンドを以てFatboy SlimとともにロックとエレクトロをつなげられるDigitalismという采配にも期待しています。

 

 

東京2日目/大阪1日目はエレクトロ・ダンスDayとなることが予想されます。

既に日程が決まっているのはSkrillex,Kygoですが、そのほかDon Diablo,Jax Jones,WarNymph(Grimes DJ Set)とエレクトロで固めると凄まじい並びになりそうです。裏のステージではEasy Life,Squidとイギリスの音楽シーンをより面白くするであろう新星バンドを揃って見られるステージが実現すれば…。

 

 

東京3日目はポップ・ヒップホップDayとなることが予想されます。

既に日程が決まっているのはPost Malone,Wu-Tang Clan,Official髭男dismですが、そのほかDominic Fike,Tones & I,Conan Gray,Alec Benjamin,IDKHOW,Waterparksと並ぶと、あらゆるファン層に届く3日間で一番濃厚なラインナップとなりそうな予感です。

 

 

 

 なんとか無事開催されて、溜まりまくった音楽ファンたちのエネルギーが爆発するような場になればいいなと日々願っております。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今週の新曲感想(4/17)

 自宅に長くいる間の日記代わりです。

 

「Middle America」「Fantasy」/ Pure X

Fantasy

 6年ぶりの4thアルバム「Pure X」のリリースが決定し、先行曲としてリリースされた新曲2曲。彼らの音楽はサイケ・シューゲイザーとでも呼ぶべきぐにゃぐにゃ感と浴びる轟音が同居したものだと感じている。これまで同様歪みまくったギターの音色がどこよりも暖かく感じられる。どうやら集大成としての作品になるようで、リリース発表に合わせてバンドから出されたコメントは下記にて和訳されているのでそちらもぜひ。

 

www.indienative.com

「midnight love」/ girl in red

midnight love

 昨年はこれまでリリースしてきた楽曲をまとめたEP「chapter 1」「chapter 2」をリリースしたgirl in redでしたが、今年はフルアルバムのリリースも視野にいれ「World In Red」を実行する年にする!と意気込んでいるようだ。ベッドルームポップと呼ばれていた音楽性も新曲だと奥行きも深さも増しすぎて「そのベッドルームどんだけ広大なの?」と思えてくる。今後への期待が加速度的に増してますが、来日公演なんかも実現して欲しいです。スパソニにbeabadoobee,Auroraの流れで追加されないかなあなど妄想しつつ。

 

「ルナPRINCESS」/ LoneMoon

ルナ PRINCESS [Explicit]

 LoneMoonによる新曲「sL33Pless」「sikKk.wav」の2曲収録。そもそも昨年末にアルバム出して、2月にEP、3月には3枚ものアルバムをリリースしたりと超多作なのですが、今回のシングルは特に好きですね。刺激的なエレクトロよりも、今作ではR&Bかソウルあたりの要素を含んで、より濃厚な楽曲に仕上がっているように感じます。やはり豊潤なトラックに鋭いラップが乗るタイプのヒップホップが私は好みで、好きなヒップホップアーティストは誰かと聞かれたら、Chance The Rapper, Tyler,The Creator,そしてLoneMoonを挙げます。

 

「In a Good Way」/ Faye Webster

In a Good Way

 昨年出したアルバム「Atlanta Millionaires Club」も最高だったが、新曲も魅力健在。ストリングスの旋律やアコギの調べ、キーボードの音色が絡み合い響く間奏は白眉ですね。どうやったらこんな優しいメロディが湧き出てくるんですかね。

 

「Six Feet Apart」/ Alec Benjamin

Six Feet Apart

 今年のスーパーソニックにも出演が決まってるAlec Benjaminによる新曲。デビューアルバム「These Two Windows」のリリースは延期になってしまいましたが、その原因である新型コロナによる外出自粛の生活を受けての楽曲みたい。こういう時勢だからこそ、簡素なアコースティックギターに合わせて歌う彼の歌声の美しさは心に響きますね。この曲を聴いてる2分53秒間は、いつもより一歩穏やかな気持ちでいられる気がします。

 

 

 今週はようやくFinal Fantasy VII Remakeをクリアできたので、旧版もプレーしつつ来月出るサントラも楽しみに待ちたいです。新譜意外だとConan Grayにハマりつつあります。

 

来週も素敵な音楽を聴けますように。

 

 

 

 

今週の新曲感想(4/11)

自宅に長くいる間の日記代わりです。

 

 

今週はたくさん素敵なシングルがリリースされた。来るべき新作に向けた先行リリースもあれば、新型コロナウイルスの影響を受けて支援の一貫だったり自宅にいるリスナー達に向けての作品など様々だが、こうやって素敵な楽曲をリリースしてくれるありがたさも噛み締めつつ。

Phoebe Bridgers「Kyoto」

 

待望の2ndアルバムリリースを発表した彼女の先行シングル。日本に来た時のことを歌っているらしくそれだけでも嬉しいが、イメージに違いアップテンポで明るめな楽曲。本人も元々緩やかだった曲調を変化させたとインタビューで語っていた。でも思えば昨年参加しアルバムもリリースしたユニット「Better Oblivion Community Center」でも緩やかながら明るくポップさを発揮させた楽曲もあったので、歩みとしては至極当然な流れだったのかも。とにかくアルバムが楽しみ。

 

Tash Sultana「Pretty Lady」

 

こちらも来る新作の先行シングル。約30分の弾き語り生中継の後に公開されたMV、その映像もまたとても幸せな気分になれる。楽曲自体は数年かけて完成させたものみたい。やはり魅力であるギターさばきは随所に堪能できるが、主役は歌声だと感じる。技術ではなく、卓越としたメロディがさっぱりと歌われて、MVが公開された朝の時間に聴くのにとてもしっくりきた。目覚ましにしたら清々しく起きられるだろうな。

 

Alfie Templeman「Happiness In Liquid Form」

 

今めきめきと実力も人気も伸ばしつつあるSSWだが、この曲も例によってマジック効きまくり。こちらもまたまた新EPからの先行シングルだが、どんどん踊れる感じが増していってる。「ベッドルーム・ドリーム・ディスコポップ」とはどこかの記事で見かけた表現か、はたまた自分が勝手に創作した造語だったか忘れたが、ベッドの上で飛び跳ねたいならこの曲しかないね。

 

Benjamin Francis Leftwich「Robbers」

 

Robbers

The 1975の楽曲カバー。このカバーの何が熱いかというと、この2アーティストがDirty Hitの全ての始まりだということ。Dirty HitはJamie Oborneらによって設立されたレーベルだが、その元々の目的は他レーベルと契約を結べずにいたこの2組をサポートすることだったらしい。The 1975ファンにとっても屈指の人気曲を、彼にしか生み出せない穏やかな草原の風のような楽曲へと変貌させてしまっている部分もさすが。

 

guardin「Contact」

 

やっぱりこの男はかっこいい。今一番かっこいいと思ってるアーティスト。これが2020年台のエモーショナルなんだろうなあ、なんて未来を見据えてしまうだけの魅力がここにはある。今後の快進撃にも期待。ちなみに毎回彼は楽曲のサブタイトルを日本語でつけるのだが、今回は「//中にいてください//」

 

Twenty One Pilots「Level of Concern」

 

新型コロナの影響を受けて音楽関係者への支援を目的として、いくつか制作している楽曲のなかから「今出すべき」だと感じた楽曲をリリースしたらしい。Twenty One Pilotsといえば私は前作「Trench」でのポップながら切迫した雰囲気というイメージを抱いていたが、当曲はすごく穏やか。いろんな音楽性を全方位に伝えて人気を得るというのは至難の技なんだろうけど、彼らのメロディの手にかかれば向かうところ敵なしなんだろうな。ほんとにライブを見たいアーティスト筆頭。

 

 

来週も素敵な音楽を聴けますように。

 

今週の新譜感想(4/10)

自宅に長くいる間の日記代わりです。

 

楽しみにしてた新譜コーナー

「The New Abnormal」/ The Strokes

ザ・ニュー・アブノーマル (通常盤)

今年のフジロックにも2日目のヘッドライナーとして出演するストロークスによる7年ぶりの6thアルバム

 

自分は1stアルバム「Is This it」をリリースしガレージロックリバイバルの旗手として名を馳せた頃の姿は知らず、その頃の音楽性にもこだわりはない。彼らの作品で一番好きなのは5thアルバム「Comedown Machine」だ。そういう前提で読んで欲しい感想。

新たな異端性」と訳せるようなタイトルに、これまでのイメージを再び覆す作品になるのだろうかと考えていた。それはリリース前に公開していた新曲「Bad Decisions」の示唆的なMVからも思ったのだが、アルバムを一聴しての感想は前作以降の歩みを形にした作品だなというもの。

 

 

それではアルバムを再生してからの大まかな感想実況。

The Adults Are Talking」か、かっこいい…早朝からガッツポーズしてみる。ギターのフレーズと音作りはクールだし、エレクトロを彷彿とするドラムのリズムに身体は踊りだす。ジュリアン・カサブランカスの歌声は無敵。

Selfless」たしかアルバム告知の動画で流れてたイントロだよなあ。勢いだけで押さない引きの美学輝くロック気持ちいい。

Brooklyn Bridge To Chorusシンセサイザーもブリブリ鳴ってるなあ。いややっぱかっこいいでしょこの作品!かっこいいかっこいいかっこいい!前作が好きすぎるからって抑えめにしてた低めのハードルを倉庫に片付けておいた。でかめのやつに取り替える。

Bad Decisions」これが先行曲の中では一番これまでの路線を感じさせる曲だった。でもこうして流れで聴くとより鮮明に、過去の焼き直しではなくバンドが培ってきたサウンドをうまく昇華して進化したのだということを感じる。

Eternal Summerフジロックで夜風に吹かれながら聴くと気持ちいいだろうな、という情景を想像した。たしかに夏も終わりって時期だ。

At The Door」最初に公開された先行曲。「Bad Decisons」から先に公開した方が良かったのでは、という声もあったが、自分にとってはこの順番でありがたかった。なぜなら「こういう曲が収録されて、いったいアルバムはどんな作品になるんだろう?」という想像を掻き立ててくれたから。そしてリリースから今日までの2か月重ねた想像の答え合わせをするかのようにここまでアルバムを聴いてきて、この曲に辿り着くという流れはすごく気持ちよかった。もう終盤、ラスト3曲だ

Why Are Sunday's So Depressing」前作の流れも感じつつ、ノスタルジーが零れ出る。あんまり御託はいらないか。でもここにギターが鳴っていることは嬉しいな。

Not The Same Anymore」うっとりしてくる音楽。ここではどのようなことが描かれているのだろうか。自分は初聴時に歌詞を読まないが、レコードが届いたら目を通してみよう。

Ode To The Mets」終わりを感じる曲はアルバムを美しく締めくくるには不可欠。落ち着いた曲調、細かな部分まで行き届いた演奏はもちろんだけど、やっぱり歌声が全てを特別にする。

 

 

「新たな異端性」という題目は今作での彼ら自身の音楽を指すと思うけど、前作から7年の間に音楽シーンは様々変化しており、その間バンドは自身の音楽性を捨てることなくメンバー各人のソロ活動で得た要素を手に歩みを進めた。その結実は果たして今の音楽シーンにおいてどんな存在なのか。そんな問いかけであったかのように思う。私にとってはそれがスペシャルに聴こえたという話でした。

 

Best Track:「The Adults Are Talking」 

 

「ニュース」/ 東京事変

ニュース(初回限定仕様)

今年の元日に復活を遂げたロックバンド

 

今作には新年早速度肝を抜いた新曲「選ばれざる国民」や、まさかのコナン劇場版主題歌タイアップ「永遠の存在証明」など収録されているが、5曲とも耳に残る楽曲でEP自体の流れもスムーズに感じた。中学生の頃聴いてたときよりもあまり癖の少ない印象だったのは今作での特徴なのか、それとも自分の感覚の変容なのかはよくわからない。

 

Best Track:「永遠の存在証明」

 

紹介してもらった新譜コーナー

「Humor」/ Pearl Center

Humor

4人組バンドPearl CenterのデビューEP

 

自主制作でリリースしたEPに次ぐ2枚目のEPとのこと。おすすめされているのを見かけて「穏やかそうな音楽かなあ」なんてジャケットを見ながら想像していたが、とんでもない!気持ちよくて刺激の溢れる音楽だ。どんなライブになるんだろう?という好奇心が湧いてくる。ちょーかっこいい!「Humor」を聴いて、いえい!いえい!いえい!と嬉しくなってきた。EPが終わるころにはキラキラした音楽に魅せられていました。

 

Best Track:「Humor」

 

 

ジャケ聴きした新譜コーナー

(アルバムのアートワーク見て聴いてみた作品)

 「BREVE II」/ Tessa Ia

BREVE II

Tessa IaによるEP二部作の2作目

 

Tessa Iaはメキシコ出身で、女優・歌手として活躍。

女優業で有名なのは主演した2012年公開映画「Después de Lucía(邦題:父の秘密)」で、この作品はカンヌ国際映画祭でも「ある視点」部門グランプリを受賞している。

楽曲の話に戻ると、メキシコの公用語であるスペイン語?で歌っていると思われるが、やはりその語感は独特のリズム感みたいなのを作ってくれるように思う。ジャンルはインディーポップかな、ジャンル分けはよくわからないので参考になりません。ドラムがしっかり鳴ってて、ポップなトラックにアコギの音色が混じってるのでオーガニックさマシマシ。こういう音楽を好んで聴くが前述の語感のおかげもあり、とても新鮮に感じる。勝手なイメージのせいか情熱的にさえ聴こえてくる、日本の歌謡曲スペイン語でカバーなんてハマりそうだけどどうだろうか。今年はどんどんアメリカやイギリスばかりでなくいろんな国の音楽を聴いていこう。脇道に逸れていった感想。

 

Best Track: 「Cooleros」

 

 

「Mothertime」/ Kalbells

Mothertime

アメリカNY州のアーティストKalmia Traverによるソロ活動Kalbellsの新EP

 

アートワークめちゃくちゃ良くないですか?って話を延々としていたいのだが、音楽の話をするとすごくトラックが面白い。アコギ主体のカントリー・ポップかなとジャケットやアー写なんかで想像を膨らませていたのだが、しょっぱなの「Mothertime」からエレクトロとシンセサイザーで大暴れの大回しじゃ!(ノブ風)90分後に自分で読み返して寒さに悶えてそうな言い回しは置いといて、この作品はとにかくいろんな音が聴こえてくるので耳がイキイキしてくる。こんなに自由気ままに音色を重ねていてもポップさが押し迫ってくるように感じるのは彼女の歌声がベリースペシャルだからかな。いそうでいなかったポップミュージシャン!話を戻すと、これまでの作品のアートワークやアー写が素晴らしいので是非。

 

Best Track: 「Precipice」

 

 

ちなみに今週一番聴いていたのは"「Heaven To Tortured Mind」/ Yves Tumor"でした。今のところ今年ダントツ好きなアルバム。特に好きな曲は「Dream Palette」です。ずっと家でレコード回して聴いてます。生活の中で他によく聴いている音楽と言えば、絶賛プレイ中のFinal Fantasy VII Remakeでのサントラでしょうか。こちらもゲーム同様良きです。

来週も素敵な音楽を聴けますように。

Heaven To A Tortured Mind [解説・歌詞対訳 / ボーナストラック1曲収録 / 国内盤] (BRC635)

 

 

The 1975「Jesus Christ 2005 God Bless America」歌詞和訳・解釈

 4/3にThe 1975の新曲「Jesus Christ 2005 God Bless America

がリリースされました。同時にアルバム「Notes On A Coditional Form」のリリースが5月22日に決まり、トラックリストも公開されています。当曲はアルバムの9曲目に収録される予定です。

 

 これまでも様々な形で愛について描いてきましたが、今回の楽曲は愛情と宗教の関係について述べられた、さらに1歩踏み込んだ内容となっています。また客演としてPhoebe Bridgersが参加しています。彼女が共にボーカルを務めている意義なんかも想像しながら歌詞を読み解くとまた発見があるように思います。

 

 和訳だけ読みたい方も多いかと思うので、の部分について註釈は下段にまとめています。歌詞の内容が気になる方はそちらもご一読いただくと、より楽しめると思います。

 

 

I'm in love with Jesus Christ

He's so nice

イエス・キリストよ、私はあなたを愛します(※1)

とても素晴らしき御方

 

I'm in love, I'll say it twice

I'm in love

私は愛する、何度もそう繰り返す

私は愛するのだと

 

I'm in love but I'm feeling low

For I am just a footprint in the snow

私は恋する人間だ、だけど私の心は落ち込むばかり

降り積もった雪に残される足跡のような存在でしかないのだから(※2)

I'm in love with a boy

I know

But That's a feeling I can never show

私は男の子に恋をしている

自覚していても、この感情を人には見せられない(※3)

 

Fortunately I believe, lucky me

幸い僕は信心深い、きっと良いことがあるだろう(※4)

Searching for planes In the sea, that's irony

僕はずっと海を漂いながら飛行機を探してる

ああ、皮肉なものだ(※5)

Soil just needs water to be and a seed

So if we turn into a tree, can I be the leaves?

大地はただ水と種子を求める

ならばもし僕らが樹木になってしまったなら、

僕はその枝に茂る葉でいられるだろうか(※6)

 

I'm in love with the girl next door

私は普通の女の子が好きだ(※7)

Her name is Claire

彼女の名はClaire

Nice when she comes round to call 

彼女がうちに来てくれていい気分

Then masturbate the second she's not there

だから彼女が帰ったらすぐマスターベーションするんだ

 

Fortunately I believe, lucky me

幸い私は信心深い、きっと良いことあるよね

Searching for planes In the sea, that's irony

私はさ、海に漂いながら飛行機を探してるの

ああ、皮肉だな

Soil just needs water to be and a seed

So if we turn into a tree, can I be the leaves?

大地はただ水と種子を求める

それならばもし私たちが樹木になってしまったなら、

私はその枝に茂る葉でいられるのかな

 

 

解釈・註釈

 

※1

 イエスキリストを愛します、というのはまさしくキリスト教の信仰を意味します。

「I'm in love with Jesus Christ」に似たような表現は教会の礼拝で歌われる讃美歌でも目にするもので、シカゴの著名なクワイア(ゴスペル聖歌隊)であるNew Directionが2004年にリリースしたアルバム「Rain」にも「I'm In Love With Jesus」という楽曲が収録されています。

(New Directionは1994年に若者を中心に結成されたクワイアで、グラミー賞にもノミネートされるなど活躍するクワイアです。)

www.newhavenrecords.com

 

※2

 自分の存在が雪の足跡のようだ、というのはどういうことでしょうか。私は2つの意味合いが込められているように思えます。

1つは自分の存在が真っ白で美しい雪を汚すものだということ。

もう1つは雪に残った足跡はその後も雪が降り続けるうちに消えてしまうように、自分の存在もこの大きな世界においては塗りつぶされてしまうのではないかということ。

 

 ここでの「僕」は誰かに恋をしているのに、日々気分が落ち込んでいくばかり。それは恋の駆け引きがうまくいかないだとか、そういう次元の話ではないことがここから述べられていきます。その内容を踏まえてようやく雪の足跡の比喩が指すものが分かるはずです。

 

※3

 「僕」は男の子のことが好きである、つまり同性愛あるいは両性愛なのだと明かされます。

 1月にリリースした楽曲「Me & You Together Song」ではクィアの主人公が登場しましたが、この楽曲での「僕」はまた別の悩みを抱えています。ここで問題になっているのは自身の信仰との関わり。

キリスト教においては、聖書の解釈の違いから同性愛について断罪から受容まで様々な考えがあるようです。

キリスト教と同性愛 - Wikipedia

 

「僕」は先述の通り信仰心の厚い人物ですが、キリスト教徒の間では同性愛を禁じるべきだという考えの人々も多い。従って自身の感情を人には伝えられないのです。

ここで先ほどの※2での雪の足跡の例えを振り返ると、この表現は清廉な教えであるキリスト教の中で、自分はその綺麗さを汚す異端なのではないかということを言っているように思えます。

 

 

 現実のアメリカに目を向けます。

2009年には、アメリカで聖書を厳格に解釈する聖職者たちを中心に「マンハッタン宣言」が発表され、同性婚に反対することが宣言されています。

www.christiantoday.co.jp

 

2015年にインディアナ州で成立した「宗教の自由回復法」が物議を呼び、宗教を理由にしたLGBTへの法的差別を許容するのではないかと指摘された。

www.huffingtonpost.jp

 

今年に入ってもキリスト教界が意見の不一致から揺れ動いている現状が報じられています。

the-liberty.com

 

 

※4

 信仰者には主の御加護がある、だからきっと自分にも救いがあることでしょう。

こうした信心も先で述べたような自身のアイデンティティと宗教の教えの乖離の前では無意味かもしれない、ということをここでは皮肉めいて述べているのではないでしょうか。

 

※5

 「僕」は海で飛行機を探し続けている、けれでそれは一生見つかりっこないでしょう。なぜなら海を行くのは船であり、飛行機は空を行くのだから。もしくは墜落した飛行機の残骸なら見つけることができるでしょうか。どちらにしても、自身の感情と信仰との間で答えは見つからないことを表しているように思います。

 

※6

 ここに出てくる「大地」「水」「種子」「樹木」というのは、キリスト教における聖書においても度々出てくるモチーフでもあります。

 大地と言えば地母神。「水」は生命の源や浄化を表したり、「ヨハネによる福音書4章」では「渇かない水」についての説話が登場します。「種子」について想起されるのは「マタイによる福音書13章」の「種を蒔く人」についての説話で、ミレーやゴッホによる絵画が有名でしょうか。「樹木」は「詩篇1篇」において流れのほとりに真っすぐ立つ樹木が信仰者の例えとして用いられます。

 

 歌詞を書くにあたって意識されているのかは定かではありませんが、宗教に明るい人々にとってはどう感じられるのでしょうか。

 

 ちなみに前作「A Brief Inquiry Into Online Relationships」に収録された「Man Who Married A Robot」では

"Man does not live by bread alone"

「人はパンのみにて生くるにあらず」という言葉を「マタイによる福音書4章」から引用しています。

 

 

 さて宗教での表現を頭の隅に置きつつ、ここでの比喩表現を検討します。

「大地」→「水・種子」→「樹木」→「葉」という並びを、自分は

「世界・人類」→「生命・子孫」→「社会・世俗」→「人(構成員)」と捉えました。

 

大地が水や種子を求めるのは、それらが生命の源だから。言い換えると世界・人類が繁栄、永続していくのに不可欠なのは生命であり子孫でしょう。

水を得た種子は大地で育ち、やがて樹木へ変わるでしょう。同じように、生まれてきた人々は様々な学びを得て大人となり、人々は社会を構築していくと思います。

そして樹木はまさしく枝に茂る葉が集まってその姿を現しています。そう考えるならば、ここでは社会を構成する1人1人を指し示しているのでしょうか。

 

 ここでは何が述べられているか。「僕」は「葉」でいられるのかという言葉をここまで検討した比喩の解釈をもとに考えるなら、同性愛・両性愛である自分たちの存在は社会に許容されないのか?という問いなのではないでしょうか。

生命の仕組みゆえに、子孫を生み出し後世に残せるのは男女の交わりであるという事実があります。それならば、世界・人類の礎である生命を生み出す異性愛者以外の存在は社会の一員として許容されないのか、という悲痛なメッセージだと私は捉えます。

 

先ほどの※2での雪の足跡の例えに戻ります。私が捉えた2つ目の意味合いは、「雪に残った足跡はその後も雪が降り続けるうちに消えてしまうように、自分の存在もこの大きな世界においては塗りつぶされてしまうのではないかということ。」というものでした。つまり異性愛者以外が排除されて真っ白な状態(多様性の喪失)にされることへの不安・苦悩を表しているのではないかと私は感じたのです。

 

 

※7

 ここからメインボーカルはPhoebe Bridgersに入れ替わります。

Phoebe Bridgersはロサンゼルス出身のアーティスト。若いうちから活躍し2017年にリリースしたデビューアルバム「Stranger In The Alps」は世界中で話題を呼びました。2019年には来日公演も行っています。

 

 

彼女は自身がバイセクシャルであることを公言しています。

(こちらは英文記事ですが、彼女が自身について語っています。)

Phoebe Bridgers Embraces Her Inner Sext Machine | BeatRoute Magazine

 

 ここから続く歌詞は「僕」から視点が切り替わり、Claireに恋をする「私」が描かれています。アメリカに住むPhoebe Bridgersと「私」は、歌声を通じてパーソナルな部分でリンクしているように私は感じます。

 

 ちなみに「the girl next door」とは、「お隣に住む女の子」ではなく「どこにでもいるような素朴な女の子」という意味の表現のようです。ここでの「私」は、劇的な何かが起こったり、特別なことをしてその女性を愛したわけじゃなく、自然と好きになったということを言っているのではないでしょうか。恋が誰にとってもそうであるように。

 

 

 

  最後にタイトルについて。アメリカ合衆国は建国からキリスト教との結びつきが強く、国民の多数がキリスト教徒だそうです。特にプロテスタントの比率が多く、また様々な教派が存在する中で、その様々な思想とのかかわりから国内の様々な州で同性婚や人工中絶について議論が多いです。

アメリカ合衆国の現代キリスト教 - Wikipedia

その現状を指して、「God Bless America(アメリカに神の祝福を)」というタイトルをつけたのはかなり踏み込んだ表現であるように思えます。

 

ちなみにこの「アメリカに神の祝福を」という言葉は、政治家のスピーチにもよく締めの言葉として用いられるそうです。

tsukaueigo.com

 

 

同性愛・両性愛と宗教との結びつきという楽曲のテーマは宗教に疎い自分にとっては馴染みづらいものに思えますが、より大きく「多様性」を大事にしようというメッセージにも捉えられます。こういうときに私はアーティストであるKamasi Washingtonの言った「多様性は祝福されるべき」という言葉を思い出しますね。

 いよいよアルバムの全容が見えつつありますが、今回の楽曲からもとても期待値が上がりますね。「仮定形に関する注釈」というお決まりの和訳がついたアルバムタイトルからも、「様々な立場にいる人々の悩み・問題」を描く内容なのではないか、と勝手に想像してます。

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