音楽紀行(ライブレポ、アルバム感想・レビュー)

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「RAINBOW」エレファントカシマシ ★★(5.0/5.0)

 今ある状況が永遠ではないということを自覚したとき、人は覚悟を決めて今できることに全力を尽くす。その瞬間こそ素晴らしいものになるのかもしれない。それはアーティストであったりスポーツ選手であったり…。今回はエレファントカシマシの起死回生の一作「RAINBOW」を、自身をもっておすすめしたい。

 

Topic 1 ライブ活動休止からの復活

 彼らは1988年のデビュー以降、所属レーベルも移りつつ、音楽性も時代ごとに変遷しながら、彼らは常に自分たちのやりたい音楽を続けてきた。タイアップにも恵まれていた彼らだが、2012年、Vo.宮本が急性感音難聴を患う。それ以降ライブ活動を休止する。

 病気、そして年齢を前に彼らは自身を見つめなおす。中年を迎え死へと近づいていることを自覚した時、彼らは自分たちの立ち位置でこその楽曲を制作し始める。

Point 1 27年目にして爆発力満載の傑作

 インスト「3210」を経て、幕を上げる「RAINBOW」、この曲で既に復帰からの逆転ホームランだ。大胆に取り入れたストリングス、そして何よりVo.宮本の歌が圧巻だ。がなりたてるようにテンポの速い歌詞、疾走感溢れるサビ。彼はタバコもやめ、コンディショニングも徹底し始めた結果、声が半端なく伸びやかになっている。彼らの覚悟はキャリア屈指の傑作へ見事に昇華された。Vo.宮本氏自身、この曲を作れたことで自信をもてたと語っている。

 

Point 2 新機軸の多彩なアレンジ

 「愛すべき今日」、復帰後の彼らのあり方が現れている。声の表情が柔らかいのが印象的だ。

 そして、「昨日よ」では、儚いファルセット、「なからん」は力強いロングトーンが聴ける。元々のパワフルボイスに繊細な表現、ファルセットと、もうVo.宮本に手が付けられない状態だ。

 若いプロデューサーの起用もあり、アレンジも前作までにないような多彩さだ。「TEKUMAKUMAYAKON」のデジポップ感が堪らない。コーラスと打ち込みがかなり効いている。「雨の日も風の日も」はストリングスやホーンを大胆にフィーチャーしていて、ド派手なチューンになっている。

 あと、初回限定版には隠しトラックでギター弾き語りの「歩いてゆく」が収録されているが、こちらもかなりの名曲だ。購入検討しているかた、是非初回盤を。

 

 長いキャリアの中で、今が一番脂がのっていて、若々しいといっても過言じゃないはずだ。次回作がどうなるか楽しみなバンドのひとつだ。覚悟を決めた彼らの今後に乾杯。

 

  1. 3210 (インスト曲)
  2. RAINBOW 
  3. ズレてる方がいい ★☆
  4. 愛すべき今日 
  5. 昨日よ 
  6. TEKUMAKUMAYAKON ★☆
  7. なからん 
  8. シナリオどおり 
  9. 永遠の旅人 
  10. あなたへ  ★☆
  11. Destiny 
  12. Under the sky ★★☆
  13. 雨の日も風の日も 
  14. 歩いてゆく (シークレットトラック)

 

 

RAINBOW(通常盤)

RAINBOW(通常盤)