洗練というにふさわしいが…
「The Getaway」Red Hot Chili Peppers ★★★★(4.0/5.0)
「こ、これが大人な魅力というものなのか…」昨夜、私は信じられないといった表情でこうつぶやいた。バーで年上美女に口説かれたわけではない。(そうあってほしいが)
そうではなく先日加入したばかりのApple Musicで、CD購入を待ち切れず配信されたばかりのレッチリ新作「The Getaway」を聴いたのだ。これは、起こる。レッチリファンの大論争が…。
Topic 1 それはちょっとした事件だった
混乱するのも無理はない。RadioheadやJake Buggといった注目のアーティストの同時リリース(レディオヘッドは既に配信していたが)、James Blakeも含め先月からのリリースラッシュに世界10億のロックファンは動揺していた。そしてレッチリは衝撃を与えるべく5年ぶりの新作を携え、帰ってきたのだ。
Topic 2 新ギタリストジョシュの本格参加
前作より、ギタリストがジョンフルシエンテからジョシュ・クリングホッファーへ替わっていたのだが、その前作「I'm With You」自体は、ジョン在籍時の楽曲とあまり変わらないようなアプローチであり、ジョシュの参加よりもむしろ勢いを取り戻したかのようなベースのフリーあるいはドラムのチャドがグイグイ引っ張っている印象であった。そういう意味で、加入より6年以上経たジョシュが、どんな色を出してくるのかにもとても注目していた。
Point 1 明らかに違うサウンドプロデュース
全体を通して、サウンドプロデュースであったりアレンジが洗練されている気がする。これはおなじみのプロデューサーリック・ルービンから代わったデンジャー・マウスの影響だろうか。
先行されていた楽曲、「The Getaway」もそうだが、「Dark Necessities」こいつが凄い。ピアノやリズム隊のソリッドな演奏が初聴の時点で印象的だったが、聴きこむほどに更によく聴こえてくる。ジョシュのギターも、ジョンとはまた違う音作りやメロディが如何なく発揮されている。よく「ガム曲」「スルメ曲」と言われるが、こいつはどっちも備えたハイブリッド型で、間違いなくこれまでの名曲に肩を並べるのだ。
Point 2 Gt.ジョシュが放つ色
前述したように、Gt.ジョシュが今作ではようやく自分の色を出している。「Goodbye Angels」は確かVo.アンソニーの失恋をもとにした楽曲なのだが、ベースと絡み合うギターがいい。そして、「Sick Love」渋いギターの面目躍如である。2分過ぎのギターソロを聴いてくれ。この空間系の音作り。これを待っていたのだ。これまでで一番かっこいいジョシュのギターがそこにあった。必聴。
Point 3 リズム隊による引き締め
ピアノだったり、女性コーラスを大胆に取り入れたりした楽曲も並び、中盤以降中だるみしてしまいそうだが、ベース・ドラムの演奏が相変わらずうまく楽曲を引き締めている。終盤メランコリックな曲調が続くが、「Encore」は落ち着いたメロディにソリッドなベースがうまくグルーブ感を生んでいるし、「The Hunter」では派手ではないが静かで限界まで贅肉をそぎ落としたようなドラムが曲の哀愁感を引き上げている。
集大成が、「Dreams of a Samurai」である。ピアノから入り、サイケデリックな女性コーラスからギターと鋭いリズム隊が絡み合うセッション臭い一曲に、このアルバムのほとんどが詰まっている。事前予想どおりの名曲でよかった笑
プロデュースの効果だろうが、13曲50分少々でアルバムとしても尻すぼみにならない構成になっており、まさに盤石の作品となっている。ただ、悔やむべきは文句なしのアッパーチューンだけが足りないことだろうか。メロディの強い楽曲が少なく「Can't Stop」「By the Way」ばりの一発ノックアウトされるような楽曲があれば、間違いなく最高評価だっただろう。
興奮のあまり非常に長々と書きすぎてびっくりしましたが笑(文字数を確認して)、とにかく落ち着いた大人な作品(個人的には前作より好き)である。ベテランとしてのこの作風、これまでのレッチリとしては星3つ半、いちアーティストとしては星4つといったところだろうか。おそらくファンは賛否両論だ、これまでを良く知る人ならなおさら。ただひとつ、意外とライブでの演奏で化ける楽曲多いと思います。「Dark Necessities」はもちろんだが「Go Robot」「Sick Love」あたりはめっちゃ聴きたいですね。そういう意味でフジロックいけないのは残念です。行かれる方、もちろん必聴ですよ笑
- The Getaway ★★★☆
- Dark Necessities ★★★★☆
- We Turn Red ★★☆
- The Longest Wave ★★★☆
- Goodbye Angels ★★★☆
- Sick Love ★★★★☆
- Go Robot ★★★★
- Feasting on the Flowers ★★☆
- Detroit ★★☆
- This Ticonderoga ★★
- Encore ★★★☆
- The Hunter ★★★☆
- Dreams of a Samurai ★★★☆