音楽紀行(ライブレポ、アルバム感想・レビュー)

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The 1975「If You're Too Shy (Let Me Know)」歌詞和訳・解釈

 4/24にThe 1975の新曲「If You're Too Shy (Let Me Know)」がリリースされました。5月にリリース予定の新作「Notes On A Conditional Form」に収録される楽曲で、今年2月にイギリスで行われたライブツアーでは先立って披露されていました。この曲ではFaceTimeを通じた男女のやりとりが題材にされています。

 

和訳だけ読みたい方も多いかと思うので、の部分について註釈は下段にまとめています。気になる方はそちらもご一読いただくとより楽しめると思います。

 

 

I see her online all the time

彼女と会うのはいつだってオンラインを通して

I'm trying not to stare down there

While she talks about her tough time

彼女が近頃大変だと話している間、じっと見つめまいと努力する(※1)

 

Girl of your dreams, you know what I mean

誰もが夢見るような女の子なんだ、わかるだろ?

There's something 'bout her stare that makes you nervous

彼女の視線が心をそわそわさせる

And you say things that you don't mean

そして思ってもないことを口にしちゃうんだ。想像してみなよ(※2

 

Well, I found my hotel

ああ、僕は泊ってるホテルに辿り着いた

I called up the twins

そして双子に電話する

It's seven in the morning, so they won't let me in

だけど朝7時、そこには入れてもらえなかった(※3)

I need to get back, I've gotta see the girl on the screen

(And then I spoke to her and she said)

帰るしかないから、彼女のアカウントを探さなければいけなくなった

(そして彼女に連絡する、彼女はそれに応えた)(※4)

 

"Maybe I would like you better if you took off your clothes

「もし服を脱いでくれるならもっと君は良くなると思うんだ。

I'm not playing with you, baby, I think that you should give it a go"

ふざけてるわけじゃないんだ、愛しい君。是非やってみるべきだと思うよ」

She said, "Maybe I would like you bettter if you took off your clothes

彼女はこう応える。「もし服を脱いでくれるならもっとあなたは良くなると思うわ

I wanna see and stop thinking

ただその姿が見たいだけ、あれこれ考えるのもやめよう

If you're too shy then let me, too shy then let me know"

もしあなたが恥ずかしがり屋なんだとしたら、教えてね」(※5)

 

 

I've been wearing nothing every time I call you

君に電話するときはいつも裸でいる

And I'm starting to feel weird about it

それっておかしいことだって感づき始めてるけど

Sometimes it's better if you think about it

時々あなたもそう思ってくれてたらいいのに

This time, I think I'm gonna drink through it

こんなときは、僕は一杯やりながら考えなくちゃなと思うんだ

But I see her online, and I don't think that I should be calling

彼女とはオンライン越しの関係、電話するべきなんて思ってるわけでもないけど(※6)

All the time, I just wanted a happy ending

いつだって、僕はただイっちゃいたいだけ

And I'm pretending I don't care 'bout her stare

だから彼女の視線を気にしてないように装うのさ

While she's giving me a tough time

彼女が僕を焦らしている間(※7)

 

Well, I found a motel, it looked like the bins

ああ、僕はモーテルに辿り着いた。まるでゴミ箱みたいなとこ

I think there'd been a murder, so we couldn't get in

きっとこんなとこ殺人でもあっただろうと思うと入る気になれなかった(※8

I need to get back, I gotta see the girl on the screen

帰るしかないから、彼女のアカウントを探さなければいけなくなった

 

 

"Maybe I would like you better if you took off your clothes

「もし服を脱いでくれるならもっと君は良くなると思うんだ。

I'm not playing with you, baby, I think that you should give it a go"

ふざけてるわけじゃないんだ、愛しい君。是非やってみるべきだと思うよ」

She said, "Maybe I would like you bettter if you took off your clothes

彼女はこう応える。「もし服を脱いでくれるならもっとあなたは良くなると思うわ

I wanna see and stop thinking

ただその姿が見たいだけ、あれこれ考えるのもやめよう

If you're too shy then let me, too shy then let me know"

もしあなたが恥ずかしがり屋なんだとしたら、教えてね

But if you're too shy then let me know (Too shy then let me)

恥ずかしがり屋だったとしても、教えてね

If you're too shy then let me go" (Oh, yeah)

恥ずかしがり屋なら、私を離してよ

 

I see her online

彼女と会うのはオンライン上

All the time

いつだってね

 

She said, "Maybe I would like you better if you took off your clothes

彼女は言った。「もし服を脱いでくれるならもっとあなたは良くなると思うんだ。

I'm not playing with you, baby, I think that you should give it a go"

ふざけてるわけじゃないんだ、愛しいあなた。是非やってみるべきだと思うよ」

She said, "Maybe I would like you bettter if you took off your clothes

彼女は言った。「もし服を脱いでくれるならもっとあなたは良くなると思うわ

I wanna see and stop thinking

ただその姿が見たいだけ、あれこれ考えるのもやめよう

If you're too shy then let me, too shy then let me know"

もしあなたが恥ずかしがり屋なんだとしたら、教えてね

 

解釈

※1

 この曲はFaceTimeでのやりとりを題材にしている、とBBC Radioでのインタビューで明かしています。

 作中に出てくる「私」はある女性とオンラインを通じて交流している、つまりFaceTimeを使っていつもやりとりしているが実際に会ったことはない関係なのだと伺えます。

「stare down」とは見下ろすだったり、じっと見つめておとなしくさせるというニュアンスで使われるそうですが、ここでは通話を始めたばかりで相手の話す「最近大変なんだよねえ」なんてとりとめのない世間話を聞きながら、「とっととこの話を切り上げさせて、見つめ合いながら良いムードに入りたいな。」と逸る気持ちを抑えているようです。なぜなのかは後の歌詞で分かります。

 

※2

夢に見る、つまりは理想の女の子ですね。おそらく「私」は知人だか友人だか(=you)と話をしていて、「お前最近よくFaceTimeで連絡してる相手がいるみたいだけど、どんな子なの?」みたいなことを聞かれたときに、「いやいや聞いてくれよ。超良い子なんだ!見つめられたらなんだかソワソワしてきて、思いもしないことを言っちゃうって、想像してみなよ分かるっしょ?」と鼻息荒く答えている一場面。

想像を促している、と考えたのはここの文脈では「makes you nervous」「you say things that you don't mean」と「私」の体験を相手の一人称(You)で話しているからです。

 

ちなみに余談ですが、「Girl of your dreams」は海外のネット界隈で度々使われるミーム(一種のネットネタ)みたいで、girl of my dreams,woman of my dreamsなどで調べると出てきます。

me.me

 

※3

ホテルに双子、といえば有名なのは1980年に公開された映画「シャイニング」を想像します。私はこの映画を見たことが無いので詳しくは言及できませんが、この作品では舞台となるホテルの前管理人の娘として双子の少女が登場します。

news.aol.jp

 ここでは、ホテルの管理人(or受付)が双子であり、ホテルに朝着いたけれど連絡が取れず入室できなかったということでしょうか。たしかに24時間受付しているホテルはなかなか無さそうです。

 

「シャイニング」を意識した表現なのか定かではないですが、この物語に登場するホテルはかつて殺人があった場所であることから、後の歌詞との対照を狙っているように思います。

 

※4

ホテルに泊まれなかったのでそのまま帰るしかなく、「私」は「彼女」のアカウントを探してFaceTimeで連絡します。ホテルでは誰かと会う予定(そして情事を行うつもり?)だったけど、それが叶わなかったのでその埋め合わせということでしょうか。「彼女」とは冒頭の「理想の女の子」のことです。

彼女は朝っぱらから連絡しても応じてくれます。なかなかすごい…。

 

※5

クスっとくるような会話劇を通じて、2人がどのようなやりとりを交わす関係なのか分かりますね。

「僕」は努めて真面目に、誠実な雰囲気を装って声をかけます。「いやあ裸も良いと思うよ?冗談とかじゃなくて。うん、その方が魅力的に見えるしやってみなって。」なんて言う僕に対して、「彼女」はその言葉を真似して「裸も良いと思うよ?ただ裸が見たいだけなんだけどね。」と言うことで、僕がひた隠す感情なんてお見通しだと示しています。

そしていろいろ考えなくてもいいよ、恥ずかしいならそう言ってね、と声を掛けます。「Let me know」は「tell me」に比べて控えめで丁寧なニュアンスが込められるそうです。

eikaiwa.weblio.jp

 

※6

「僕」自身ここでは「彼女」との関係性について悩んでいます。実際に会ったことのない相手とFaceTimeで毎回裸になってやりとりしてる状況は奇妙だと。彼女もそう思ってくれたら状況は変わるかもと考えているのでしょうか。具体的には直接会う機会を得たり。しかしそれを彼女には伝えられない。ここでも僕は「シャイ」なのですかね。

 

「drink through it」は面白いイディオム表現で、「think through it」(よく考える)を捻った言い回しで「酒でも一杯キメながらじっくり考える」というニュアンスだそうです。

eigoslang.com

 

彼女とはオンラインでしかやり取りをしない間柄だしカップル特有の毎日連絡しなくちゃみたいな義務感(=「should be calling」)も無いのだけど、ついつい連絡してしまうと述べています。The 1975の楽曲では恋愛における一種の依存心が描かれることが多いですが、ここでもついつい依存しちゃう心情が表されています。

一方で実際に会ったことがないおかげで、相手との関係・やりとりに義務感を感じずに済むというオンラインのみでの関係における利点に言及している点にも注目です。日本でも外出自粛の対応してZoom,Skypeなどでいわゆる「オンライン飲み会」が流行ってますが、自室で気楽に参加できて良いという声はよく聞きますね。

 

 

 

※7

(※1)での言及、なぜ「僕」は彼女の世間話を聞いている間に彼女を見つめまいと努めていたのかがここで明かされます。

「happy ending」はよく使われる意味ハッピーエンドではなく、いわゆるオーガズムに達するという意味の下ネタ的な言い回しでも使われるようです。

hinative.com

 

ここでは後者の意味合い。要は、彼女とFaceTimeでやり取りをするのは自身の性的欲求を満たすためだということです。だから僕にとっては彼女の話すとりとめのない話なんてどうでもよくて、さっさと切り上げて良いムードに入りたいと思っているのです。

でも、会ったことが無い相手だと言ってもあからさまに自身のそんな欲求を伝えるのは恥ずかしいと思っているから、彼女の話には素知らぬ顔で耳を傾けるのです。

 

※8

ここでは「hotel」と韻を踏んで「motel」に訪れるわけですが、モーテルはホテルほど豪華な建物ではありません。

ja.wikipedia.org

思うに「僕」は誰かとドライブした果てにモーテルを訪れ、ここで情事を行うつもりだったのではないでしょうか。

ところが見るからにボロボロで気味の悪いモーテルだった。「bin」はイギリス英語で「ゴミ箱」という意味です。

britisheigo.com

 

あまりの雰囲気に、ここで殺人でもあったんじゃないかと考えると興が冷めお開きになったと想像できます。

 

ここで(※3)の言い回しを思い返すと、hotelとmotelで韻を踏むと共に、「シャイニング」に登場するホテルではかつて殺人が行われたという設定と殺人があったようにしか思えないモーテルという対比がされているのではないかと私は思います。

 

 

 

この曲は「もしあなたが恥ずかしがり屋なら、教えてね」という、歌詞の中でも繰り返されるフレーズがタイトルについています。

歌詞の中で「僕」が何を恥ずかしがっているかというと、1つはFaceTimeでやりとりをする相手に自身の性的欲求を隠さず伝えること。もう1つはオンラインでしかやり取りをしないという2人の関係性についてどう考えているかを問いかけること。The 1975の3rdアルバム「A Brief Inquiry Into Online Relationship」ではオンライン上の人間関係というテーマを描いていますが、この曲でもFaceTimeでの少しエッチなやりとりという俗っぽい題材が用いられていますが、より範囲を広く考えるならネット上において自分の考えや感情を伝えるのが難しいという大きなテーマが描かれているようにも思います。一方でネット上だと思いを伝えづらいという難しさだけを取り上げるのではなく、直接会って構築される人間関係から生まれる煩わしさからは解放された、気楽な関係を結べるという良い部分にも言及されています。要は、リアルでのやりとりでもオンラインでのやりとりでもそれぞれ良いところ悪いところがあり、どちらが良いかという単純なAll or Nothingではないということですね。

 

仮定形に関する注釈