音楽紀行(ライブレポ、アルバム感想・レビュー)

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The 1975「Roadkill」歌詞和訳・解釈

 5/22にリリースされたThe 1975による4枚目のアルバム「Notes On A Conditional Form」収録曲である「Roadkill」 *1

 

 

この楽曲では昨年The 1975がアメリカでツアーを行っていた際の日々が描かれています。

 

和訳だけ読みたい方もいらっしゃると思いますので、脚注は下段にまとめています。気になる方はそちらもご一読いただくとより楽しめると思います。

 

和訳

Well, I touch down and run to my connection

ああ、到着したらすぐ乗り換え便が出るので走らなくちゃな

Man in the gift shop called me a fag

ギフトショップにいた男がホモ野郎とか呼んできた*2

I feel up my tucked-up erection

アソコに手をやって勃起を誤魔化す

There's a pressure all over my head

頭によぎるのはプレッシャーのことばかり

And I know this is how I get paid, but

こうやって稼ぎを得ているんだと分かってていても

It's not really how I wanna get laid, so

どうなっていきたいと思ってるのか自分でもわからないから*3

Hundred forty when I last got weighed

最後に体重を計ったときは140ポンドだった*4

And I'm gonna lose more by Saturday

土曜にはもっと痩せてるんだろうな

 

And they're playing your song on the radio station

君の曲がラジオ局で流れている

Mugging me off all across the nation

どこへ行っても馬鹿にされてる気分だ

If you don't eat, then you'll never grow

ひとりでは生きていけない*5

I should've learnt that quite a while ago

ずっと前からそんなこと分かっていたはずさ

I know it gets hard sometimes

時々それが難しくなっていくのを感じる

Making out with people that you don't like

好きじゃない人達のことも折り合いをつけなよ

I know you don't feel alright

大丈夫じゃないってことは分かってる

But you look just fine to me

でも君は僕の前では気丈に振舞うんだ*6

 

Well, I pissed myself on a Texan intersection

ああ、テキサスの交差点で小便ちびった

With George spilling things all over his bag

一緒にジョージも自分のカバンにものをこぼしてさ*7

And I took shit for being quiet during the election

そんなことして過ごしてたら、選挙について沈黙するのかと罵倒された

And maybe that's fair, but I'm a busy guy

ごもっともなんだけど、僕は忙しい男だからね*8

I get stoned  nowhere and go where I get paid, but

どこへだって酔っぱらったまま稼ぎに出掛ける、でも*9

It's not really how babies get made, so

それで子供を授かるわけではなくて

I'll take a minute when I think I won't die from stopping

死にたくないなという感情が揺らめくのを抑えるには時間がいる

Oh, I'm just a busy guy

ああ、僕はまさしく忙しい男だからね*10

 

And they're playing your song on the radio station

君の曲がラジオ局で流れている

Mugging me off all across the nation

どこへ行っても馬鹿にされてる気分だ

If you don't shoot, then you'll never know

やってみなければ決して分からない*11

You should've learnt that quite a while ago

ずっと前からそんなこと分かっていたはずさ

I know it gets hard sometimes 

時々それが難しくなっていくのを感じる

Taking out your shit on the ones you like

好きな人たちにくだらない戯言をぶちまけなよ

You know, I didn't feel alright

僕が大丈夫じゃなかったって分かるはずさ

Until you spoke to me

僕に話しかけさえすれば

 

You, I've been waiting for you

君を、君をずっと待っていたんだ

My whole life, waiting for you

これまでの人生、君をずっと待っていたんだ

I've been waiting for you

君をずっと待っていたんだ*12

 

Well, I'm gonna get a gun but it's for my protection

ああ、護身用に銃が欲しいんだ*13

Or maybe I'll get myself a fun knife

それかおふざけでナイフを持っても良いかもな

 

解釈

*1:Roadkillとは車道で轢かれてしまった動物の死骸を表す単語ですが、スラング表現で路肩でクラッシュした車両を表すこともあるそうです。

ameblo.jp

アメリカの自動車雑誌HOT ROD」は「Roadkill」という番組を制作していて、人気のあるコンテンツだそうです。

 

 

*2:fag」とは「faggot」の略称としてネットなどで用いられるスラングで、直接的にはホモセクシュアルの男性への攻撃的な蔑称表現です。ただし同性愛であるかに関わらずより広い意味で男を蔑む表現としても用いられるようです。

ameblo.jp

アメリカの有名なコメディアニメ「サウスパーク」でもシーズン13第12話「The F Word」にて、この「fag」という表現を題材にしています。

en.wikipedia.org

 

*3:get laid」は慣用表現でセックスすることを表すのですが、恋愛あるいは生命の目標の1つがそこにあるように、転じてここでは人生の目的や行く末を示すのではないかと思います。名声を得てもこの先自分はどうしたいのかわからない状況がストレスに感じるということではないしょうか。

 

*4:140ポンド=約63.5kg

 

*5:The 1975の楽曲「Robbers」の一節を引用しています。直訳すると「食べなければ大きくなれないよ」といった感じですが、「Robbers」は男女の関係を描いた楽曲であり、文脈からは他人との人間関係や恋愛関係を通じて社会で育っていくという意味で捉えられます。

 

*6:このサビの部分での「you」とは歌詞を書いているMatty自身のことを指しているのだと私は思います。自身への語り掛けという描写。

ラジオで自分たちが作った楽曲が流れていて、有名になればなるほどどこへ行っても他者の視線や反応が気になるようになってしまった。でも周囲との関係を絶つわけにはいかないから大丈夫だと振舞おうとしていることを自覚しているということでしょうか。

 

*7:GeorgeとはThe 1975のドラマーGeorge Danielのことだと思われます。

 

*8:The 1975は3rdアルバム「A Brief Inquiry Into Online Relationships」では様々な社会情勢についてのメッセージを込めた楽曲を披露しています。

EU離脱問題などを争点とした昨年12月のイギリス総選挙の際、彼らに対してSNS上など一部では支持政党と表明すべきだという批判がありました。

それに対する冗談めいた反論がこの一節にあります。

 

インタビューではより具体的に、政治について描いた楽曲について考えるばかりで決して政治的バンドじゃない、The 1975は(楽曲や活動を通じて)意見をこれでもかと伝えている、自分の仕事は世界中で自身が見たものについて語ることだ、など述べています。

www.coupdemainmagazine.com

 

*9:mattyは昨年のサマソニでもそうであったようにしばしばステージでお酒を飲みます。あるいは薬物中毒に苦しんだ時期もありました。そういうこと以外でも、周囲や様々な要因から精神的にフラフラな状態にあっても、The 1975として作り上げてきた楽曲を手にステージへと立つことを言っているのだと私は考えています。

 

*10:脚注8で示したインタビューでは、自分にとってアーティスト活動こそが人生に欠かせないもので、やるべきことを失ってしまえば自分がどういう存在か、何が目的かということが分からなくなってしまう。そうしたひどい状況の中に陥ってしまうと死にたく感じるのだ、と述べています。

脚注3でも示すように自身の行く先が分からなくなることもある、しかしアーティストとして楽曲を生み出しコンサートを行う中で目標を見出し生きがいを感じる、そのためには多くの時間を費やす必要があり、だからこそ忙しいのだと言っているのだと捉えます。

 

アーティストとして生きていくことに意義を感じている、というのは「Tonight (I Wish I Was Your Boy)」でも描かれていることです。

yamapip.hatenablog.com

 

*11:この一文も「Robbers」からの引用です。

 

*12:ここにおける「you」とは誰のことでしょうか。脚注 で述べているように、これまで同様自分自身のことでしょうか。その場合だと、内なる自分(心情)との調和を待ち望んでいたという解釈でしょうか。

あるいはこの前の部分「ones you like」のことでしょうか。自身の感情を伝えられる相手、それはバンドのメンバーたちや活動に携わる人々、あるいはメッセージを込めた楽曲を聴くリスナーたち。そうした存在との出会いを待ち望んでいたという解釈もできるように感じます。「Guys」にてバンドメンバーとの出会いを歌っているように。

yamapip.hatenablog.com

 

*13:度々歌詞を引用した「Robbers」はMVから分かるように男女が強盗に入ろうとする物語が描かれ、歌詞の中でも「gun」が出てきます。

この一節はそこを意識して、強盗用じゃなくて護身用だよとつぶやいているんじゃないかとついつい深読みしてしまいますね。

 

あるいはこの楽曲はアメリカツアー中の出来事を描いていることを考えると、アメリカにおける銃規制についてのちょっとしたフックなのかもしれません。

I Like America & America Likes Me」では

Kids don't want rifles, they want Supreme

No gun required

Oh, will this help me lay down?

という一節にも分かるようにアメリカの銃規制を取り上げています。