音楽紀行(ライブレポ、アルバム感想・レビュー)

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【来日公演決定】"カオスこそが人々と繋がる接点"Holly Humberstone

7月にHolly Humberstoneが初の来日公演をおこなう。

 

今回はこの貴重なライブに備え、彼女の音楽にどのような魅力があるか、それらがどのようなルーツを持っているかを紹介し、ライブがより楽しみになるような特集をお届けする。

 

Topic 1 創造性に溢れた"ホーム"

Holly Humberstoneは4人姉妹のひとりとして、イギリスのグラムサム*1で生まれた。

グラムサムはリンカンシャー州にある、かなり自然に囲まれた田舎町。

彼女の両親は幼いころから、自身の子供たちが常に「創造的」でいられるよう支えたそうだ。

絵画や音楽など方法は問わず、芸術的な表現を勧め、クリエイティブを育む環境が、まさしく彼女のアーティストとしての今につながる。

 

彼女の興味を惹いたのは詩作と音楽であった。

両親のCDコレクションの中からいろんな作品を漁り、特にDamien Rice"O"というアルバムは初めてお気に入りになった作品で、とても好きだったことを覚えているそう。

 

その後もRadiohead, Bruce Springsteen, Nora Jones, Led Zeppelin, Pink Floyd等多くのアーティストから影響を受けたという。

 

Topic 2 自身の"カオス"を人々の共感へとつなぐ"ありふれたもの"に昇華する音楽

彼女は楽曲制作のことを自分にとってのセラピーなのだとしばしばインタビューで答えている。

幼少期より曲を書く目的は変わらず、ただ頭の中のカオスを曲へと昇華することで、自身にとっても理解できるものとして整理する。それが自分自身にとっても一種の癒しなのだ。

 

頭の中のカオスとは、自分自身の日常生活や感じたもの、経験したものから来る。それらは特別なものではなく、誰しもが(特に世代の近い人々が)体験しうるものなのだ、と彼女は語るのだが、それを表す表現としてしばしば"universal thing"という文言を用いているのが印象的だ。

 

だからこそ、自身の経験や感情をもとに描かれる楽曲が、多くのリスナーにとっての共感性を帯びて、人々と感情を繋げる接点となるのではないか。

 

彼女はYouTube上の各楽曲MVにて、しばしばその楽曲や歌詞の背景であったり、MV制作にあたっての意図などを自ら記載している。例えば、"The  Walls Are Way Too Thin"では、ロンドンへと引っ越した後の苦しみなどについて歌っていること、MVでの描写についてなど細かく語っているので、興味があればそちらも各楽曲参照してみてはいかがだろうか。

 

 

音楽性の広さも彼女の魅力のひとつだ。

ポップな曲調がメインながら、エレクトロな要素を含むものから、より静かで聴き入ってしまうようなバラードまで。

その音楽性の広さから、数多くのアーティストとも既にコラボをおこなっており、"Please Don't Leave Just Yet", "Sleep Tight"では、The 1975のフロントメンバーであるMatty Healyとも共同制作をおこなっている。*2

 

(※こちらは"Heat Waves"など世界中で大ヒットを飛ばすロックバンドGlass Animalsとのコラボ)

 

 

 

 

ライブパフォーマンスにおいてもバンドでの演奏から弾き語りまで、

またときには自らの楽曲に加え、RadioheadPrinceの楽曲を自分色にカバーし披露したりもしている。

 

 

 

 

Topic 3 新人賞を総なめ、いよいよリリースされるデビューアルバム

2021年にはBBC Sound of 2021の2位を受賞。

(過去にはBillie Eilish, Frank Oceanなど選出され、多くのアーティストにとってブレイクのきっかけとなっている。)

 

今年2月に開催されたイギリス最大の音楽賞The BRIT Awards 2022では、新人賞にあたるRising Star Awardを受賞した。

こちらも過去にAdele, Florence + The Machine, Sam Smith錚々たる受賞者が並ぶ。

 

(受賞が伝えられた際のエピソードも秀逸。Sam Fenderとの共演中にサプライズで伝えられた様子がこちら↓)

 

 

 

この春には世界最大級の音楽フェスCoachella Festivalに出演。

4月よりスタートしたOlivia Rodrigoの北米ツアーにもサポートアクトとして抜擢されたほか、前述の通り、Matthy Healyを共同プロデューサーに迎えた最新シングル"Sleep Tight"をリリース。

 

そして今後は待望のデビューアルバムのリリースを予定しているとのこと。

 

 

 

 

まさしくキャリアのターニングポイントともいえるこれ以上にないタイミング。だからこそ彼女のライブを今見たい。

果たして日本でのライブ*3ではどのような演奏を目の当たりにすることになるのか。

 

 

彼女の"カオス"が昇華された音楽が実際に演奏されるのを目の当たりにして、

人々ひとりひとりと共鳴し合う。はたしてそれがどのような光景となるのか…。

きっとその場に居合わせた方々にとって、とても忘れられない瞬間になるだろう。

The Walls Are Way Too Thin

*1:

ja.wikipedia.org

*2:彼女自身あまり知り合ったばかりの相手とスタジオに入り楽曲制作を行うのは得意ではなく、リラックスできずかえって制作が進まないこともしばしばだというが、Matty Healyはかなりリラックスできるような環境を作ってくれたり、ロックバンドのフロントマンとしての経験などふまえメンターとしても多くを教わったと振り返っている。

*3:フロントロウがおこなったこちらのインタビューでは、彼女と日本との縁についても語っている。

front-row.jp