音楽紀行(ライブレポ、アルバム感想・レビュー)

ライブに行ったレポートやアルバムの感想・レビュー。好きな音楽を見つけるツールにも

轟音に溺れる

RIDE JAPAN TOUR 2018 @なんばHatch

 2014年に再結成を果たした後、昨年には新作アルバム「Weather Diaries」をリリース、今年に入り新EP「Tomorrow's Shore」も出したばかりのRIDE待望の来日ツアー、その大阪公演を見ました。いや~轟音と瑞々しいメロディ、堪能させていただきました。ごちそうさまです。

Topic 1 変わらぬメロディの輝き

 彼らの新作「Weather Diaries」は20年ぶりのアルバムながら、1stアルバム「Nowhere」の頃と変わらないメロディの美しさがあり、しかし決して焼き直しじゃないそれぞれ個性を持った曲が並んでおり、ライブで聴けるのがとても楽しみでした。

Point 1 より力強いアレンジ

 いざライブが始まるとそうした期待を超えるような、よりエネルギッシュなアレンジで繰り出される新曲の数々!

 「Lannoy Point」「Charm Assault」とド頭から披露された2曲は、「Whether Diaries」でも冒頭の2曲として収録されるが、アンディ・ベルの弾くギターがよりノイズがかっており、そのエモーショナルなアレンジは堪りません…。明らかに音源より気持ちいい。

Point 2 これぞシューゲイザー

 最新EPからも「Pulsar」「Catch You Dreaming」が披露されつつ、新旧混ざり合う形で「Seagull」「Twisterella」など名曲が並び、会場も大盛り上がり!

 マークガードナーがMCで「20年くらい前にも大阪にライブしに来た。そこにいた人いる?どこの会場だったっけ?」などと昔を振り返る一幕も。

 「Dreams Burn Down」は自分がRIDEを好きになるきっかけになった曲の1つでもあり、イントロの突き抜けるようなギターのメロディは本日一番の昇天ポイントでした!

 本編ラスト「Drive Blind」はまさに圧巻。しゃがみ込みひたすらギターのノイズを操るアンディや、豪快にドラムを叩くローレンス、もくもくとベースラインを弾くステファン、ギターを熱くかき鳴らすマーク。彼らにより何分もの間「音の洪水」が会場へと降り注ぐのが本当に気持ちいい。轟音に身を預けながら無心で揺れていると、息もするのも忘れていてまるで音の洪水に溺れるかのようでした。会場を塗りつぶすかのような彼らの演奏とは対照的に、淡々と演奏に没頭する彼らの姿はまさしく「Shoegazer(靴を見つめる人)」であり、2重の意味で「これがシューゲイザー…」と実感しました。

 アンコールでも「Polar Bear」や「Chelsea Girl」など人気曲に会場もひとしきり盛り上がったまま終演。永遠にあの轟音を浴びていられたら、いかに幸せだろうか…なんて考えながら、もうしばらく余韻に浸ります。

 

(Setlist)

  1. Lannoy Point
  2. Charm Assault
  3. Seagull
  4. Wheather Assault
  5. Taste
  6. Pulsar
  7. Catch You Dreaming
  8. Twisterella
  9. Dreams Burn Down
  10. Cali
  11. Time of Her Time
  12. Lateral Alice
  13. All I Want
  14. Ox4
  15. Vapour Trail
  16. Drive Blind
  17. White Sands
  18. Leave Them All Behind
  19. Polar Bear
  20. Chelsea Girl

 

Tomorrow's Shore [12 inch Analog]

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すんげえ美声

COLLABRO JAPAN TOUR 2018@森ノ宮ピロティホール

 普段なかなか聴かないジャンルである男性4人ボーカルユニットCOLLABROの来日ツアー大阪公演の招待が当たり、めったにない機会だったので見に行きました。

 座席に座ってゆったり聴くライブは久しぶりで、客層もいつも見に行くライブとは全く違ったので(マダムの方々多かった!)新鮮でしたが、とても美声で素敵な公演でした!心がすっとやすらぐような贅沢なひと時でした。セットリスト、詳細な感想は割愛。

 

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The xxと観客が生んだ奇跡の時間

The xx Japan Tour 2018 @Zepp Osaka Bayside

 昨年にアルバム「I See You」をリリースし大ヒット、フジロックにも出演しベストアクトに挙げられたThe xx待望の来日ツアー。初の大阪公演に行きました!

Topic 1 素敵な雰囲気の会場

 大阪公演の会場は、Zepp Osaka BaysideでThe xxの演奏を(大きめとはいえ)ライブハウス規模でみられるのはそうそうないのでは…?

 JR桜島駅のすぐそばにある会場ですが、入場待ちの列も並びやすいような立地。看板も素敵で、会場内は柵も多くどの位置からも見やすいとても良い会場だと一目で思いました。

Topic 2 好アクトを引き寄せる観客の熱意

 オープニングアクトのSapphire Slowsはエレクトロニック、ソロの演奏でしたがとてもクールで雰囲気をうまく作ってくださりました!

 そこから1時間弱待って(すごく焦らす笑)ようやくThe xxも登場!本日の客層はハイテンションなパリピから文学少女まで幅広く、外国人の方も多かったからか、それぞれいろんなタイミングで盛り上がるポイントが生まれ相乗効果からすごい盛り上がりになったのかなあと思います。

Point 1 新作アルバムの魅力を5倍引き出す

 ライブは「Dangerous」からスタート!ド頭からすんげえ盛り上がり。3人だけでこんだけグルーブ生んで会場中を踊らせるのか…とあまりの魅力に笑みすらこぼれてきました。

 最新作である「I See You」収録曲も多く披露されましたが、ライブ用にそれぞれ細かくアレンジしていて、CD音源の魅力を増幅させていました。

  「I Dare You」はしっとりめにアレンジされていて、Romy,Oliverの歌声がより沁みるように…。そして終盤では会場のシンガロングもじんわり広がって、今回のライブで1番美しかった瞬間だと思います。

 「On Hold」は他のメンバーがはけた後、JamieによるアップテンポなMixでのDJプレイ、会場をダンスフロアに一変させると、再び出てきたメンバーにより生演奏が始まるという演出。Romyの歌い出しでの、観客による歓声はこの日の絶頂ポイント。

Point 2 アーティストと観客がライブを作る

 今回のライブはなにより、「アーティストと観客それぞれ合わさって、初めてライブの価値は決まる」ということを実感させるものだったと思います。

 ライブ序盤は、初の大阪公演ということもあってか特にRomyは緊張気味で表情も硬かったんですが(Oliverが気遣って耳打ちしたりしてた)、「Island」「Crystalised」など次々繰り出される人気曲に対し、観客もすごく身体を揺らしたり、ひっきりなしに歓声が上がったり(海外のフェスみたいな雰囲気!)会場の盛り上がりを目にして、明らかに笑顔が増えていくのが分かりました。「前の方!左の方!右の方!2階席!最前列!」と呼び掛けるシーンも!

 MCでも「母国から遠く離れたところで
これだけ温かい雰囲気の中で演奏できるなんて思ってなかった。大阪でライブできてよかった!」と言ってて、盛り上がりを喜んでいることが伝わりましたし、Romyは「私の秘密をみんなに教えていい?今日のライブは今までで1番お気に入りなの!」と、とても嬉しい言葉を…。

 「Filter」「Shelter」「Loud Places」の3連発はもうわけわからないくらいみんな踊りまくってましたし(隣の方の踊りっぷりが爽快でした!)ラストの「Angels」での合唱でライブを締めて、奇跡のような90分近くでした。

 

 最近では来日公演は東京のみ、ということも多いですが間違いなくThe xxの3人もお気に入りの場所になったであろうエポックメイキング的な大阪公演でした!ありがとう!!

 

(Set list 17.2.9)

  1. Dangerous
  2. Islands
  3. Crystalised
  4. SSL
  5. Heart Skipped A Beat
  6. Reunion
  7. AVN
  8. I Dare You
  9. Performance
  10. Infinity
  11. Replica
  12. VCR
  13. Fiction
  14. Shelter
  15. Loud Places
  16. On Hold
  17. Intro
  18. Angels

 

I See You [帯解説・ボーナストラック2曲収録 / 国内盤] スペシャルプライス盤 (YTCD161JP)

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稀代のシンガーソングライター

Julien Baker Japan Tour 2018@CONPASS(Osaka)

 2ndアルバム「Turn Out The Lights」を昨年リリースし、各所で大絶賛されている新進気鋭のSSWことJulien Bakerの初来日ツアー、その大阪公演に行ってきました!今更ながら短めに感想を。

 とにかく彼女はすでに唯一無二の世界観を作り上げているな、ということを強く感じました。会場であるCONPASSはちっちゃいライブハウスで、すごく表情とかも見えたのですが全く緊張したそぶりも見せず大物オーラが半端なかったです。歌声は力強くギターも上手い、という彼女の姿になんとなくJeff Buckleyを重ねてしまいました。

 「Shadowboxing」や「Rejoice」など特に素晴らしく、ギター・キーボードを弾きながら歌うJulien Bakerとサポートメンバーであるバイオリニストの2人だけなのに、力強く響く「生の迫力」みたいなのを感じ、早くも次回作や来日公演を楽しみです!

 

(Setlist)

  1. Appointments
  2. Sour Breath
  3. Shadowboxing
  4. Sprained Ankle
  5. Red Door
  6. Everybody Does
  7. Rejoice
  8. Funeral Pyre
  9. 100 Dollars (Cover:Manchester Orchestra)
  10. Turn Out the Lights
  11. Televangelist
  12. Hurt Less
  13. Claws in Your Back
  14. Go Home
  15. Something

 

TURN OUT THE LIGHTS [帯解説 / ボーナストラック2曲収録 / 国内盤] (OLE13032)

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世界一細かいミスチル新曲「here comes my love」5分58秒の感想

here comes my love

here comes my love

イントロ

(0:00~)

 まず、ピアノのみのイントロのコード進行がすさまじい。「A,F#m,C#」「A,F#m,G#」って進行してるんですか、C#とG#が変わるだけで聞こえ方が変わってくる。

「A,F#m」は神秘的でどこか儚い曲調を伝えつつ、後に続く「C#」は暖かいコードなだけに違和感を持たせる。

もう一回「A,F#m」と繰り返して違和感なく続く「G#」によってすっとAメロへと導く狙い。ここの16秒から既に、桜井和寿がいかにコード進行を組み上げるイカれた才能を発揮してるか分かる。

 1番

Aメロ

(0:16~)

 イントロからそのままピアノのみで進行。シンプルなんだけど「思うかな」のところでボーカルとユニゾンする、ここ別々のメロディと思い込んでいたのが重なって素敵。

(0:44~)

 「ぐえっ!?」って息を漏らしてしまう、みぞおちにドスっと来るバスドラム。どこまでも響いていきそうなリバーブがやや効いたスネアドラム。ドラムの硬い音が曲をシリアスに引き締めてる。

 ふと耳をすます。「ズンズン」と鳴るベースの音の切り方が細かく部分ごとに変えられてる。なるほど、楽曲の重厚感は硬い響くドラムと裏で鳴るベースの賜物か。

Bメロ

(1:13~)

 再びピアノのみに。さっきまで重厚なサウンドって言ってたのに、急にスッと照明が消えたかのように、モノクロになったかのような喪失感にドキッとする。「引きの美学」である。

(1:23)

 とピアノに聞き入るのも束の間、シンバルを合図に一気にまたバンドサウンドが広がる。距離を一気に詰められたような錯覚に心をグッと持っていかれる。

(1:34)

 ミスチル得意の、「ドンドン!」×2は「サビに入るからしっかり聴いていけよな」の合図。

 「祈る「ように」」「叫ぶ「ように」」にあわせて「ドンドン!」ってやってるんだけど、注目すべきはこの後。歌詞に対するメロディの作り方の妙。「はぐぅ↑れないように」は、「ように」に当てはめるメロディは3回とも同じにして、なおかつ「サビにこれから入るよ」って思わせるメロディの上ずりを「は「ぐぅ!」れない」の部分で作ってみせてる。は~どうかしてる。

 

サビ

(1:41~)

 ここサビということで、目立つメロディにバッシングギター(ジャーンってやつ)とリードギター(単音のパート)が前面に出てて、更にストリングスが薄く張られてて、とかく音数が多いんですが、じゃあなんでごちゃごちゃ感が無いのかというとベースとドラムがこの部分では努めて堅実な演奏をしてるから。(ドラムはシンプルな四つ打ち、ベースはルート弾き)

 こういう面でミスチルのリズム隊は、必ずしも派手なパートを弾くわけではないけど楽曲中のバランス感覚がめちゃくちゃ優れてると思う。

(2:09)

 サビが終わると、ピアノとギターのみに。寂しさのある冒頭同様のピアノに、哀愁すらある、にじむようなギターのメロディが絡み付くことで、聴こえ方も当然変わってくる。2番以降の、歌詞を含めた楽曲の意味合いやメッセージが変わるということの明示。

 

2番

Aメロ

(2:22~)

 バンドサウンドで頭から進行する。

 ギターが楽曲の前面に出るようになって顕著になったのは、桜井さんと田原さんの弾くギターがそれぞれ違う個性を持ってる点。桜井さんの弾くギターはジャキジャキしたような、真っ直ぐピーンと伸びていくような音。対して田原さんの弾くギターは、アルペジオやスライドギターを駆使しつつ、先の通りにじむような音。

 2つ異なる個性のギターフレーズが交差するので聴いていて退屈しない。

 

Bメロ

(2:50~)

 ここでもピアノにギターのフレーズが追加されている。

(3:12)

 ここがこの楽曲で1番痺れた。「ドンドン!」の後の「ギュ~ン」って鳴るギターのチョーキング。あれは雷鳴、2番だからって油断してるリスナーをノックアウトする電撃。

 そこから間髪入れず、これからの明るい展望を示すような晴れやかなトランペットが鳴り響く。濃密な展開に「なんじゃこりゃ~」ってなる。

 

サビ

(3:18~)

 ここにきて今度はフルートのフレーズが増える。アレンジ神がかり過ぎ。「泳いでるよ」のところでバックに流れるフルートとかさりげないけど優しいフレーズ。

(3:45)

「待つ方へ」のところで鳴る田原さんの枯れたようなギター、細かいけどサビとCメロとの合間を埋めるめちゃくちゃクールな1音。

 

Cメロ

(3:50~)

 ここではストリングスではなくフルートが全体を彩る。少し前までのストリングス一辺倒な過剰アレンジはどこへやら、多彩なアレンジの多さは、「REFLECTION」でやれる全てをやりきったミスチルが、「ヒカリノアトリエ」以降でやってきた新たな試みの結実に他ならない。

(4:15)

 どこまでも昇っていくような、高揚感のある「パパパー」ってトランペットに導かれてそのまま間奏へ突入する。

 

間奏

(4:20~)

 さあ事件である。いつの間に桜井和寿ブライアン・メイになったのか。サビの音階がそのまま1音上がってのギターソロ。QUEENを、「Bohemian Rhapsody」を彷彿とするような天にも昇るかのようなフレーズ。ああ、そうかこれが「フレディマーキュリー」っていう仮タイトルで作ってた曲か、と納得。デビューして25年経ったバンドから、これまでなかったよなアプローチで、こんなロックバラードが繰り出されるなんてもうお手上げ。「トゥルルルルルルル」って音階を昇っていくギターと共に、僕も果ててしまいたい。

 

ラスサビ

(4:50~)

 とんでもない楽曲を完成させた華々しいウイニングランに他ならない。しばし聴くのみ。

 

アウトロ

(5:34~)

 イントロと同じピアノのフレーズで締められるところだが、フルートが鳴るところが憎い演出。悲しいメロディだけどなんとなく希望もみえるかのような、明るい先行きを暗示するようなアウトロになってて、ここまで5分半にわたり何度も心を揺り動かされたわけだけど、スッと落ち着かせることができるような終わり方。

 

歌詞について

 歌詞は妊活をテーマにした、タイアップするドラマの内容にリンクしているなあと感じます。捉えようによっては恋人同士であったり、あるいは精子卵子の比喩と捉えることもできるかなと思います。

「飲み込んでくれ 巨大な鯨のように」「この海原を僕は泳いでいこう」という表現が暗示してるかな?と思いますし、

「あって当然と思ってたことも実は奇跡で 数えきれない偶然が重なって今の君と僕がいる」というのも、お互いの両親もかつては自分達のように巡り合い、天文学的な確率で僕らという生命を宿したんだということを言っているように思います。

 そう考えると、「here comes my love」とは、(「これこそが僕の愛情だ」「僕の愛情がやってくる」と二通りの訳し方があるのですが)

あなたのもとへ愛情を届けたいという意味と、いずれ宿すであろう新たな生命こそが僕の愛情の証なんだという意味にとれるように思います。タイトルがテーマを雄弁に語っていたんだなあと。

 

 

 昨年末に、ミスチル全曲振り返って「さて次はどんな曲できるのかな~」なんて期待してたら、またとんでもない曲出してきたなあと…。

 今年中に出る予感のある新アルバムも楽しみです!

 

25年分の感謝と、全曲219曲レビュー。 - 音楽紀行(アルバムレビュー)