音楽紀行(ライブレポ、アルバムレビュー)

行ったライブの感想や聴いたアルバムのレビューを。いい音楽を見つけるツールにも。

好きなバンドを見にタイへ行った話【前編】

「自由」と「多様性の祝福」

 

 Summer Sonic 2019での鮮烈なライブを見た後、家に帰った私は「もう一度ライブ見たいなあ。」とつぶやいた。

 それから約1ヶ月が経ち、気づけばタイ行きのチケットを片手に飛行機の搭乗口前に立っていたのである。「貯めてたバイト代が無くなりすっきり無一文になりますよ。」と親切に忠告しようとする自分が顔を出さないうちに、諸々の手続きをもう一人のお気楽な自分が済ませてくれていたのだろう。

 

 一人で海外に行ったこともない若者に、コンビニに行くかのような軽やかなテンションで決断を下す原動力を与えてくれた存在、そのの名前は「The 1975」だ。好きなアーティストを見に行くための約3日間の短くて些細な旅路、一生残る大きな宝物のような体験。しばしその自分語りにお付き合いいただこう。

 

(09.14.2019) Bangkok,Thailand

 ライブが行われたのはバンコク郊外にある「サンダードーム(Thunderdome)」という会場。いくつもの展示会場やサッカー競技場などが隣接しており、イメージとしては日本でいう幕張メッセのような感じ。会場自体は約5000人キャパ。

 さて夕方にチケット引き換えが開始するので、その前に会場に向かう。まず目を引いたのは、観客たちが気軽に記念撮影できるようにパネルが設置されたスペース。聞くところ、タイではよくこうしたサービスがあるとのこと。

 チケット引き換えが始まると、事前にスマホにダウンロードしておいた電子チケットを提示し、リストバンドとチケットカードを受けとる。(記念になるのでとても嬉しいサービス!)

 

 チケット引き換え後は早めに並んで開場を待つ。タイでのライブは整理番号無しで、購入したチケットの指定エリアごとに自由に並べる。開場時刻が当日になってはっきりしたアナウンス無しに一時間早まるのもなかなかの衝撃だったが(現地の方に聞いても「よく分かんないけど早まったぽいよ…。」と言っていた笑)ゲートを開くふりをしておちょくる警備員に開場待ちの方々の笑いが湧く和気あいあいとした雰囲気にほっこり。そしてついに開場すると運良く最前列に入ることができ、マジか!と早くも大興奮。

 

 私はたまたま会場で仲良くなった日本人の方と一緒に入場したが、最前列で隣り合わせたのはタイの南の方に地域から来た2人組とはるばる台湾からやって来たという方。これが本当に素敵な出会いとなった。

 

 最前列ということもあり少しキツキツになってしまったので「狭くなってしまいすみません、大丈夫ですか?」と訪ねると、大丈夫ですよと気さくに対応してくださったのは台湾から来た女性。話してみると音楽の好みがとても合って意気投合!「Coldplay良いよね!Imagine DragonsとかYears&Yearsとかも!」「Mike Shinodaのライブは見た?来年Green Day来るのヤバくない?」など大盛り上がりで面白かった。日本のサマソニフジロックのこともよく知られていて嬉しかったり。

 一方でタイの2人組はとにかくテンションが高かった。一緒に入った日本人の方や台湾の方がフラッグを手作りしてきたと言うと「いいね、素敵すぎ!その写真撮ってもいい?いやみんなで写りましょ!」と気さくに話してくれる。着ていたシャツが気になったので聞いてみると、なんと自作という気合いの入りっぷり!(表面はライブの日付が入った記念仕様。裏面は「Love It If We Made It」の歌詞にあやかり、ドナルド・トランプの写真とThank you Kanye, very coolの文字入り笑)タイの好きなアーティストを聞いたら真っ先にPhum Viphuritをおすすめされて、「それ知ってる!僕もめっちゃ好き!」と言ったらとても嬉しそうだった。

 そんなことなど言ってひとしきり盛り上がっていると、タイの方が「ビール飲む?皆の分買ってくるよ!」と言ってささっと会場外に出ていき、本当に買ってきてくれた!こんなのことは初めてで、とても驚いたしめちゃくちゃ嬉しかった。いろいろライブに行ってるけど、初めて最前列でその場で会った方々と乾杯をした。

 タイではライブ中でもぞろぞろと観客が会場外に出てお酒を買い、またのんびりと入っていくという光景がよく見られるらしい。よく日本に来た海外のアーティストは、日本の観客はとても礼儀正しいと言ってくれる。もちろんリップサービス込みだろうが、たしかにこうしてみると本当に真摯だ。ライブ中にぞろぞろと観客がお酒おかわりしに会場出ていくことなんてあまりない。

 

 入場後オープニングアクトであるNo Romeの出番まで約2時間半ほどあったのだが、あまりに会話が盛り上がって一瞬で過ぎ去ってしまった。日本人の方と「こんなこと初めて!最高すぎて、もうライブ見る前からチケット代の元取れた気分だね!」と言っては笑っていた。

 

 そしてNo Romeが登場。レーベルが同じでThe 1975との関わりも深いこともあるが、なによりEPを去年今年とリリースする中で確実にファンを増やしているのだろう。曲ごとに大歓声を上げる彼のファンも(自分含め)多かった。ライブはエレクトロでひたすら踊れるな!と思えば、一転エモ要素満載のギターロックで燃える展開を見せる二面性がとても魅力。

 ところでライブ中は最前エリアであっても押し合いになったり後ろからぎゅっと圧縮されることもなく、各々が踊れる程度のスペースをとって鑑賞するスタイルらしい。(これはThe 1975が出てきてからも同じ)

 

 

 そんなこんなでタイの観客や会場の雰囲気を見ていると、「ライブって人それぞれ自由に楽しめるのが一番だな。」と深く感じられた。

 思い浮かべたのは、田舎に住んでいた頃、小学校でやってた運動会。こういうイベントごとには、父兄や親戚や地域の方々がたくさんいらっしゃる。小学生が競技に取り組んでるのを見守りながら、ある人は必死に声援を送ったり、またある人は我が子の専属カメラマンとばかりにいっぱい撮ったり、またお酒を飲みながら競技そっちのけで盛り上がったりその姿は様々。でもここにいる誰もが運動会という場を楽しみに来た一点では共通していて、自由に振る舞いながら場はゆるやかに大いに盛り上がる。こういう光景の素敵さを、タイでのライブで想起したのだ。

 自分は今まで、ライブに来たからには皆が演奏に耳を傾けて飛んだり跳ねたり踊ったりして熱く盛り上がらないとダメだ!という考え方に固執していた。ネットでもよく、鑑賞の仕方だとかルールやファンの在り方みたいなのが話題に挙がるし、その度にいさかいが起こる。

 でも、きっとライブの盛り上がり方なんて人それぞれ。その会場その土地その国々によって様々で良いのだ。南米でのロラパルーザみたいに地鳴りのような大合唱が轟いたり、アメリカでのコーチェラみたいに会場中がアトラクションであるかのように観客がワイワイしたり、イギリスでのグラストンベリーみたいにでっかい旗を振って自由な格好で楽しんだり…。どういう盛り上がりが好きか、というのは人それぞれで違ってくるはず。それなのに特定の楽しみ方や盛り上がり方を他者に押し付けては、自由を謳歌するはずのライブから自由さが失われて本末転倒なんだと思う。それよりも各々が自由に楽しんだ結果生まれたその時々で特有のライブの雰囲気を大事にしたいなと考え直した。行くライブごとにいろんな形の盛り上がりが生まれるのってなんだかワクワクするな、とさえ思った。

 

 他国でライブを見ていると、日本でのライブの良さにも気づく。バラードが披露されたとき誰しもがその曲に聞き入っているのはとても素敵なところだと思う。静かな湖に滴が垂れて水紋が広がるかのように、音ひとつひとつの残響まで会場に広がるのは美しい。かつてエドシーランが来日公演でのMCで「日本の観客は(落ち着いた楽曲を披露するとき)じっくり静かに聴いてくれてとても嬉しい」と言っていたことを思い出した。


 これは憶測だから間違っていたら訂正するが、「他の国ではこれこれだから、日本でももっとああした盛り上がり方をしたら良い。」とか「アーティストが日本で盛り上がりを見て喜んで欲しいなあ」とか深く考えてファン同士でしょっちゅう議論になるのって多分日本だけではないか。これはひとえにアーティストへのリスペクトが高い証だと僕は思っている。特にアジアの極東の島国に遠く欧米から来てくれるアーティストへのありがたみは誰しもが感じている。だからこそライブでは誰もがこうあるべきだという考え方から離れて、各々が自由なやり方でアーティストへのその愛情やリスペクトを表現するやり方でもきっとうまくいく。

 


 観客がみんな自由に楽しむこと。(もちろんアーティストや他の観客を著しく不快にするようなことは避ける最低限のマナーというものは必要だ)そしてお互いの自由が触れ合い交差したとき真っ先に相手の自由を尊重することこそが、この自由で楽しげな空間を支える屋台骨なんだなとバンコクの観客たちを見て確信した。


 自由で良いし、人それぞれで良い。カマシワシントンが「Truth」という楽曲を通じて「多様性の祝福」をメッセージとして伝えるように、観客ひとりひとりがそれぞれの形で自由に楽しめるライブという空間を心の底から大事にしたい。そして各々が自由に振る舞うそんな空間がひとつになって大きな盛り上がりを生み出すことこそ、この世に音楽があったおかげで成り立つ奇跡ではないか。

 

 

 そんなことを考えていたら、No Romeによる30分ほどの素敵すぎるライブもあっという間に終わり、気づけばもうThe 1975の開演間近。

 

 奇跡のような光景を目の当たりにするまで、あと少し…。

 

後編に続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

2019年上半期アルバムベスト

今年の1~6月にリリースされたアルバムの中から特に好きなものを10枚。選んでない作品でもたくさん素敵なものがありました!悩んだ~…

I Am Easy To Find [限定デラックス・エディション / 解説・歌詞対訳 / ボーナストラック1曲収録 / ボーナスディスク付] (4AD0154CDXJP)

I Am Easy To Find」/ The National

一番優しさや希望を自分の人生に与えてくれました。The Nationalは前作を好きになって聴き始めたのですが、緊張感やダークさがあった前作と対照的に今作は暖かみのある作品で、渋味のある歌声がすごくマッチするなあと感じました。

歌詞の部分を解釈しつつ、今後レビュー記事も書いていこうと思っています。こういう作品との出会いを大事にしたい。

 

Oh My God

Oh My God」/ Kevin Morby

コアな音楽好きを雄弁に語らすのは常に時代の最先端を切り開くような音楽だと思いますが、この作品は時代とは離れた普遍的な存在としてとても魅力的だと感じました。もちろん古くさい音楽だというわけじゃないし、歌詞だって今の時代を生きるなかで生み出されたものですが、100年前に聴いても100年後に聴いても感動していただろうと確信できるのです。そこまで音楽に詳しいわけではありませんが、今までの人生で聴いたフォークロックでNo.1アルバムです。

 

Ribbons [解説・歌詞対訳付 / ボーナストラック1曲収録 / 国内盤] (BRC593)

Ribbons」/ Bibio

たまたまレコードショップに立ち寄って、試聴コーナーで聴いた「Curls」に一発で恋に落ちました。その日のうちにアルバムを購入。いろんな楽器の音色が顔を出す鮮やかな作品ですが、見える風景は統一感があるという点がとても好きなところです。日本のあらゆる季節と共に聴きたいです。

 

834.194

834.194」/ サカナクション

6年ぶりという長いスパンで、おそらくアーティスト自身も想定していなかった道を辿って生まれたアルバムなのでしょうが、しかし明確なコンセプトで素敵な楽曲を結ぶ作品。応援してきたアーティストですが、ひとつの到達点に辿り着いた感があります。この次の一歩がどうなるか良くも悪くも想像したくない、それくらいの大団円。

 

ANGELS

ANGELS」/ THE NOVEMBERS

とにかくかっこいいです。いろんな音楽の要素を含みつつ、バンドの美学でまとめているようで、すっかり陶酔し夢中で聴きました。いずれライブでこの楽曲を聴きたい。The 1975やBring Me The Horizon,Slipknot,Grimeの新曲を聴いていると、この作品が世界の音楽界の潮流に先んじて進んでいるかのような運命的なものを感じます。

 

Not Waving, But Drowning」/ Loyle Carner

優美で穏やかで心に残る作品、常に日常のどこかに置いときたいですね。サウスロンドン勢はつくづく恐ろしいと感じました。初来日公演は行きそびれましたが、次の機会は絶対に逃したくない。

 

ARIZONA BABY [Explicit]

ARIZONA BABY」/ Kevin Abstract

中身が詰まっているのに、アルバムの中で流れる時間が5分くらいに感じられるのです。言わずと知れたBrockhamptonのリーダーKevinのソロ作品ですが、これもしかしたらいずれ出るであろうBrockhamptonの新譜より好きになるかも知れない…なんて危惧したくらいハマりました。その危惧が杞憂に終わるどころが彼方へと消し飛ぶくらいの新譜が届けられるのはまた後の話。

Ancestral Recall

 

Ancestral Recall」/ Christian Scott aTunde Adjuah

今最も刺激的で革新的な音楽を生み出しているのはジャズなのではないかと思わされた圧倒的なアルバムです。5月末の来日公演でも伝説に残るかのような鬼神のごとき名演を目の当たりにすることができました。

 

Schlagenheim [解説・歌詞対訳 / ボーナストラック2曲収録 / 国内盤] (RT0073CDJP)

Schlagenheim」/ black midi

めちゃくちゃなようで精密な、それでいてかっこいいんです。初期衝動と緻密な計算という矛盾するようなふたつを併せ持つカオス。すぐ間近に迫った9月の来日公演が楽しみです。

 

Feeling's Not A Tempo

Feeling's Not A Tempo」/ Gemma

「ジャケ聴き」という自分なりに見つけた新しい音楽の探し方で出会えた作品。アートワークから想像できるような、ポップが爆発していて心躍るような音楽が詰まってます。まだ今年これを越えるポップを聴いてません。

 

 

下半期も既にたくさんの素敵なアルバムと出会えています。年末のアルバムベストがどんなラインナップになっているのか、今から楽しみなようで恐ろしくもあり…。

究極に気が早いサマソニ2021ラインナップ予想(という名の願望)

 どうも。今年のサマソニを満喫して一週間が経ち、まだまだロスを引きずっている

毎日です。

 さてフェスの後に毎度欠かさずやっていることが2つあって、ひとつは今年を振り替えること。見た中でどれが良かったなあとか、あれは見損ねてしまったけど次は見たいなあとか、思い返すわけですね。

 そしてもうひとつが、次の年のラインナップを予想、というか希望するわけです。ところが、残念なことに来年は東京オリンピックの影響でサマソニの開催は無いんです…。(もっとも、通常の倍の時間かけて準備できるはずなので、ラインナップ面でも運営面でも良い効果があることに期待したいです。)

 

 ではどうするか。もう再来年のことを今から考えちゃおうぜ!ということでとても気が早い、Summer Sonic 2021ラインナップ予想です!

 

Day 1

マリン/オーシャンステージ

The 1975

Twenty One Pilots

King Gnu

Official髭男dism

 

 1年開いて21年目となり新たなスタートを切るという意味では、2020年代を意識したラインナップに期待したいです。今年のサマソニを大いに沸かせ注目を集めるThe 1975、そして世界でもっとも勢いのあるロックデュオといえるTwenty One Pilotsこそ今後のロックを牽引する存在だと思います。世界的に見てもロックの人気度が以前高い日本でこそ、ロックでありながらポップなど様々なジャンルを内包する2組がダブルヘッドライナーとしてサマソニの新たな時代の幕を開けて欲しいです。そしてそこに続く日本のアーティストもまた、20年代に日本の音楽界の中心に立つようなロックバンドが並んでいてほしいです。今年のサマソニでも注目を集めた2つのバンドが、メインステージに立つのは熱いです。

 

 

 

マウンテンステージ

星野源/米津玄師

Troye Sivan

No Rome

 

 今年のラインナップで最も大きな変化のひとつとして挙げられるのは、日本のアーティストをヘッドライナーに置いたこと。今後もラインナップの重要な位置に日本のアーティストが立つことは多いでしょう。そこで自身も洋楽を多く聴き、影響を多く受けているというアーティストがサマソニに出てくれるのを望みたいです。星野源あるいは米津玄師がトリを務め、またソロアーティストとして頭角を表しつつあるTroye Sivan,No Romeが並ぶラインナップはとても面白そうです。

 

ソニックステージ

Unison Square Garden

Wallows

The Night Cafe

 

 他ステージのトリと被らない音楽性を考慮しつつ、MΦはとてもブッキングして欲しいアーティストです。またソニックステージお約束のインディーロックバンドを多く並べて欲しいところ。個人的に注目しているWallows,The Night Cafeはとてもこのステージが似合うし、日本での人気も高まりそうです。Unison Square Gardenも確かな演奏力とポップなメロディがとてもサマソニにハマると思うので出てほしいなと思うアーティスト。

 

 

Day 2

マリン/オーシャンステージ

宇多田ヒカル

Billie Eilish

Charli XCX

ゲスの極み乙女。

 

 サマソニの新たなスタート、という意味では今年は無かった女性アーティストのトリを期待したいです。2日間開催では日本のアーティストをメインステージのトリに選ぶか分かりませんが、多くのファンが望む宇多田ヒカルのブッキングが成功したらとても面白いなと思います。海外から来た観客にとても見て欲しい。そして準トリにBillie Eilishを置く、これはセンセーショナルな並びだと思います。去年のChance The Rapperや今年のThe 1975のように、準トリであっても大盛り上がりするのがサマソニの良いところだと思います。注目度が上がりつつあるCharli XCX,個性の強いアーティストが多く並んでも埋もれなさそうなゲスの極み乙女。が続きます。

 

マウンテンステージ

Marshmello

Alesso

Tiesto

 

今年のEDM勢の人気もとても凄かったと思います。今年のサマソニ東京3日目のラインナップでの成功こそ今後の指針になるような気がします。そこでマウンテンステージは去年のサマソニ、今年の単独公演と成功しているMarshmelloをトリにAlesso,Tiestoなどを並べてEDMの楽園に。

 

ソニックステージ

Panic! at the Disco

Bastille

Years & Years

ポルノグラフィティ

 

 先日たまたまライブ映像を目にして、Bastilleのライブはとてもサマソニに似合いそうだなあと感じました。是非実現して欲しい。またPanic!

at the Disco,Years&Yearsが並ぶことでソニックステージに籠りっきりで一日中楽しめるステージになりそうです。また意外にもいまだサマソニに出たことがないポルノグラフィティですが、個人的にとてもサマソニに合うと思います。このラインナップに加われば最強の布陣が完成です。

 

ソニックマニア/ミッドナイトソニック

Tame Impala

Cigarettes After Sex

Mura Masa

Mansionair

 

 深夜枠はなかなか予想できないところ。レジェンド枠をふんだんに呼んだり、攻めたラインナップにして欲しいところ。Tame Impalaは正直ヘッドライナーに据えるならフジロックのほうが似合いそうですが、深夜のソニックマニアに呼べたら伝説的な夜になりそうです。また、Cigarettes After Sex,Mura Masa,Mansionairなど夜が似合いそうなアーティストをたくさん呼んで欲しいですね。

 

 

そうこう考えていると、とても白熱してしまいました…最後まで読んでくれた方々は、自分の理想のラインナップ、ぜひ考えてみてくださいね!

 

 

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The 1975「People」 歌詞和訳&解釈

「People」/ The 1975

 強烈な印象を与えたサマソニでのライブ、その興奮も冷めやらぬうちに来たるべき新作「Notes On A Conditional Form」からの新曲「People」が公開されました。前作、あるいはこれまでの楽曲からは想像だにできなかった激しい楽曲に多くのリスナーが度肝を抜かれました。

 先んじて最新作よりリリースされた楽曲、気候変動問題について語るGreta Thunbergの演説を乗せた「The 1975」は「It is time to rebel」(今こそ反逆の時だ)という一節で終わり、そこからPeopleへと続くことを念頭に置いて聴いてみるとまた面白いと思います。前作「A Brief Inquiry Into Online Relationship」と内容がリンクする部分も多いようです。

 和訳だけ読みたい方も多いかと思うので、の部分について註釈は下段にまとめました。気になる方はご一読していただけだけるとより楽しめると思います。

 


The 1975 - People (Official Video)

 

Wake up! Wake up! Wake up!

It's Monday morning and we've only got a thousand of them left

Well, I know it feels pointless and you don't have any money

But we're all just gonna try our fucking best

Well, my generation wanna fuck Barack Obama

Living in a sauna with legal marijuana

起きろ!起きろ!起きろ!

月曜の朝だ、こうやって同じ朝を迎えられるのもあとたった1000回くらいさ(※1)

ああ、何をやっても無意味に思えるのは分かってるし、あんたに何かを変えられるような財力もないさ

だが俺らはただベストを尽くすだけだ

ああ、俺ら世代はあのバラク・オバマを欲してる

サウナのような地球にいながら、合法のマリファナを求めて生きてるのさ(※2)

 

Well, girls, food, gear

I don't like going outside, so bring me everything here!

(Yeah, woo, yeah, that's right)

ああ、女たち、食料、薬物(※3)

外に出たくないから、全部ここに持ってきてくれ!

 

 

People like people

They want alive people

The young surprise people

Stop fucking with the kids

人々はみな人類を愛していると言う

誰もが皆に生きていてほしいと願っているらしい

若い世代がそんな彼らを驚かす(※4)

そんな「子供たち」をばかにするのは止めろ(※5)

 

Wake up! Wake up! Wake up!

We are appalling and we need to stop just watching shit in bed

And I know it sounds boring and we like things that are funny

But we need to get this in our fucking heads

The economy's a goner, republic's a banana, ignore it if you wanna

起きろ、起きろ、起きろ

俺らはぞっとするような存在だ。ベッドの上に横たわったままくそったれた状況をただ傍観するのを止めなくちゃならない

退屈に感じるのも分かるし、俺らは楽しげなものを好む

でも俺らはくっそたれな頭で、この厄介ごとを考えなくちゃな(※6)

経済の先行きは真っ暗で、自分の国が「バナナ共和国」になったとしても、望めばあんたは無視できるだろうね(※7)

 

 Fuck it, I'm just gonna get girls, food, gear

I don't like going outside, so bring me everything here

(Yeah, woo, yeah)

くそったれ!俺はただ女たち、食料、薬物、これさえありゃいい

外には出たくないから全部ここに持ってこいよ

 

 

People like people

They want alive people

The young surprise people

Stop fucking with the kids

人々はみな人類を愛していると言う

誰もが皆に生きていてほしいと願っているらしい

若い世代がそんな彼らを驚かす

そんな「子供たち」を馬鹿にするのはやめろ

 

People like people

They want alive people

The young surprise people

Stop fucking with the kids

人々はみな人類を愛していると言う

誰もが皆に生きていてほしいと願っているらしい

若い世代がそんな彼らを驚かす

そんな「子供たち」を馬鹿にするのはやめろ

 

解釈・註釈

 

※1 あと月曜日の朝が訪れるのは1000回しかない、なんて恐ろしいですよね。年月で考えてみると1年が約52週間なので、だいたい19年ちょっとといったところでしょうか。気候変動について、国連は気候変動による深刻な影響を避けるための猶予は最悪の場合あと12年しかないというレポートを出しています。詳しくは以下にて。

https://www.bbc.com/japanese/45794174

 

※2 サウナというのが気候変動の影響で温暖化する地球を表すのは明らかだと思います。一方で今マリファナ=大麻の合法化の議論が相次いでいます。それは海外に限らず日本でも見られます。カナダあるいはアメリカの各州では積極的に議論が重ねられているようです。参照した下記の記事では若者を中心に合法化の声も多いそうです。この一節は、大麻といういわばイメージしやすく生活に直接関わりのあるものに対する議論は多く重ねられる一方で、あまりイメージしづらい気候変動についての議論は少ないということを揶揄しているように思えます。

https://www.sankei.com/premium/news/190603/prm1906030001-n1.html

 

※3  「gear」は道具などの意味がありますが、主にイギリスではヘロイン・コカインなど効果の激しい薬物を示すスラングとしても用いられます。または最新の流行の服という意味でも用いられるようです。直前の文章から、ここではヘロイン含む薬物を指していると解釈しました。

 

※4 おそらくですが、人類や地球が滅亡してほしいと心の底から願っている人はいないのではないでしょうか。しかしその一方で、人々は21世紀に入るまで地球温暖化といった未来に対する脅威に対し明確な対策をしてきませんでした。若い世代はインターネットでいろんな情報に触れることができる分、これまで続いてきたことについておかしいと思ったことにはおかしいと言える人々も増えたように思います。(それは「The 1975」に参加したGreta Thunbergも同様。)旧来の常識に捉われない若い世代は、今まで社会の中心にいた人々を大きく驚かせることになりました。

 考えを進めると、この部分では環境以外についても当てはまるように思えます。LGBT+に対する支持が広がったり、人種差別の問題や女性の地位向上などについてより深く考えようという人々が増えました。あらゆる場面で旧来の考え方をより良くしていこう、何が正しいことなのか、ということを多くの若者が考えています。

 

※5 kids」とはそのまま子供たちを表すのでしょうか。サマソニのときに行われたインタビューでボーカルのMattyは下記のように語っています。

マシュー:昔、劇団に所属していた時、これに似たうさぎの耳の帽子をつけて演じていたときがあったんだけど、その頃は自分のアイデンティティについて悩んでいた時期で。自分が何者かわからなくて、怖かった。だからぼくにとってあの帽子は、弱さだとか、傷つきやすさの象徴なんだ。あの帽子を被っていると、自分が子どもだったときの感覚を取り戻せる気がする。もっと奔放な気持ちになれるというか、それが気に入ってるよ。

https://rollingstonejapan.com/articles/detail/31750?n=1&e=31769

 

 私はこの「kids」は幼児のみを示すのではなく、上記のように弱く傷つきやすい、その一方で奔放に自分の在りたいように生きているすべての人々を示しているように思います。

 こんな「子供たち」ですが、まだまだ現状は苦しむ場面が多いまま。先述のように気候変動あるいはLGBT+や人種差別、女性の地位などについて、社会の決定的な変化は少ないです。つまりはここまで声を上げている存在や苦しんでいる存在が多くいるのにも関わらず、社会の構成員たる「人々」特に社会を変える権限を持つ人々はそれを相手にせず「馬鹿にしている」ように見えるのです。

 

※6 私が想像したのはベッドに寝転んだままスマホを見ている人々の姿です。余談ですが、海外ではツイッターSNSでひどいことを拡散させようとするとき「watch this shit」のような文面が度々用いられるようです。どんなにひどいできごとがあっても、ネットを通じて容易にそれを知れる一方で「へえ、そんなことがあるのか。」と情報の流れる速さも相まってスルーされることも多いです。小難しくて退屈なことよりも、なんだか楽しげなことのほうが話題を集めやすいことでしょう。

 

※7  バナナ共和国」とは政治学用語であり、バナナ輸出など第一次産業の占めるウェートによって、外国資本による影響が大きく政情が安定しない国家を示します。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%8A%E3%83%8A%E5%85%B1%E5%92%8C%E5%9B%BD

 

Notes On A Conditional Form [Explicit]

 

 

サマソニでThe 1975を見て

 The 1975のライブを見た今、なぜ1st,2ndアルバムの楽曲がより良く響くようになったのか。

 Summer Sonic 2019東京1日目、時間は19時を過ぎたあたり。ボーカルのMattyが「いち、に、Fuckin' Jump!!」と合図したのと同時に大満員のマリンステージ、アリーナを埋め尽くす観客たちは一斉に飛び上がった。凄かった、圧巻だった、なんて常套句では言い足りないくらい素晴らしいライブ、それに対する最大限の賛辞と感謝と喜びを皆が全身で表した瞬間だった。

 

 

 

 ライブが終わった後に知り合いの方と話していると、ある点で自分と同じ感想を抱いていらっしゃっていた。「不思議とライブを見た後1st,2ndアルバムの楽曲がより好きになっていた」ということだ。どうしてだろうかと考えてみる。その方は「ライブにおけるシリアスさの先にある1st,2ndアルバムの楽曲のポップさに、これまで以上の意味を感じ取ったからではないか?」とおっしゃっていた。

 

 なるほどそうすると、この疑問を紐解くにはやはりライブをいちから振り返ってみる必要があるだろう。

 

 

The 1975 @Summer Sonic 2019 Tokyo Day 1 (16/08/2019)

 「Go Down…」おなじみのSEが流れ始め、同時に後ろのスクリーンに文字が浮かぶと観客たちが一斉に歓声をあげる。それだけ待ちわびていた。デビュー以降日本でも幾度となくライブをしてくれていて、更には昨年に最新アルバム「A Brief Inquiry Into Online Relationships」という素晴らしい作品をリリースしていた。多くのリスナーが日本での彼らのライブを見たいと願っていたはずだ。

 

 トラックが鳴りやまないうちにメンバーが登場すると、あまりの興奮にアリーナ前方に位置する自分の周りの観客たちは大混乱。押し合いへし合いの末、右へ左へと流れていく人の群集!そんな私たちを更に沸き立たせようと、激しく点滅する照明とともに開幕を飾ったのは「Give Yourself A Try」だ。

 「TOOTIMETOOTIMETOOTIME」は一転、スクリーンのカラフルな映像も相まってそのポップさに誰もがうきうきと飛び跳ねる。one time,two timeと歌われるのに合わせて指を突き立てる観客の姿が印象的だった。

 勢いをそのまま引き継いで披露されたのは2ndアルバム収録曲「She's American

」だ。射抜かれるかのような鋭いドラムから始まるイントロ、軽快なカッティングギターやピンク色の照明にテンションが高まる。それにしてもこんなにかっこいい曲だっただろうか。4人が演奏する姿は向かうところ敵無し、といった様相だ。

 同じくサックスをフューチャーした「Sincerity Is Scary」では楽曲のMVを再現すべくスクリーンには街並みが映り、Mattyはあの「ピカチュウ帽」を被って歌う。ずっと興奮しきりだったアリーナの観客たちも、気づけば各々がピアノやサックスやドラムの音色に合わせ穏やかに揺れていた。まるでその場の誰もがMVにおける登場人物であるかのように。

 

 「It's Not Living (If It's Not With You)」ではギターを弾くMattyやダンサーのJaiy姉妹の楽しげなステップにつられて、首を左右に振りながらそのイントロに身を預けていた。この曲は恋愛の歌でもあり、ヘロイン中毒の歌でもあるように思う。「Collapse my veins, wearing beautiful shoes」という一節、veinとは血管のことでありまた心情を表すこともある。つまりは「美しい靴を履いた素敵な君(ヘロイン)は私の心情(血管)をめちゃくちゃにする」と言っている。魅力的でありながら自分の身を滅ぼす存在、けれどもだからこそそれなしでは生きていけないよ、と訴えるのだ。一際耳を引くポップさの反面悲しげで破滅的な部分も持ち合わせているこの楽曲は、まさに今のThe 1975自身のようでもあり、ただ楽しいんじゃなくぐっと心が深みへと引き込まれてしまう魅力があった。

 

 「I Like America & America Likes Me」 はこの日のライブの中で最も記憶に焼きついたシーン。銃はいらない、とアメリカの銃社会に警鐘を鳴らす曲。金切り声を上げ今にも壊れてしまいそうなからくり人形のように、Mattyが悲壮的に叫んだ「Being young in the city Believe, and say something」(街の若者たちよ。正しいと思うことを信じろ、そして声を上げろ)という一節がひどく響いた。

 

 「Somebody Else」を演奏する頃、サイドスクリーンを見上げると陽が翳りつつあることに気づいた。なんだか夕暮れのロケーションが曲に似合う。横から緩く吹きかかる風は、この楽曲がもつ甘美だがまたどこかビターでもある香りを会場中に棚引かせているようで、身体も揺らさず立ち尽くしたまま聞き入ってしまっていた。何だか今ならこの曲がどうして世界中のライブで観客の歓声を招いているのか分かる気がしたのだ。

 会場中に合唱が広がるのを耳にしながら「I Always Wanna Die (Sometimes) 」が人々の心を救う偉大なアンセムになり得ることを確信した。彼ららしいところは、あえて「死」というものにスポットライトを照らすことで生きるということを描いているところ。「いつだって僕は死にたがってる」と多くの人々が歌っている光景は何も知らない人からすればひどく奇妙に映るだろうが、その実態は救いであり生への希望だ。

 

 そして鳴り響く「Love It If We Made It」で私は遂に感無量になった。曲中にて次々と凄惨な事件が並べ立てられるように、目を覆いたくなるようなひどい出来事が溢れているのはなにも海外に限らずここ最近の日本も同じだ。Matty自身にとってもそうだ。来日直前に行われたドバイ公演では同性愛者である男性の観客に対しキスを行ったことが国内で問題を招いていた。(人の自由や宗教、法律といった重畳的な問題であり、何が正しいかここで短絡的に述べるのはふさわしくないので、深くは割愛させてもらう。)

 しかしひどい状況のなかでこそ「Love It If We Made It」(何かを成し遂げるのは素晴らしい!)と歌われる。彼自身がその後サマソニ大阪公演のほうでこの件に触れ「抗議したいわけじゃなく、ただ一人の人間として在りたいように振る舞っただけだ。」と言ったように、頭を悩ますひどい物事に目をつぶることなく、自分がこうありたいと願うあり方のままでやりたい何かを成し遂げようと日々を過ごすことの素晴らしさ。これほど希望に満ちた力強いメッセージがあるだろうか。ステージ上の彼の姿こそがその素晴らしさを一番に示しているのを、周りの観客と同様この歌詞を大声で繰り返す私はひしひしと感じ取っていた。

 

 

 

 夕暮れ時とはいえ蒸し暑い日本の夏、ライブはここから佳境に向かうとあってMattyは会場の観客の盛り上がりを誉めつつシャツを脱ぐ。(余談だが着ていたのはRide「Nowhere」のTシャツ、湧いたロックファンも多かったはず!)

 

 そうして届けられたのは1stアルバムの楽曲「Chocolate」そして「Sex」だ。奇しくも彼らが初めてサマソニに出た2013年でも終盤に同じ順番で披露された2曲。これがめちゃくちゃかっこよかった。初めてこの曲を聴いたときよりなんだか何十倍もかっこよく聴こえた。圧倒的なライブを前にして夢心地だった自分は、この時点でようやく「あっ、今自分はThe 1975のライブを見ているんだ!」という実感を得たのだ。

 バッチリ合唱を決める観客たちの中には初来日時のステージを見ていた人も多いだろう。彼らには果たしてそのときと同じようにこの曲が響いたのだろうか。その場にいられなかった私は推測で言うしかないのだが、違ったのではないかと思う。ステージにてスポットライトを浴びるのはメンバー4人のみ。デビュー当時と全く変わらないであろうその光景だが、その見え方は大きく変わったはずだ。

 バンドの立ち位置が違う。かつてはマンチェスターが生んだ新星ロックバンドとして、初めてのサマソニではソニックステージのトップバッターを務めた彼らも、今ではロックの未来を担うとまで称され世界中の注目を一身に浴びる。バンド自身もその役目を甘んじて受け入れ、音楽界のド真ん中で強烈なメッセージを放つ存在であろうとしている。

 一方でリスナーの聴き方だって違う。1stアルバムにおける既に高すぎる完成度に惚れ込んだ人だけでなく、2ndアルバムにおいてパッと広がった音楽性に心躍らせた人も、3rdアルバムの完全無欠のエネルギーにノックアウトされた人も、この会場における観客たちのバンドに対する耳の傾け方はそれぞれだろう。バンドの歩みの分だけ広がったリスナー層は、彼らの音楽の聴かれ方をより多様にしている。

 

 

 そうしてラストの楽曲「The Sound」が始まり、場面は冒頭へと戻る。私は会場中の様子を傍目に見ながら、このライブが単独公演でもなくまた他のステージでもなく、今ここマリンステージで行われて良かったと心から思えた。きっと単独公演なら、あるいは他のステージのトリを飾っていたならば、彼らの熱心なファン(自分含め)ばかりが集まりとてつもない盛り上がりを見せていたことだろう。しかし音楽フェスという場、それも3万人以上が集まる満員のマリンステージとあっては、The 1975に対する観客の見方もそれぞれだ。熱心なファンたちもいれば、評判を聞きちょこっと見てみようかなと来た人、前に登場したバンドやあるいは後に登場するバンドを見るついでに足を運んだ人など。あまり詳しくないのに一緒に来た人に連れてこられたという人だってきっといたはずだ。ライブが始まった当初そもそものスタート地点が違っていた観客たちが、約一時間にわたり披露されてきた演奏を経て「The Sound」という終着点に辿り着いたとき、皆そろいもそろって飛び跳ねていたシーンこそがこのライブの何よりの財産で、これはきっとこのステージこの時間でしか手に入らなかったのではないだろうか。

 

 

 

 冒頭の問いに戻ろう。The 1975のライブを見た今、なぜ1st,2ndアルバムの楽曲がより良く響くようになったのか。答えを示すのは、バンドそしてリスナー自身のあり方だ。

 最新作において彼らの音楽は覚醒した。自身の経験のみにあらず、世の中のあらゆる出来事を汲み取った歌詞。あるいはロックのみにあらず様々なジャンルの音楽を自身のものとして見事に昇華した楽曲。これらが、The 1975というバンドが聴き手に対して様々な聴き方を受容する懐の深さを携えることにつながっているように思う。
 その結果ステージにおける彼らの演奏に対し各々が異なる姿を見出だす。初めて楽曲を聴いたときには気づけなかったような様々な感情が引き出される。そうして向けられた視線や歓声がまるで乱反射して彼らを映し出すように、リスナーの意思が作られた当時には持ち合わせていなかったような様々な意味合いを生み、かつての楽曲を今形作っている。だからこそ以前から演奏されていた楽曲が今、奥行きを持って感じられ豊潤でより魅力的に響いたのではないか。私はそう考えた。

 

 

 この文章を書いていたまさにその日、来るべき新しいアルバム「Notes On A Conditional Form」からの新曲「People」がリリースされた。これを聴いたリスナーは皆「きっとサマソニで見たライブと同じものを見る機会は二度と来ないのだな」と悟ったことだろう。バンドも年月を経るし、聴き手だって年を重ねる。その分音楽の聴こえ方はあっという間に変わってしまうのだろう。だからこそ、その時々に得られた感情というものはかけがえのない財産だ。音楽を聴いたりライブを見たりしたときの感想を、稚拙でも良いから誰かと話したり文章にして残すことはとても大切だと思う。


 当時高校生だった自分が、近所のCDショップに足を運び買った彼らの1stアルバム。それを棚から取り出し、プレイヤーを起動させてみた。あの頃はどんな風にして聴いていたのか、今となっては遠い昔のことのようで思い出せない。でも、それでいいのだ。大事なのは今の自分がどう感じるのかということ。わくわくしながら再生ボタンを押した。時代を揺るがすThe 1975というバンドの歩みをリアルタイムで共にできる幸せ、それを充分すぎるほどぎゅっと噛み締めて。そしていつかまたあるであろう日本でのライブを想像して。

 

セットリスト

  1. The 1975(ABIIOR)
  2. Give Yourself A Try
  3. TOOTIMETOOTIMETOOTIME
  4. She's American
  5. Sincerity Is Scary
  6. It's Not Living (If It's Not With You)
  7. Somebody Else
  8. I Always Wanna Die (Sometimes)
  9. Love It If We Made It
  10. Chocolate
  11. Sex
  12. The Sound

君が寝てる姿が好きなんだ。なぜなら君はとても美しいのにそれに全く気がついていないから。