音楽紀行(ライブレポ、アルバム感想・レビュー)

ライブに行ったレポートやアルバムの感想・レビュー。好きな音楽を見つけるツールにも

2018年、僕らにはTy Segallがいる

Ty Segall JAPAN TOUR 2018 @Osaka,心斎橋CONPASS

 昨年に「Ty Segall」をリリースし各方面から絶賛されたTy Segallは、今年に入り続けざまに新作「Freedom's Goblin」を繰り出し(これがまた名盤!)まさに飛ぶ鳥を落とす勢いといった様相。そんなまさにバリバリのグッドタイミングで初の来日公演が実現。大阪公演は来日ツアー4公演のうちラストだったが、ロックンロール大爆発!!的な2時間弱であった。

 

Topic 1 USインディの旗頭

 彼は2008年に自身の活動を開始し、以降現在まで10枚のオリジナルアルバムに加え、その他多くのシングルやEP、別名義や別バンドによるリリースもおこなっており、とんでもないスピードでいい作品を量産している。まさに新進気鋭のSSWであり、現在のUSインディの先頭を突っ走る旗頭なのである。

Topic 2 熟練したバンドメンバー

 最新作「Freedom's Goblin」は、Ty Segall&Freedom Bandにより制作されており、このFreedom Bandには多士済々のミュージシャンたちが集まっている。

 日本でもSSWとして知られファンが多いMikal Cronin(Bass)や、Ty Segallと別バンド「Fuzz」など数多く共演してる相棒Charles Moothart(Drum)、Bonnie Prince BillyやAngel Olsenの楽曲にもミュージシャンとして参加したり、Ty Segallの前々作「Emotional Mugger」にも参加しているEmmett kelly(Guitar)、キーボードやオートハープを駆使し、ロックのほかジャズやフォークにも精通するBen Boye(keyboard)と、ざっと書き並べただけでも、いかに優れたミュージシャンなのか伝わるはずだ。

Point 1 ガレージロックの枠を超えた楽曲

 そんな豪華な顔ぶれの5人による演奏がいよいよ幕を開ける。最新作でもその傾向が強く見られたように、彼らの楽曲はガレージロックでありながらインディーっぽい要素や、サイケデリック、ジャズっぽいアプローチも飛び出し、シンプルさや荒々しさはそのままに、より広い音楽性がみられる。

 「Fanny Dog」はザ・ガレージロック!といった曲調だが、エフェクトが効いたBenのキーボードやメンバーによる多重コーラスがどこか華やかさをも感じさせる。

 「Meaning」ではTy Segallの奥さんであるDenee Segallが登場し、どこのパンクバンドか!?ってくらい激しいパフォーマンスと力強い歌声を披露!(さっと出てきてぱっと引っ込むのも面白かった)

 「My Lady's On Fire」は音源以上にライブアレンジは複雑で、各楽器がぐにゃぐにゃと混ざり合うような感じがまさにカオス!続けざまに披露された「The Main Pretender」は、Emmettがギターをサックスに持ち替え、怪しげなサイケデリックロックとして観客をまあ揺らす揺らす。この3曲は今回1番のハイライト!

Point 2 全身に響く爆音

 とにかく激しい演奏が終始続き、ローファイなガレージロックの荒々しさを堪能できる演奏だった。錯覚とかじゃなく耳から入る爆音は脳髄を揺らしていたし、身体の奥底まで伝わる音の振動に、血液が沸騰しているのではないかとさえ感じた。これが現在のガレージロックバンドか…。

 それでも各楽器の音色が潰れることなくそれぞれ存在感を放っていたし、丁寧なコーラスも楽曲に花を添えており、非常にバンドの連携が取れているのを感じた。(Benが頻繁にTyを見てその演奏に笑顔を浮かべていたのが印象的)

 定番曲である「Cherry Red」はその日1番盛り上がったし、まさかのビートルズカバー「One After 909」やラストの「Wave Goodbye 」などでは、TyとEmmettによるギターの掛け合いやボーカルを交互に担当したりと、やりたい放題で会場も合わせてパーティのようなにぎわいを見せた。バンドによる最後の1音まで盛り上がり続けた本当に圧巻のライブ。

 

 かつて90年代Kurt Cobainに人々が熱狂したように、10年代若い僕らにはTy Segallがいる。シンプルでエネルギッシュで、力強い音楽への希望を任せられる「ロックスター」が僕らにだっている。ロックって最高だと再認識した夜。

Setlist

  1. 5 Ft.Tall
  2. Fanny Dog
  3. Finger
  4. Squealer
  5. Every 1's Winner
  6. Despoiler of Cadaver
  7. Shoot You Up
  8. Warm Hands(Freedom Returned)
  9. They Told Me Too
  10. Meaning
  11. My Lade's On Fire
  12. The Main Pretender
  13. Cherry Red
  14. Love Fuzz
  15. Ghost
  16. Sleeper
  17. You're the Doctor
  18. One After 909(The Beatles Cover)
  19. Wave Goodbye

 

FREEDOM'S GOBLIN [CD]

FREEDOM'S GOBLIN [CD]

 

 

サマソニタイムテーブル予想!

 今年はここ数年で一番海外の魅力的なアーティストたちを幅広く並べ、洋楽フェスとしてめちゃくちゃ充実したラインナップとなったSummer Sonic 2018ですが、いち早くタイムテーブルを予想してみました!

 今から被りが恐ろしいですが、それを差し引いても今年はとても楽しめそうです!

 

Day 1

 The Sherlocks(トップバッター)

フレデリック→The Charlatans

→Shawn Mendes→?(準トリ)

→Noel Galagher's HFB(ヘッドライナー)

→Marshmello(クロージング、夜繋ぎ)

 ?→Mastodon→BFMV→QOTSA(トリ)

 ?→Pale Waves→Kelela

→Kamasi Washington→Friendly Fires

→Tame Impala(トリ)

 

Day 2

 Greta Van Fleet(トップバッター)

→Portugal.The Man→オーラル

→Mike Shinoda

→チャンス→Beck(ダブルヘッドライナー)

 Cosmo Pyke→DAOKO

→Alessra cara→?

→St.Vincent→Nickelback

 Tom Misch→J Balvin

→walk the moon→Nulbarich

→Thundercat→Paramore

轟音に溺れる

RIDE JAPAN TOUR 2018 @なんばHatch

 2014年に再結成を果たした後、昨年には新作アルバム「Weather Diaries」をリリース、今年に入り新EP「Tomorrow's Shore」も出したばかりのRIDE待望の来日ツアー、その大阪公演を見ました。いや~轟音と瑞々しいメロディ、堪能させていただきました。ごちそうさまです。

Topic 1 変わらぬメロディの輝き

 彼らの新作「Weather Diaries」は20年ぶりのアルバムながら、1stアルバム「Nowhere」の頃と変わらないメロディの美しさがあり、しかし決して焼き直しじゃないそれぞれ個性を持った曲が並んでおり、ライブで聴けるのがとても楽しみでした。

Point 1 より力強いアレンジ

 いざライブが始まるとそうした期待を超えるような、よりエネルギッシュなアレンジで繰り出される新曲の数々!

 「Lannoy Point」「Charm Assault」とド頭から披露された2曲は、「Whether Diaries」でも冒頭の2曲として収録されるが、アンディ・ベルの弾くギターがよりノイズがかっており、そのエモーショナルなアレンジは堪りません…。明らかに音源より気持ちいい。

Point 2 これぞシューゲイザー

 最新EPからも「Pulsar」「Catch You Dreaming」が披露されつつ、新旧混ざり合う形で「Seagull」「Twisterella」など名曲が並び、会場も大盛り上がり!

 マークガードナーがMCで「20年くらい前にも大阪にライブしに来た。そこにいた人いる?どこの会場だったっけ?」などと昔を振り返る一幕も。

 「Dreams Burn Down」は自分がRIDEを好きになるきっかけになった曲の1つでもあり、イントロの突き抜けるようなギターのメロディは本日一番の昇天ポイントでした!

 本編ラスト「Drive Blind」はまさに圧巻。しゃがみ込みひたすらギターのノイズを操るアンディや、豪快にドラムを叩くローレンス、もくもくとベースラインを弾くステファン、ギターを熱くかき鳴らすマーク。彼らにより何分もの間「音の洪水」が会場へと降り注ぐのが本当に気持ちいい。轟音に身を預けながら無心で揺れていると、息もするのも忘れていてまるで音の洪水に溺れるかのようでした。会場を塗りつぶすかのような彼らの演奏とは対照的に、淡々と演奏に没頭する彼らの姿はまさしく「Shoegazer(靴を見つめる人)」であり、2重の意味で「これがシューゲイザー…」と実感しました。

 アンコールでも「Polar Bear」や「Chelsea Girl」など人気曲に会場もひとしきり盛り上がったまま終演。永遠にあの轟音を浴びていられたら、いかに幸せだろうか…なんて考えながら、もうしばらく余韻に浸ります。

 

(Setlist)

  1. Lannoy Point
  2. Charm Assault
  3. Seagull
  4. Wheather Assault
  5. Taste
  6. Pulsar
  7. Catch You Dreaming
  8. Twisterella
  9. Dreams Burn Down
  10. Cali
  11. Time of Her Time
  12. Lateral Alice
  13. All I Want
  14. Ox4
  15. Vapour Trail
  16. Drive Blind
  17. White Sands
  18. Leave Them All Behind
  19. Polar Bear
  20. Chelsea Girl

 

Tomorrow's Shore [12 inch Analog]

Tomorrow's Shore [12 inch Analog]

 

 

すんげえ美声

COLLABRO JAPAN TOUR 2018@森ノ宮ピロティホール

 普段なかなか聴かないジャンルである男性4人ボーカルユニットCOLLABROの来日ツアー大阪公演の招待が当たり、めったにない機会だったので見に行きました。

 座席に座ってゆったり聴くライブは久しぶりで、客層もいつも見に行くライブとは全く違ったので(マダムの方々多かった!)新鮮でしたが、とても美声で素敵な公演でした!心がすっとやすらぐような贅沢なひと時でした。セットリスト、詳細な感想は割愛。

 

Home

Home

 

 

The xxと観客が生んだ奇跡の時間

The xx Japan Tour 2018 @Zepp Osaka Bayside

 昨年にアルバム「I See You」をリリースし大ヒット、フジロックにも出演しベストアクトに挙げられたThe xx待望の来日ツアー。初の大阪公演に行きました!

Topic 1 素敵な雰囲気の会場

 大阪公演の会場は、Zepp Osaka BaysideでThe xxの演奏を(大きめとはいえ)ライブハウス規模でみられるのはそうそうないのでは…?

 JR桜島駅のすぐそばにある会場ですが、入場待ちの列も並びやすいような立地。看板も素敵で、会場内は柵も多くどの位置からも見やすいとても良い会場だと一目で思いました。

Topic 2 好アクトを引き寄せる観客の熱意

 オープニングアクトのSapphire Slowsはエレクトロニック、ソロの演奏でしたがとてもクールで雰囲気をうまく作ってくださりました!

 そこから1時間弱待って(すごく焦らす笑)ようやくThe xxも登場!本日の客層はハイテンションなパリピから文学少女まで幅広く、外国人の方も多かったからか、それぞれいろんなタイミングで盛り上がるポイントが生まれ相乗効果からすごい盛り上がりになったのかなあと思います。

Point 1 新作アルバムの魅力を5倍引き出す

 ライブは「Dangerous」からスタート!ド頭からすんげえ盛り上がり。3人だけでこんだけグルーブ生んで会場中を踊らせるのか…とあまりの魅力に笑みすらこぼれてきました。

 最新作である「I See You」収録曲も多く披露されましたが、ライブ用にそれぞれ細かくアレンジしていて、CD音源の魅力を増幅させていました。

  「I Dare You」はしっとりめにアレンジされていて、Romy,Oliverの歌声がより沁みるように…。そして終盤では会場のシンガロングもじんわり広がって、今回のライブで1番美しかった瞬間だと思います。

 「On Hold」は他のメンバーがはけた後、JamieによるアップテンポなMixでのDJプレイ、会場をダンスフロアに一変させると、再び出てきたメンバーにより生演奏が始まるという演出。Romyの歌い出しでの、観客による歓声はこの日の絶頂ポイント。

Point 2 アーティストと観客がライブを作る

 今回のライブはなにより、「アーティストと観客それぞれ合わさって、初めてライブの価値は決まる」ということを実感させるものだったと思います。

 ライブ序盤は、初の大阪公演ということもあってか特にRomyは緊張気味で表情も硬かったんですが(Oliverが気遣って耳打ちしたりしてた)、「Island」「Crystalised」など次々繰り出される人気曲に対し、観客もすごく身体を揺らしたり、ひっきりなしに歓声が上がったり(海外のフェスみたいな雰囲気!)会場の盛り上がりを目にして、明らかに笑顔が増えていくのが分かりました。「前の方!左の方!右の方!2階席!最前列!」と呼び掛けるシーンも!

 MCでも「母国から遠く離れたところで
これだけ温かい雰囲気の中で演奏できるなんて思ってなかった。大阪でライブできてよかった!」と言ってて、盛り上がりを喜んでいることが伝わりましたし、Romyは「私の秘密をみんなに教えていい?今日のライブは今までで1番お気に入りなの!」と、とても嬉しい言葉を…。

 「Filter」「Shelter」「Loud Places」の3連発はもうわけわからないくらいみんな踊りまくってましたし(隣の方の踊りっぷりが爽快でした!)ラストの「Angels」での合唱でライブを締めて、奇跡のような90分近くでした。

 

 最近では来日公演は東京のみ、ということも多いですが間違いなくThe xxの3人もお気に入りの場所になったであろうエポックメイキング的な大阪公演でした!ありがとう!!

 

(Set list 17.2.9)

  1. Dangerous
  2. Islands
  3. Crystalised
  4. SSL
  5. Heart Skipped A Beat
  6. Reunion
  7. AVN
  8. I Dare You
  9. Performance
  10. Infinity
  11. Replica
  12. VCR
  13. Fiction
  14. Shelter
  15. Loud Places
  16. On Hold
  17. Intro
  18. Angels

 

I See You [帯解説・ボーナストラック2曲収録 / 国内盤] スペシャルプライス盤 (YTCD161JP)

I See You [帯解説・ボーナストラック2曲収録 / 国内盤] スペシャルプライス盤 (YTCD161JP)