音楽紀行(ライブレポ、アルバム感想・レビュー)

ライブに行ったレポートやアルバムの感想・レビュー。好きな音楽を見つけるツールにも

「声」を届ける仕事

 良い音楽はどこに転がっているか分からない。誰が言ったんだか分からないこの言葉を、僕はけっこう大事にしている。よく洋楽厨だとかロキノン厨だとか言われる存在もあるように、自分の好きなジャンルのみにのめり込む音楽ファンも多い(というかそういうほうが大多数)が、個人的にはアンテナを広げて多くのジャンルからたくさんの「エエ曲」を見つけ出したいのだ。今回は、声優としても活躍する花澤香菜さんの3rdアルバム「Blue Avenue」を紹介したい。軽んじるなかれ、これがまたパワフルな作品なのだ。

Topic 1 音楽的ポテンシャルの高いアルバム

 余談だが僕の悩みを聞いてほしい。好きなジャンルを広げた結果、趣味がバッチリ合う音楽ファンがなかなか周囲にできないのだ。

 邦楽ならミスチル筆頭にポップバンドもよく聞くのだが、困ったことにロキノン系バンドファンや硬派な洋楽ファンには怪訝な顔をされる。Jazzやフュージョン系を聴いても、ロック好きの若者の多くとは話が合わない。某TSUTAYAにてファンク系のアルバムとアイドル・アニソン系のアルバムを借りに行った際の、店員の「アイドル系とアニメ系を借りるのをごまかすために、わざわざおしゃれっぽいアルバム上に重ねてるよこの客(失笑」という視線にはもう慣れっこだ。(ひどい被害妄想だ)

 声優・花澤香菜のアルバムを紹介するにも、やはり他ジャンルの音楽ファンは少なからず壁を作ってしまうのも、当然であるが、それがもったいないことであると声を大にして言いたい。今回の彼女のアルバムは、多くのジャンルのファンに「刺さる」楽曲のオンパレードなのだ。

Topic 2 声優としての人気を武器に、やりたい放題の作曲陣

 彼女は、既にアニメ界では断トツの人気を誇る声優である。近年では声優さんがアーティストとしても活躍するケースも多いが、そういった場合多くは、既にファンを多く持っており、良くも悪くも一定の水準に達していれば曲は売れる。今作に関しても花澤香菜の人気さがあってこそ「音楽性の挑戦」が実現している。

 

Point 1 声がいろんな表情を見せる

 もちろん、主役は花澤香菜の声である。透明感のある声質が、楽曲を他とは違う唯一無二の存在へ引き上げている。声優としての大きな武器を彼女は十二分に発揮する。まず発声がきれいで歌を聴き取りやすい。歌詞が、そのまま繊細な言葉として届く。これはボーカルとして強い。そして声の表情がぱっと変わるのだ。曲に寄り添って、最適の表現を選択する彼女の技術が、声と楽器との調和を深めている。

 さて、一曲目の「I LOVE NEW DAY!」からこのアルバムがどんなものなのか物語っている。ホーンセクションを始め、安易な打ち込みを用いず楽器隊がいきいきとしている。主役の声だが、この曲ではかわいいほうに振り切らず聴きやすさを重視しているように思う。そして間奏は早くも楽器隊のソロパートのオンパレードだ。おしゃれである。「Nobody Knows」では、バリバリのJazz臭い一曲だ。この曲はもう軽快なドラムが支配している。アルバム全体を通して言えるがやはり楽器の音作りや音質がいいのだ。主役はボーカルだが、決して楽器が脇役じゃない。矛盾するようだが実現しているのだから仕方ない。順序が飛ぶが、終盤の「君がいなくちゃだめなんだ」は、声の表現の真骨頂である。息の吸い方、吐き方、言葉の発し方からすべてを計算して歌っている。冒頭の「明日会えたら」の「あ」のかすれさせ方だけで、既にこの曲が必殺のバラードへと昇華されてしまった。(シングル曲については音質も良くなっているらしいです。シングル未所持なので未確認ですが)

Point 2 ジャンルを問わない幅広さ

 ボーカルの表現力を糧に、幅広いジャンルの楽曲を並べることに成功している。アコギのアルペジオとストリングスが効いたマイナー調の「Trace」、歌謡曲の香りが気持ちいい「Night And Day」もかっこいい。間奏のナンバーカウントは可愛くてファンも必聴だ笑

 「We Are So in Love」のイントロを聴いてほしい。まんまフュージョン調のギターがイカす。もちろん間奏も同じくである。変わって「プール」は、異色の挑戦作だ。ピアノとシンセっぽい音がメインを務め、間奏ではアコーディオンのソロがあるこの曲は、椎名林檎が歌ってても違和感ないような甘美な雰囲気が漂った怪作だ。

 

 普通のアーティストとは比べられないくらい、このアルバムはジャンルに縛られていない、そういう意味で異色であり、どうしても言葉で表現しきれない部分もあるが、是非とも多くの音楽ファンに、実際に手にとって聴いてほしい。そしてあわとくば僕のような雑食系音楽好きの輪が広がるように…笑

 

  1. I LOVE NEW DAY ! 
  2. ほほ笑みモード 
  3. Nobody Knows 
  4. ブルーベリーナイト ★★
  5. Trace 
  6. こきゅうとす ★☆
  7. Night And Day ★☆
  8. タップダンスの音が聴こえてきたら 
  9. We Are So in Love ★☆
  10. プール ★☆
  11. Dream A Dream 
  12. マジカル・ファンタジー・ツアー 
  13. 君がいなくちゃだめなんだ 
  14. Blue Avenue を探して ★☆

 

 

Blue Avenue

Blue Avenue

 

 

着飾らない、至高の33分間

「Everything At Once」Travis ★☆(3.5/5.0)

 このGWはレッチリレディオヘッドなどキャリア20年越え組の相次ぐ新作リリース情報で、ロックファンにはとても熱い数日だったと思います。というわけで、今回は結成20周年の、UKロックが誇るバンド、Travisの新作「Everything At Once」を紹介します。

Topic 1 究極の楽曲至上主義

 ファンの方々にはお恥ずかしい限りだが、Travisをまともに聴いたのは今作が初めてだ。というのもCDショップへ行った際に、その場で試聴し即購入したのだ。(あんまりない体験だった。)

 彼らがどんなバンドか調べたが、こりゃ大変だ。20年のキャリアを誇りながら、彼らはとても謙虚だ。彼らを象徴するようなVo.フランの名言「残るのはバンドでなく楽曲だけでいい。」は今後200年はロック史に残してほしい。つまるところ彼らが重点を置くのはただ一点、いかにいい曲を聴かせるかである。

Topic 2 ほとんどの曲が3分程のシンプルさ

 今作では、意識的に彼らは比較的短い楽曲を多く制作している。3分を切る曲が約半数、4分を超えるのはラスト一曲のみであることから顕著にそれが分かるはずだ。インタビューでは、書きたい曲を表すのに4分以上の時間は不要で、贅沢だとまで言っていたと思う。10曲で35分足らずのおさまりの良さは、アルバム通して聴きやすい。

 

Point 1 肩の力が抜けたグッドメロディ

 そう、先で述べたように今回は店頭での試聴で購入を決めたのだが、僕のハートを掴んだのが一曲目の「What Will Come 」だった。ボーカルのメロディが優しくて、心地良い。肩ひじ張らずに聴ける。日常生活で疲れた体には効果的なアプローチである。すごいところが、ギターが後ろで鳴っているのだが、地味にリフは複雑である点だ。楽器はあくまでメロディを主役におくべく工夫をしているのだが、やっていることはレベルが高く難しいことであるのが凄い。この点が、楽曲の聴きやすさに繋がっているのだ。まさに、「これから何が来るの?」状態にされたのだ。

Point 2 キメを外さないところ

 ポップに振り切った(MVのダンスも思わず笑える)「Magnificent Time」や、ロックモード全開の「Radio Song」など多士済々の楽曲が続くが、ここは必殺の美メロバラード「3 Miles High」を推したい。いやもうイントロのシンセだけで飯が三杯食える。こんな優しいメロディ、ささくれた僕の心をすべて洗い流して浄化してくれるようだ。曲はシンプルにアコギのストローク中心に進行されるのだが、アクセントとしてポイントごとにシンセとコーラスが差し込まれる。対照的に、フランの繊細な歌声が目立つ。

 

 彼らはSNS隆盛の現代社会に触発された面が多かったとインタビューに答えていたが、「Everything At Once」=何事も同時に起こってしまうような、慌ただしい現代の生活の中で、せめてこのアルバムを聴いている30分足らずを、何事からも解放された心の安らぎとして大切にしてほしいです。ファンのみならずフジロック参戦予定の方、要チェックです。

  1. What Will Come 
  2. Magnificent Time 
  3. Radio Song 
  4. Paralysed ★★
  5. Animals ★☆
  6. Everything At Once ★★★
  7. 3 Miles High ★☆
  8. All of The Places 
  9. Idlewild ★☆
  10. Strangers On A Train 

     

 

Everything At Once

Everything At Once

 

 

邦楽のド真ん中

「REFLECTION{Naked}」Mr.Children ★★★★★(5.0/5.0)

Topic 1 邦楽界の「POP SAURUS」

 日本で最も売れているバンド、ミスチルことMr.Children。彼らは90年代から「innocent world」、「Tomorrow never knows」など多くのヒットソングを量産。2000年以降は、自分たちを「POP SAURUS」と自覚し、多くの人に「売れる」いい曲を作ってきた。「Sign」「しるし」「HANABI」などきりがない。そんな彼らだが、ロックファンからは勘違いされている節があるのではないかと常々感じる。これに異を唱えたいのだ。

 

Topic 2 音楽界のド真ん中にカムバックする

 確かに、2000年後半ごろからの彼らの楽曲はメロディの良さは維持しつつも、ピアノやストリングスを多用したものも多く、「マンネリ化」してきた面もあった。悪く言えば保守的だったのだ。しかし、彼らの様子が変わったのは個人的には2013年からだと思う。彼らは攻撃的で異色のナンバー「REM」をデジタルリリースすると、その年の「SUMMER SONIC」に出演、翌年にはファンクラブツアーを開催し、未発表の楽曲を演奏する。この様子は、映画として発表されるのだが、この楽曲たちがまさに、今回レビューするアルバム「REFLECTION」に収録されている。今さらながら、限定版のほうをしっかりレビューしたい。かなりの長文になりそう(笑)

Point 1 デビュー直後のようなみずみずしさ

 ファンクラブツアーに続き、彼らは2年半ぶりのシングル「足音~Be Strong」をリリース。この楽曲は初のセルフプロデュースとなった。2015年にはアルバム発売に先駆けたアリーナツアーを開催。前代未聞の試みは、ミスチル自身の若々しい活力がみえる。もちろん楽曲にも直に影響しており、まるでデビュー直後のようなみずみずしさを放つアルバムが完成した。

 疾走感と楽器隊のバランスの良い「fantasy」、しょっぱなからこれが来るとはどんなアルバムなんやと。グッドメロディにギターが鳴り響くイントロ。これが聴きたかった。ギターが主役のPOPソング「FIGHT CLUB」、楽器隊のヘビーでグルーブ感溢れる「I Can Make It」など、ここ何年か鳴りを潜めていたギターが効果的に響いている楽曲が多い。

  Point 2 全ての球種を出し尽くす

 {Naked}と{Drip}の2つの形式で発売した狙いは、ミスチルの「全て」を聴きたい層と、「選りすぐり」のアルバムとして聴きたい層と対象を分けることだろう。

 {Naked}には、いろんなタイプの楽曲を収録している。前述以外にも、ロシア民謡っぽさが癖になる「斜陽」、大人っぽく甘美な「蜘蛛の糸」、初期っぽく甘酸っぱい「運命」、これまでにないような「You make me happy」「Jewelry」など。特にふれておきたいのは「WALTZ」。ダークな雰囲気と、攻撃的なギターリフが堪らない。間奏では、某洋楽ロックバンドMUSEっぽいサウンドが。これは影響受けてんな…笑

 もちろん得意技のミドルテンポ+グッドメロディコンボも。「進化論」はGt.田原さんの味のあるギターもいいスパイスになっている。そして「遠くへと」「I wanna be there」はホントにいい。褒めてばっかりでろくなレビューになってませんね笑

 

Point 3 そして必殺のキラーチューンを

なにより、このアルバムには歴代でも屈指の名曲があとに控えている。前述の「fantasy」、「足音~Be Strong」に加え、ライブでこれから重宝されそうなウキウキのポップソング「幻聴」、難産の末に彼らが完成させた「Statting Over」。「幻聴」は、シンセサイザーとリズム隊がグイグイ活躍している楽曲だ。特にサビに向けての高揚感が堪らない。そして「Starting Over」は、ストリングスを上手く取り入れつつギターを打ち消していないバランスの良さ、そして得意のドラマティックなメロディ。

 これだけでも既に大満足だが、ラストを飾るのは「未完」。こんな曲は今までなかった。綺麗に整っていない、アレンジもむき出しで荒々しい感じだ。Vo.桜井さんの魅力の一つは、楽曲ごとに合った歌い方を選ぶところで、時には叫ぶことすらいとわないのだが、この楽曲に関してはもう叫びっぱなしだ。自分たちを示してか「未完」と名付けるところも、にくい演出だ。

 

 会心の一作は、まさにこれまでの集大成といえる作品で、長いキャリアを誇りながら、確実に最高傑作のひとつとして数えられるはずだ。(正直このアルバムが気に入らなければミスチルは合わないと判断していいくらい)果たしてこれを受けて次回作はどうなるのかと(作れるのかと笑)、ファンとしても気になるが、そこはミスチル。アルバム発売後もスタジアムツアーを大成功させると、若手からベテランまで様々なバンドと対バンに臨んだり、今年にはこれまでないような小さなキャパのホールツアーを行うなど、まだまだ精力的に挑戦し続けている彼ら。新曲も披露しているということで、ますます楽しみです。邦楽のド真ん中に立つのは間違いなく彼らだ。

 (長々とレビューしてしまいました。全文読んでいただいた方は本当にありがとうございます。)

 (※は{Drip}版には未収録)

  1. fantasy ★☆
  2. FIGHT CLUB 
  3. 斜陽  ★☆
  4. Melody 
  5. 蜘蛛の糸 
  6. I Can Make It ※ 
  7. ROLLIN'ROLLING ~一見は百聞に如かず ※ ★☆
  8. 放たれる ※ ★☆
  9. 街の風景 ※ ★☆
  10. 運命 ※ ★☆
  11. 足音~Be Strong ★☆
  12. 忘れ得ぬ人 
  13. You make me happy ※ 
  14. Jewelry ※ ★☆
  15. REM 
  16. WALTZ ★☆
  17. 進化論 
  18. 幻聴 
  19. Reflection(インスト曲)
  20. 遠くへと ※ 
  21. I wanna be there ※ 
  22. Starting Over 
  23. 未完 ★☆

     

 

REFLECTION{Drip}通常盤

REFLECTION{Drip}通常盤

 

 

 

 

異空間サイケへの招待

Tame Impala Live @ なんばHatch(2016.4.26)

 今回は、去年発表のアルバム「Currents」でグラミー賞ノミネート、今注目のバンド「Tame Impala」のライブに参加しました。

 会場はなんばHatchなんば駅四ツ橋線の改札すぐそばの出口に位置する「湊町リバープレイス」内にあります。

 昨日の東京公演の好評さに背中を押され、急きょ当日券を購入し入場。会場は後方に柵があり、そこでのんびり見る客も多いようでした。前のほうへ進むと、するするっと3列目中央に陣取ることができました。これは超絶ラッキー!!

 

Point 1 音の洪水と、シンクロする照明、映像

 とにかく音圧が凄かったです。もちろんライブハウスだからというのもあるのでしょうが、音で空気が揺れていて、迫力が違いました。特にベースの低音と生演奏でのシンセサイザーのきらびやかな音が、全身に降り注ぐようでとても気持ちがよかったです。

 イントロを経て、「Let It Happen」からスタート。最新アルバムのみ予習済みだったのですが、その中でも特に好きなこの曲からスタートし、ノリノリでしたね。サイケデリック系の音楽はこれまであまり聞かなかったのですが、ライブだと本当にいいですね。音の隙間がなく、演奏にも厚みがあります。

 中盤以降、ミドルテンポな曲も多かったのですが、会場全体が揺れる揺れる(笑)。激しい曲でなくても、会場を盛り上げれる見本でした。個人的には「Eventually」とかかなりノれましたね。

 

Point 2 会場全体が脳内トリップ状態(笑)

 終盤にさしかかると、会場もヒートアップ。実際に前のほうの列で参加していた方なら分かっていただけるかもしれませんが、もう観客の一部は暴走してました(笑)謎のファッキンクレイジー外人さん集団はガンガン前に詰めては、奇声を上げながら踊ってました…。普段ならキレそうなところでしたが、自身も演奏にノリまくって、どうにでもなってしまえ!みたいなテンションだったのであまり気にならなかったです(苦笑)それほどすごいライブだったと思っていただければ…。本当にあの瞬間は皆が異世界にトリップしてました。アンコールは必殺のアンセム「Feels Like We Only Go Backwards」を会場全体でシンガロングした後、もう一曲やってあっさり終了。90分少々のライブでしたが、濃密なライブ体験になったと思います。

 

 まだ若いバンドですが、かなり実力派です。「Currents」しか聴けていないので、今後前作など聴いてみたいと思います。リアルタイムで追っていけるのは幸せだと思います。Vo.ケヴィンの「see you guys soon」の言葉を信じ、またライブが見られることを願います。次の機会、興味がある人は無理してでも参加する価値はあります。

 (当日セットリスト)

Walk On

Intro

Let It Happen

Mind Mischief

Why Won't They Talk to Me?

It Is Not Meant to Be

The Moment 

Elephant

Yes I'm Changing

The Less I know the Better

Eventually

Alter Ego

Oscilly

Why Won't You Make Up Your Mind?

(アンコール)

Feels Like We Only Go Backwards

New Person, Same Old Mistakes

 

 

 

CURRENTS / LTD.DIGIPAK

CURRENTS / LTD.DIGIPAK

 

 

 

人生を変える音楽

D'Angelo JAPAN TOUR 2016 (3.29 大阪公演)

 去年、サマーソニック含め3公演を行い、初来日ライブを大成功させたディアンジェロ。その活躍ぶりにこれは次ある機会を逃さぬべし、と思っていたところ早くも再来日。その大阪公演に参加してきました。ディアンジェロに関しては、アルバムレビューの別記事にて紹介するとして、すさまじかったライブの感想を。

 会場は大阪国際会議場 メインホール(グランキューブ大阪)、最寄り駅は京阪電車中之島駅」で改札を抜ければ案内があり分かりやすいです。

 座席は一階前方、舞台下手側でした。これが後々大正解の選択に。

 

Point 1 会場が踊っていた

 前日の横浜公演での話が耳に入っていた通り、大阪公演も開始時間は一時間押し(笑

日本のアーティストのライブではほとんど時間押しなんてないし、(なんなら開演前にカウントダウンやら客を煽る映像をながしたり)、これまで唯一海外のアーティストでライブを見たノエルギャラガーも普通でした。開演までは様々楽曲が流されており、ディアンジェロ本人の選んだセットリストであるらしいです。J Dilla など流れていました。

 そして、いよいよスタート。2ndアルバム収録「Devil's Pie」で始まると、早くも会場はヒートアップ。事前にある程度アルバムは聴きこんでいたのですが、バリバリのアレンジで(違う曲の様だ)自然に体が揺れる…。周囲や後ろの客席を見てもみんな踊っていました。テクノやダンスポップでもないのにこんなに会場全体が踊っている様子はなんだか外国のようでした。

 

Point 2  煽る演者とノる観客

 Funkadelicの「Red Hot Mama」、Roberta Flack「Feel like Makin' Love」とカバー曲が続きますが、ファンキーでとても盛り上がりました。そして、(Gt.)Sharkeyの奏でるアコギのイントロで会場は大歓声! 3rdアルバム収録の必殺チューン「Really Love」が凄かった。ここから会場は、盛り上がりを通り越して、なんだかやばい雰囲気に(笑

(正直自分自身もあまり覚えてません。汗)

 「The Charade」はディアンジェロ含め3人のギタリストが横並びで絡んだり、ディアンジェロは観客に拳を突き上げるよう煽る。凄くアツかった。

続けて、1stアルバムより「Brown Sugar」を。これまた ファンキーなアレンジ。観客にも一部歌わせようと(そのフレーズが難しい笑)英語で煽るディアンジェロと、なんとか部分部分聴きとりながら必死に歌おうとする観客の関係性が素晴らしかった。歌い切った最前列の観客とディアンジェロは力強くタッチ!!

 「Left And Right」はそのアレンジに加え、「Left and Right」「Up and Down 」のフレーズに合わせ、両手でその方向を指すという振り付けが。これをしきりに要求するディアンジェロとコーラス隊がまた愛くるしい。一見ダサいような振り付けだったんですが、繰り返すうちにみんな楽しくなってきたのか、会場の一体感がすごかった。

Point 3 人生でめったにない最高のラスト30分

 「Chicken Grease」で会場はこの日最高に盛り上がりました。ライブ仕様のアレンジで大盛り上がりの観客に、ディアンジェロも気を良くしたのか、前に来るように煽る煽る。最前列の客が舞台手前に寄り、遅れて一階席の観客は次々に舞台前に殺到(もれなく私も前へ駆け出しました笑)彼とハイタッチする観客たち。バンドカウントを繰り返すバンドメンバー。ボルテージは最高潮に達しました。あの瞬間グランキューブ大阪の舞台前はライブハウスになりました、冗談ではなく。

 曲が終わり、一度引っ込むメンバーたち。以前座席に戻ろうとしない観客と、「皆さんに戻っていただけないと公演が再開できません」と必死に呼びかけるスタッフたち。こんなのホール級の会場で見たことない笑

 結局戻りきる前に、再度ディアンジェロ登場でまた大盛り上がり。

何度も歌い始めるふりをしてはやめる彼。焦らすのがうまいです…。そしてピアノで弾き始めたのは「Untitled(How Does It Feel )」一転して、美しい旋律に盛り上がりつつうっとりと聴きこむ矛盾してるような状態に。「How Does It Feel」と歌うよう何度も観客が煽られる。そして、演者が一人ずつディアンジェロと抱き合い退場するおなじみの演出が。もう終わってしまうことが寂しくも、大喝采。そして一人になったディアンジェロのピアノのフレーズを聴き終わり、ライブは終了。

 

 ついつい演奏した曲全て解説してしまいましたがそれぐらい良かった。アルバムを聴きこんでイメージしてたものと全く異なり、ファンクでアツかったライブでした。1時間半があっという間に感じられました。本当に参加できてよかった。

 派手な演出があるわけでもない、けれどもその音楽とパフォーマンスのみで魅了されてしましました。間違いなく人生を変えた。それぐらいの衝撃。

 

 

 

BLACK MESSIAH

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