音楽紀行(ライブレポ、アルバム感想・レビュー)

ライブに行ったレポートやアルバムの感想・レビュー。好きな音楽を見つけるツールにも

Mr.Children DOME&STADIUM TOUR 2017 Thanksgiving 25 大阪公演

感謝を噛みしめて

ミスチル 大阪公演@京セラドーム大阪 2日目(7/5)

Topic 1 デビュー25周年

 デビュー25周年を迎えたMr.Childrenのアニバーサリーライブ。何が演奏されるのか、どんな演出があるのかめちゃくちゃ楽しみだった。(別記事で黒歴史化間違いなしのセトリ予想まで書いた)

 東京公演に行った友人には「まじでやばい、それだけしか言えねえ」など期待を煽るようなことばかり言われてめちゃくちゃハードル上がってた。

Topic 2 これまでと違うアプローチを経て

 アルバム「REFLECTION」以来、セルフプロデュース、ホールツアー、8人体制のヒカリノアトリエなど、これまでとは違うアプローチを経て今回のツアーに臨んでいる。これがどのようにライブに生かされるのか、彼らがいい意味でキャリア初期のような若々しさを以て精力的に活動しているのを感じていました。

 

Point 1 過去最高の開幕

 これまでのキャリアを振り返るような映像と共に開演すると、サポートメンバーによる「Over」や「ヒカリノアトリエ」、また「Dive」などが演奏され、ツアータイトルが表示されると会場は大歓声でメンバーを迎える。

 ミスチルの四人が登場すると、1曲目「CENTER OF UNIVERSE」、なにぃぃぃ嘘だろアルバム曲、それもこいつからスタートか!!とめちゃくちゃ盛り上がる、続けざまに「箒星」「シーソーゲーム」「youthful days」とあほみたいなスタートダッシュにもうこっちも行き絶え絶えなんですよね。

 「ファンのみんなに贈る曲」といった披露された「GIFT」、「月も濁る大阪の夜だ」と歌詞を変えた「君は好き」など名バラードも続く。

Point 2 ちょっとした事件 (Part 2)

 花道の先のサブステージに移動。ドラムのJENさんが田原さん中川さんにも「こんにちは」と挨拶をさせる。

 桜井さんは「スピッツも今日ライブしてる中来てくれてありがとう」と言って会場を笑わせた後、「昨日は草野君がミスチルの曲歌ってくれたみたいですね。」と言及(くわしくは別記事)

 さすが大阪、会場が拍手と歓声で「お返し」をするようリクエストすると、「でもアンケートにスピッツのあの曲良かったって書くじゃんみんな」などと言いながらなんと「ロビンソン」を披露!!拍手が沸き起こるとドラムをそれに合わせて大盛り上がりでした(笑)

 この奇跡の2日間は「大阪公演スピッツミスチル事件2017」として今後語り継がれるだろう(おおげさ)

 

Point 3 感謝を込めて進む

 めちゃくちゃ熱かった「CROSS ROAD」「innocent world」「Tomorrow never knows」三連発や、わざわざかつらや映像演出まで用意された、伝説のJENボーカル「思春期の夏~」(この日一番叫びました(笑))などなど挙げたらきりがない名シーンの数々。

 一番印象的なシーンは「1999年、夏、沖縄」

 曲中にMCを挟み、桜井さんがこれまでのキャリアでどんなことを考えてこれまできたのか。これからはどう考えているのかを語ってくれて、会場もそれに対しすごい拍手を送り、桜井さんも少し感極まっていた様子でした。あの日一番美しいシーンのひとつでした。

 

Point 4 彼らの進む先

 映像化不可?の「こんな風にひどく蒸し暑い日」や「ランニングハイ」「掌」「ニシエヒガシエ」三連発など、後半も盛り上がるシーンだらけでした。「everybody goes~」が聴けたのもすごく嬉しかった。

 

 驚いたのは新曲「himawari」、思っていたよりも激しいロックバラードで、「Everything(it's you)」を思い出すようなアレンジに、初期のころの香りが残る甘い歌詞で、またこのタイミングでいい楽曲出したなあと。

 

 アンコール前では、やや物議をかもしているスマホライトの点灯ですが、僕は拍手やアンコールの掛け声みたいなのを優先すればおっけーかなと思います。でも演奏中にまでどさくさに紛れて写真撮る人がいるので問題ですが。

 そんなスマホライトを逆手にとって、アンコールで朝の日の出の映像と共にライトが消えていく様子があっていて面白いなと思いました。

 ラスト「終わりなき旅」は、あえて最低限のライトで多くは語れませんが、これまでで一番かっこいい「終わりなき旅」でした。断言できる。

 「最高でした!」と桜井さん。こちらこそ最高のライブでした。めちゃくちゃ長い公演時間があっという間に過ぎてしまいました。

 

(蛇足)

 ツアーは最終公演である9月の熊本公演まで続きます。普段は記事を多少の人々が読んでくれるだけでいいと思っていますが、今回のこの部分だけは多くの人に伝わってほしいです。というのは、アンコールというものが予定調和みたいになっているのが寂しいです。スマホライトについてはファンの方々の間でも物議をかもしていますが、もっとアンコールを呼び込む観客が盛り上がってほしい。だってここが一番ミスチルの皆さんに感謝をアピールする一番のチャンスなんですよ。曲間にメンバーの名前を呼ぶよりももっと。

 僕個人は最終公演、熊本では25年の感謝を込めて、「アンコール」ってめちゃくちゃ気が狂ったみたいに鳴り響いてほしいし、なんならアカペラ合唱が巻き起こっても面白い、と思ってます。どうか、すこしでもそうだなあと思ったかたがいらっしいましたら、ぜひ他のファンのお友達と「どう思う?」なんておしゃべりしてほしい。ぼろくそに叩いてもいいので(笑)熊本公演に行く方はお友達と「今日は会場で一番おっきい声でアンコールって言って控室のメンバーたちに届けようね」なんてしゃべってくれると嬉しいです。

 ライブレポの最後にお耳汚しを失礼しました。

 

セットリスト

1 CENTER OF UNIVERSE
2 箒星
3 シーソーゲーム~勇敢な恋の歌~
4 Youthful days
5 Gift
6 君が好き
7 ヒカリノアトリエ
8 CROSS ROAD
9 innocent world
10 Tomorrow Never Knows
11 車の中でかくれてキスをしよう
12 思春期の夏~君との恋が今も牧場に~
13 抱きしめたい
14 Any
15 名もなき詩
16 1999年、夏、沖縄
17 こんな風にひどく蒸し暑い日
18 ランニングハイ
19 掌
20 ニシエヒガシエ
21 himawari
22 足音 ~Be Strong
23 Printing
24 DANCE DANCE DANCE
25 everybody goes ~秩序のない現代にドロップキック~
26 fanfare
27 エソラ

(アンコール)
28 overture
29 蘇生
30 終わりなき旅

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SPITZ 30th ANNIVERSARY TOUR "THIRTY30FIFTY50" 大阪公演レポ

「変わらない」

スピッツ 大阪公演@大阪城ホール 一日目(7/4)

 

 スピッツ大阪城ホール公演1日目に行ってきました。スピッツのライブは初めて。楽曲はアルバムを聴く程度のファンでしたが、結成30周年のライブということでライブ規模も大きく、とても楽しみにしていました。

 

Topic 1 多分変わらない軸

 僕はスピッツの長年のファンではないし、ライブ自体も初めてだった。しかし、彼らがこれまでの30年間変わらぬ姿勢でやってきたんだろうなということは開演前の会場の雰囲気からすでに伝わってきた。

 会場には広い世代の人々がいまして、僕みたいな20代の人や、90年代から聴いてきたであろう30~40代、それ以上も、更には小学生の子たちが連れ立って見に来ていたのも印象的だった。

 ロックバンドのライブは、しばしば一部の客層しか許さない!っていうある種閉鎖的なものも多いが、スピッツのライブはまさに万人に開かれているんだなあと、感じました。開演を待つ方々の表情が穏やかだったのも好印象。

Topic 2  豪華たるセットリスト

 アニバーサリーツアーであり、これまでのシングルだったりライブ人気曲のオンパレードであることは、多くの人が期待したいとおりである。僕自身も初めてのライブということで4,5曲ほど特に聴きたい曲を事前に考えてたのですが、それは後程。

Point 1 めちゃくちゃぶっとばす

 しょっぱな、「醒めない」「8823」ととんでもない2連発、やばいっす。「醒めない」も予想外だし「8823」を2曲目からやるのもサプライズでした。そして前述の聴きたかった曲のうち2曲がさっそく来てほんとに叫んだ笑

 「涙がキラリ☆」「ヒバリのこころ」などから最新曲「ヘビーメロウ」まで新旧幅広く揃えられた楽曲たちに、会場も大盛り上がり。

 

Point 2 ちょっとした大事件(Part 1)

 颯爽でクールな演奏に比べて、彼らのMCのゆったり感はいい意味でずっこけました(笑)

 Vo.草野さんは、ちょうど同日程で大阪公演をやっていたMr.Childrenにも触れ、「京セラドームでやってるらしいですね。」「僕らのライブに来てないかな笑」などと言いながら、なんと「Tomorrow never know」のサビを披露!!これがレアですね。

 そこからBa.田村さんがGt.三輪さんと宴会で酔っ払い、つかみ合いのケンカ寸前まで行った話を披露、そこではMr.ChildrenのGt.田原さんがけんかの仲裁に入ったことから、「スピッツの30周年はミスチル田原さんのおかげです」とこれまたレアな話も。その場の思い付きでMC話してる感じがほのぼのとして良かったです。

このちょっとした事件は翌日、違う場所で続きます(後ほど)

Point 3 ライブの平熱

 「チェリー」「ロビンソン」など大ヒットシングルも惜しげもなく披露されましたが、重要なのはそこがライブの「最高地点」にならない。それは彼らの30年間に名曲がとんでもなくたくさん並んでいる

ということだ。

 僕が聴きたかった残りの楽曲「楓」「正夢」も聴けて満足でしつつ、素晴らしかったのは「運命の人」から怒涛のラスト5曲。特に、この日草野さんが唯一ギターでなくタンバリンを持った「俺のすべて」、ブルーハーツに憧れてたインディーズのころの香りが漂う最新曲「1987→」と流れ込むような終盤が最高でした。

 アンコール2曲が終わってもみんなまだまだ聴きたい!といった感じで本当に素晴らしい時間でした。

 初めてのライブでしたが、また行きたいなあ。

 

セットリスト

1: 醒めない
2: 8823
3: 涙がキラリ☆
4: ヒバリのこころ
MC
5: ヘビーメロウ
6: スカーレット
7: 君が思い出になる前に
MC
8: チェリー
9: スターゲイザー
10: 惑星のかけら
11: メモリーズ・カスタム
12: エスカルゴ
MC
13: ロビンソン
14: 猫になりたい
15: 楓
16: 夜を駆ける
メンバー紹介
17: 日なたの窓に憧れて
18: 正夢
MC
19: 運命の人
20: 恋する凡人
21: けもの道
22: 俺のすべて
23: 1987→
(アンコール)
24: SJ
25: 春の歌

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ミスチルクソオタが考えた25thアニバーサリーライブセトリ(大嘘)

  今週末より、25周年のライブツアーが始まるMr.Children。それに先駆けて一足先にセットリストを公開したい(大嘘)

1.CROSS ROAD

 しょっぱなは、初めてのミリオンヒットを飾ったこの楽曲でスタート。原曲通りのアレンジに僕も感涙である。

2.All by myseif

3.ヒカリノアトリエ

 ここから新旧ポップナンバーが並ぶ。どうやら暖かいテンションで始まるようだ。

4.クラスメイト

5.名もなき詩

 ここでようやくMCが入る。笑顔100%の桜井和寿は「ドームを今日はホールのような温かい雰囲気、生の音で包みます。」などと選曲の理由を明かす。

6.Another Mind

7.遠くへと

8.CANDY

9.Drawing

10.Sign~潜水

 ここからアコースティックな手触りの楽曲が並び、至高の名曲Signへ。

ここでお着換えコーナー。バックでは潜水のインストVer.が流れる。

11.シーラカンス~深海

 メンバー4人とも全身黒の衣装に着替え、ロックコーナーがスタート。96年当時の鬱手前のギラギラオーラが再現される。

12.タイムマシーンに乗って

13.アンダーシャツ

14.掌

 怒涛のロックコーナーに、前半でのゆったりとした雰囲気が一変。「うふっ、今日はしるしとか祈りとか聴ければそれでいーや」などというスイーツ女子が黙り込む。(もちろんいい曲です)

15.Hallelujah

16.UFO

 続けざまのレア曲に往年のファンは興奮状態である。

17.終わりなき旅

長かったトンネルを抜け、終わりなき旅のイントロにこの日一番の歓声。

18.幸せのカテゴリー

19.SUNRISE

20.言わせてみてえもんだ

 MCを挟みつつ、レア曲を懲りずに連発。徐々に盛り上げていく。

21.Dance Dance Dance

22.World's end

23.エソラ

 ライブ恒例のアップチューン三連発でいよいよ会場もヒートアップ。

僕もここで思わず手を突き上げてしまう。

24.innocent world

 本編ラストはやはりこの曲。「これは僕らと愛してくれるファンみんなの曲だ」

と言い、特別にボーカルを桜井以外のメンバー3人も1部分ずつ担当。

1番サビでの皇帝ソロでの歌声には会場から感動の拍手が巻き起こる。

 

25.Image

26.Pieces

 アンコールで花道の先に設置されたサブステージに再び登場。ゆったりした曲を続けて披露する。

27.Prelude

 ここでの意外な選曲、不意をつかれ僕が号泣。隣のスイーツ女子も思わずドン引き。

28.足音~be strong

 Preludeを経て、これからも頑張っていくよと言い足音を披露する。会場には大歓声が巻き起こる。

29.(新曲)

 何も説明がない中、初披露の新曲が演奏される。とんでもない名曲でライブが締められた。

 

 

 いやー素晴らしいライブでした。アルバム曲がたくさん聴けてよかったよかった。

なんてことはないので、こんなチラシの裏に書くような嘘セトリは真に受けず、明日からのライブツアー、参加されるファンの皆さんは全力でお楽しみください!!

 

 僕はひとまずネタバレは見ないようにしてライブを待ちます。

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#OneLoveManchester

Music is a Universal Language

 5月下旬、マンチェスターにおける公演に際して起きたテロにより多くの観客が巻き込まれる事件が起きた。それを受けての慈善コンサートがつい先程まで行われていた。

 各SNSなどでも生中継されており、偶然見かけた僕はコンサート後半、ちょうどジャスティンビーバーが歌っていたあたりから視聴した。

 そこに広がる光景。会場いっぱいに集まった観客が、溜まりにたまったエネルギーを歓声に換えてこだまさせていた。こだまする歓声を反響させて、アーティストたちが音楽を届けていた。インターネットを介して届く凄まじい一体感には、テロの被害者を悼み、なにより音楽、そして人々の自由はテロに屈しないという強い意思が宿っていた。当事者足り得ない僕が、このように詩的な表現で綴るのはあまりに傲慢かもしれない。

 ドイツに留学している友人に聞けば、やはりヨーロッパ現地でのテロへの警戒は強く、シーズン真っ盛りにもかかわらず、やはり各音楽フェスの開催が危ぶまれたりもされているそうだ。そんな中で、自身も身をもってテロの恐怖を感じたに違いないアリアナ・グランデは、この見事なコンサートを成功させた。

 Coldplayが、あのOasisの「Don't Look back in anger」をアリアナグランデや、多くの観衆たちと大いに歌う。

 サプライズで登場したリアム・ギャラガーが、「Rock'n'roll Star」で高らかにマンチェスターへの愛を示す。

 アリアナ・グランデが、各出演者や観客と歌い締めた「One Last Time」と「Somewhere Over the Rainbow」でコンサートは結ばれた。

 

 僕自身ができることは何なのかまだわからないが、少なくとも音楽を世界の共通言語として、自由や平和、愛情を多くの人々と共有していきたい。

 では具体的には何をすべきなのだろうか。微力かつ当たり前のことかもしれないが、それでも小さいことから1つずつ確実に行動に移していくこと、自分だけでなく世の中の出来事や問題にも目を向けることがこれから社会を担っていく僕らの義務ではないか、と考えさせられる機会にもなった。アリアナグランデは23歳でこれだけのことをやってのけているのだ。

 

 コンサート中のコメンタリーで流れた忘れらない一節、「Music is a Universal Language.」で結びとさせていただきたい。自己満足のお見苦しい文章を失礼しました。

 

 このコンサートに興味あるかたは一部分だけでもぜひ。公式Facebookアカウントでは今現在全編公開中のようです。

www.facebook.com

特集:コールドプレイ東京公演の凄さ

「4月19日、5万人が七色に染まる。」

 2017年、4月19日。僕はこの日を一生忘れない。なぜならば、5万人もの人々が、たった4人組のロックバンドによって、一夜にして七色に染め上げられるのを目の当たりにしたから。4人が生み出す音色と5万人の歌声が、会場中に鳴り響くのを耳にしたから。この日の「主役」はまさしく、その場に居合わせた全員であり、もちろん僕もその1人であった。

 

 東京ドームは、約5万人を収容する日本最大級のライブ会場である。この日ここでライブを行うのはColdplay。「スタジアムバンド」と称される彼らは世界中で成功を収める、21世紀を代表するバンドである。今回は最新アルバム「A Head Full of Dreams」を引っ提げてのワールドツアーで、既に1年以上に渡り25か国を回り、各国スタジアム級の会場でライブをおこなってきた。26か国目であるここ日本はアジアツアーの最終地であるが、この規模でコールドプレイのライブが行われるのは初めてである。言い換えれば、「スタジアムバンド」たる彼らの本当の姿を、日本にて初めて目にすることができるということだ。日本で誰も体験したことのないような、そんなライブになると確信し、僕はライブを待ち望んでいた。

 

 早めに到着し会場周辺を見渡せば、オープニングアクトを務めるRADWIMPSのおかげもあってか、自分と同世代くらいの若い人を多く見かけた。驚いたのは海外からやってきたという方もたくさんいたことだ。聞けば、中国や韓国、マレーシアなどアジア各国はもちろん、ロシアやフランスなどヨーロッパから、果ては地球の裏側ブラジルから家族総出で訪れたという方までいた。片言の英語が伝わるか不安であったが、「どこから来たの?」「どの曲が聴きたい?」などと互いにやり取りしたり、一緒に記念写真を撮ったりと、気づけば多くの人と意気投合していた。このライブでしか出会えなかったであろう色んな国の人々との交流は、音楽に国境なし、と教えてくれるようなとても素敵な体験だった。

開場時間となり、入場する。会場で隣になったのはご年配の女性。なんと1990年(僕の生まれる前だ!)に、同じ東京ドームで行われたデヴィットボウイのライブにも来ていたという。「あの頃に比べると、今は音響なんかも良くなりましたよ。」なんて教えていただきながら、このライブには実に多種多様な観客が集まっているのだと実感していた。

 

 時刻は19時をまわり、オープニングSEが流れ始めると、まだかまだかと客席の期待も膨らんでいく。会場が暗転すると一気に歓声に包まれる。これまでのワールドツアーの行程を振り返るような映像がスクリーンに映し出され、今回のアルバム1曲目でもある「A Head Full of Dreams」でライブが開演する。歌いだしと共に照明によってあらわになったコールドプレイ4人の姿に、5万人の大歓声が炸裂する。爆発的なまでの興奮を身に浴び、思わず号泣してしまったのはここだけの話である。

 

 息つく暇もなく、彼らの代表曲が続けざまに披露されていく。すごい、叫び過ぎてもう既にフラフラだ。開演からここまで、訳が分からないくらい歓声を上げ続け、両手を突き上げたのは初めてだ。

 スクリーンには演奏する彼らの姿や、ライブを楽しむ観客の姿が映し出される。会場はカラフルな照明により彩られ、しょっぱなから舞った七色の紙吹雪が会場を一層熱くする。

 観客一人一人に配られた、「Xylobands(ザイロバンド)」と呼ばれるリストバンド、これもライブの演出に一役買っている。ザイロバンドは2012年にコールドプレイ自身がライブで採用して話題となったもので、それぞれの楽曲に合わせて様々な色に発光・点滅する仕組みだ。これによって会場にすさまじいほどの一体感を生み出す。例えば、「Yellow」ではそのタイトル通り会場一面が黄色一色となり、「Every Teardrop Is a Waterfall」では曲の華やかなイメージに合わせ、様々な色に点滅し客席をカラフルに彩った。

 勢いそのままに、EDM調にリミックスされた「Paradise」が流される。曲に合わせて激しく点滅する照明やザイロバンド、また何本も伸びるレーザービームに導かれ、狭いディスコルームがそのままの密度で拡大されたかのようなダンスパーティ会場へと、ドームは一瞬で変貌を遂げる。すさまじい熱量を帯びながら踊り狂う僕ら5万人の姿はなかなかに壮観であったに違いない。

 

 最先端の技術を駆使した様々な演出やギミックの数々。しかし勘違いしてほしくないが、そういった演出頼りでないとこのライブの盛り上がりは成り立たないという意味ではない。ライブの根本にあるのはやはり、人々を魅了するコールドプレイの素敵な楽曲と、それを表現する彼ら4人の確かな演奏力なのだ。そもそも、数万人が集まるような巨大な会場にも関わらず、彼らはサポートメンバーもマニピュレーターも付けず、結成当時のまま4人だけで演奏してしまうのだ。バンドなど音楽を人前で披露した経験のある人ならば、この凄さが分かるはずだ。

 花道の先にあるサブステージに移ると、「Always in My Head」「Magic」を披露する。全編通じて内向的で深みに沈んでいくような雰囲気だった前作「Ghost Stories」からの2曲は、派手な曲調ではなく広い会場でやるには不向きだと思われるような楽曲だが、彼らはここでも僕ら観客を引き込んで見せた。派手な楽器パートでもって超絶技巧を見せつけるようなシーンはなくとも、彼らのどっしり構えたベーシックな演奏は、不思議と僕らの心を引き付ける。落ち着いた照明のもと、4人のタイトな演奏は、ここまでの熱気が落ち着くことなく、じりじりとドーム内で渦巻いているような雰囲気にさせた。その様子は、派手なだけがスタジアムでの演奏ではないのだと雄弁に語っていた。

続いてボーカルであるクリス・マーティンが、ピアノの弾き語りのみで東京ドームを制圧して見せた「Everglow」。観客誰もがその美しい光景に心を奪われたこのシーンは、このライブでのハイライトのひとつだった。「すごいエネルギーや思いを集めて、遠くシリアへ届けよう」というクリスの言葉に、僕らは歌声で応えた。

 

こうした演奏にも導かれ、歓声や歌声は一層勢いを増していく。

ピアノの刹那的なイントロから爆発的に繰り出される「Clocks」、クリスから「ジャンプ、ジャンプ!」と煽られ5万人が飛び跳ね、東京ドームを揺らした「Charlie Brown」など、これまでのキャリアを振り返るような選曲に彼らの楽曲のジャンルの広さを再確認する。

 新作より披露された「Hymn for the Weekend」は、ビヨンセとコラボしたR&B的な楽曲だが、火柱が上がるド派手な演出も相まって、予想以上にクリスとの掛け合いが盛り上がる楽曲になった。

「Fix You」の美しいメロディにも酔いしれながら、いよいよ僕ら観客の歓声やシンガロングは鳴りやまない。それは彼らコールドプレイが、僕らをライブへと引き込み、自分たちの演奏に巻き込み、しまいにはライブを作る「主役」の一員へと仕立てあげてしまうからだ。彼らがよく用いる、観客を含めての「Big Band」という表現こそ、まさにこのことを示しているのだと思う。

 誰もが待ち望んだあのストリングスのイントロを迎えた瞬間、いよいよ僕らはひとつの「Big Band」となった。割れんばかりの大歓声、そして「オオオーオオーオ!!」と響きわたる歌声。「みんな歌って!」と煽られ、僕も我を忘れ、ドでかいシンガロングの輪へと飛び込んだ。「Viva la Vida」は、やはり素晴らしい瞬間が約束された最高のアンセムだった。会場中に巻き起こったあのシンガロングを、僕は一生の宝物にしたい。

 

彼らは、ライブにおける演奏や演出面のみに止まらず、他にも様々な試みをしている。

 アリーナ後方に設置された小さなステージへと移動すると、ギター、ベース、キーボードのみの最小構成で「In My Place」を披露し、またもシンガロングを巻き起こす。この曲は事前にSNS上にて、15秒以内のリクエスト動画を募集し、それをもとに決めたものである。このように時流に合わせた試みも行われている。

 何より革新的だったのは、公式のハッシュタグを用意して、各SNS上にライブの写真や動画をアップすることを積極的に勧めたことだ。日本においては、ライブでの写真・動画の撮影は禁止されることがほとんどである。それを思うと驚きの試みである。でも、僕はこの試みを気に入っている。ライブ終了後にSNS上にはたくさんの写真や動画が載せられたが、それは自分が見たのとは異なるライブの映り方を示してくれる。例えばスタンド席の後方より見渡した、一面に輝くザイロバンドや照明の光に包まれる会場。例えばアリーナ席、花道を走り抜けるクリスと、それに応じるようにこれでもかと歓声を上げる観客の盛り上がる姿。5万人いれば5万通り、それぞれの角度から異なる感情を持ってライブを楽しんでいたはずである。それをこうやって互いに共有できるのは素敵だし贅沢な楽しみである。

最小構成のまま3曲披露し、「日本のために、特別にこの曲を世界で初めて披露するよ!」と言いながらメインステージへと戻るも、サブステージにマイクを置き忘れてしまうクリス。演奏がやり直しになり、「これはここだけの秘密!忘れて!ネットに上げないで!!」と懇願する彼の姿に思わずほっこりする。この様子も、この後無事に披露された新曲とともにネットを通じ世界中に広まると考えるとまたほほえましい。

 

The Chainsmokersとのコラボで話題になった最新曲「Something Just Like This」や、前作より必殺のアンセムとなった「A Sky Full of Stars」で、ダメ押しとばかりに会場を沸かせ、観客を踊らせると、最新アルバムでもラストを飾る「Up & Up」でライブを締める。印象的なMVをスクリーンに映しつつ届けられたこの曲は、キャリアを通じたテーマである「希望」を歌った大切な曲。4人が奏でるピアノ、ギター、ベース、ドラム、そして歌声が優しく響くのを聴きながら、「もう終わってしまうのか。」とどうしても感じてしまう。ライブが良いものであればあるほどに、ライブが終わってしまう寂しさも大きい。演奏を終えると、会場の万雷の拍手に対し、「またすぐ来るよ!」と言って何度も深々とお辞儀をしてくれた彼ら。

 

2017年4月19日、「スタジアムバンド」たる彼らの姿を見せつけられた僕ら。彼らの音楽はカラフルで、生き生きと七色に輝き、僕らへと降り注いだ。彼らは最高の演奏・演出をもって、国籍も年齢もバラバラな僕ら5万人を、自分たちのカラーで染めて、ライブの「主役」にしてみせた。

一夜限りの特別な時間が過ぎ、また僕らは日々を送る。コールドプレイもまた先へと進み、変化していく。(それは先の新曲からも感じさせられた。)

果たして次の来日公演では、彼らはどんなライブを見せてくれるのだろうか。そして、「スタジアムバンド」を一度体験してしまった、そんな僕らは彼らに対し、どのように応えることができるのか。時期尚早だが、今からもう楽しみで仕方ない。

 

もちろんそのときもまた、僕は「主役」の一人になろう。歌って叫んで、飛び跳ねる。その準備はもうできている。