音楽紀行(ライブレポ、アルバム感想・レビュー)

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ずっと聴いていられる深み

「A Moon Shaped Pool」Radiohead ★☆(4.5/5.0)

 先月、世界中の音楽ファンに突然の新作を配信により発表したRadiohead

 今週水曜に国内盤がリリース、明日にはいよいよ全世界でCDリリースされる彼らの5年ぶりの新作、9thアルバムを一足先に紹介したい。

Topic 1 純粋に音楽としてどうか

 彼らは、代表作「OK Computer」や「KID A」を始めとして、作品は常にその革新性と共に語られてきた。作品としての魅力は申し分ない。しかし、俗にいう音楽マニアの中には、Radioheadを褒めておけばいい風潮を感じる人も多いし、彼らの音楽を聴くのに音楽的素養を求めるような論調の人もいる。実際今作の感想をネットで様々見た中にも、試聴者の音楽的素養を前提としてどうなのか、みたいなものもあった。もちろん、そういった知識からアーティストの狙いに気づくことも聴く側の楽しみのひとつだ。ただ、メインじゃない。聴いた楽曲から感じることこそ重要なのだ。

Topic 2 派手さはないが深みはある

 そういう持論から、レビュー自体がどうしても主観的な感想ばかり並んでしまうかもしれないが、「かっこいい」とかだけでは魅力は伝わらないはずなので、なんとか上手く伝えたい。(下手くそだろうが少しずつ上達すれば…うーん笑)

 長々無駄話が続いたが、今作に革新性だったり、派手な展開だったりは少ない。かつての「The Bends」のような轟音ギターはもちろんない。(今さらそれを求めるファンは少ないだろうが)でも、どこかにいい意味での「違和感」がある。(余談dが、名曲の条件は、普通の曲にはない「違和感」だと思っている。)この違和感が何度も聴きこむうちになじんでいく感覚。これこそこのアルバムの深みである。

Point 1 印象的なコーラスとストリングス

 先行公開されていた「Burn the Witch」から、先日レビューしたように新鮮なストリングスの取り入れ方が耳を引く。そして、同じく先行公開の「Daydreaming」と「Decks Dark」は静かな曲調だが、美しいコーラスが効いている。以前にレビューした際にも言ったのだが、曲に童話感というか異世界感が感じられるのは、このコーラスのせいなのか。

Point 2 多様なメロディを彩るアレンジ

 このアルバム、何よりボーカルであるトムヨークの優しい歌声が素晴らしい。派手ではない曲調の楽曲が並ぶアルバムを決して地味なものにしないのはこの歌声とメロディの賜物だ。

 そして、多彩なアレンジも違いを生み出している。「Desert Island Disk」ではアコギにドラムのリズムが絡み合って、テンポは遅いのに踊れるような錯覚さえ感じる。「Ful Stop」、「Identikit」は待望のエレキギターも躍動しつつBPMの高い勢いのある楽曲だ。この2曲は結構ライブで聴くのが楽しみだ。なんだかんだ言ってもやはりロックキッズの血だろうか。

 後半の楽曲も、派手ではないがメロディの良さとアレンジが効いている。そんな中異色なのが最後の曲「True Love Waits」。一転してピアノとトムの歌声のみで進行する曲だ。コード進行もシンプルだが、何より最高の歌声だろう。この曲を聴いていると、どこまでも沈み込んでいくようで、これまでの複雑かつ多彩なアレンジとは対照的なこの楽曲がこのアルバムを更に高めている。

 

 もはや、かつてのような革新性はないし、派手さもないが、これまでのキャリアにも裏打ちされた確かな技量が見事に発揮された作品だと思う。何周しても飽きないし、聴きやすい。ライブでは、どう再現されるのか。サマーソニックでの来日公演も非常に楽しみだ。そして、おそらくまた楽曲の感想も変わってくるんだろう笑

  1. Burn the Witch ★☆
  2. Daydreaming 
  3. Decks Dark ★★
  4. Desert Island Disk 
  5. Ful Stop ★☆
  6. Glass Eyes ★☆
  7. Identikit 
  8. The Numbers ★☆
  9. Present Tense ★☆
  10. Tinker Tailor Soldier Sailor Rich Man Poor Man Biggar Man Thief 
  11. True Love Waits ★☆
     

     

 

A Moon Shaped Pool [国内仕様盤 / 解説・日本語歌詞付] (XLCDJP790)

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