音楽紀行(ライブレポ、アルバムレビュー)

行ったライブの感想や聴いたアルバムのレビューを。いい音楽を見つけるツールにも。

二色刷り

Pale Waves JAPAN TOUR 2019@Umeda TRAD

 Pale Wavesのライブを見ながら、私は「このライブって黒と赤だなあ…」と考えていた。演出に感化されて思ったことかもしれない。ライブの演出は一面真っ赤に染め上げる赤いライトとヘザーが身に纏う黒い衣装が印象的だった。しかし、演出同様このバンドのライブは愚直なほどにこの2色で表されているように聴こえた。

 

Point 1「黒」という世界観

 Pale Wavesをパッと見て印象づけるものといえば、ボーカルのHeatherやドラムのCiaraのゴスファッションだ。アーティストを語る上でその風貌についての話題が先行するのは好きではないのだが、Pale Wavesにおいては本人たちが自らをセットアップしている点から触れずにはおけないだろう。(やはり分かりやすい影響元はThe Cureだろうが、筆者自身The Cureに詳しくないのでその辺は他の音楽好きに任せて割愛したい。)

 そんな彼女らのゴスファッション同様、楽曲やその世界観も統一されている。デビューアルバムである「My Mind Make Noises」は80年代のシンセポップに大きく影響を受けた音楽で終始一貫しており、またその歌詞も恋愛について描いたものである。そんな彼女らの音楽を、暗いという意味ではなく統一感を持った強さと美麗さを備えた「黒」と表現したい。

Point 2「赤」という熱量

  しかし、ライブにおいて「黒」と表現した音楽はしばしば別の面を見せる。

 「Eighteen」や「Television Romance」などバンドの代名詞とも呼べるポップな楽曲は会場を沸かせるのに充分だったが、より切迫感の増した「Red」が披露されると、会場の雰囲気も「これはただ踊れるだけのライブじゃないぞ…」と徐々に熱を帯びていた。

 「Heavenly」では終盤に合唱も巻き起こり、既に観客側も「いつか語り継がれるかもしれないこのライブを、より唯一無二のものにしよう」という意思があったように感じた。

 極めつけが本編ラストの「Noises」だ。こんなにヘビーな曲だっただろうか?と感じる程に、楽器の演奏は意識的に音源よりタイトに鳴らされていたし、Heatherの歌声からは切実さがじわりじわりと染み出ていた。アルバムで聴いていたときには、他のテンポの良い楽曲に気をとられあまり好きではなかった曲だったが、歌詞の内容と相まってこのライブではじっと聞き入ってしまった。

 

  統一された黒い世界観を身に纏ったPale Wavesの音楽は、アルバムで一聴すると下手すれば一本調子に感じられるかもしれないが、ライブでバンドによる演奏が乗って、そこに観客の心からの盛り上がりが重なれば、各楽曲が熱量を帯びて「赤」く照らされ、黒い衣装に隠れていたその素顔を見せてくれたように感じられた。

 

 

 本編が終わりメンバーが引っ込むと、これは関西特有か気の良い兄ちゃんが「hey皆さんカモン!ワンモアタイム!!」と、Pale Wavesの楽曲になぞらえ会場中を煽り、「ワンモアタイム!ワンモアタイム!」と大コールが巻き起こると、メンバーが再登場、お望み通りやりますよとばかりに「One More Time」を披露したシーンはきっと今回の日本ツアーの中でも屈指のハイライトだろう。(本編中にも曲間に観客から「ワンモアタイム!」と声が上がるとHeatherが「オッケー、披露するわね。あ、今からやるわけじゃないよ笑」と言って会場が笑いに包まれたシーンも微笑ましかった。)

 ライブには年齢問わず幅広い客層が訪れており、また終演後もたくさんの人々が出待ちをしていて、人気の高さを改めて認識し驚いた。(出てきたメンバーたちもその光景を見て嬉しそうにファン一人一人丁寧に応対してくれた。)

 早くも今年のサマーソニックで再来日が決まっており、今後一層日本での人気もうなぎ登りだなあと予感される。私自身もまた夏にPale Wavesのライブを見るのが楽しみだ。

 

 

 まだまだキャリアが始まったばかりのバンドだが、今後はその色合いがより深まることになるのか、それとも様々な色を増やしていくことになるのか。その第一歩を見たという話。

 

 

MY MIND MAKES NOISES [CD]

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