音楽紀行(ライブレポ、アルバム感想・レビュー)

ライブに行ったレポートやアルバムの感想・レビュー。好きな音楽を見つけるツールにも

The 1975「People」 歌詞和訳&解釈

「People」/ The 1975

 強烈な印象を与えたサマソニでのライブ、その興奮も冷めやらぬうちに来たるべき新作「Notes On A Conditional Form」からの新曲「People」が公開されました。前作、あるいはこれまでの楽曲からは想像だにできなかった激しい楽曲に多くのリスナーが度肝を抜かれました。

 先んじて最新作よりリリースされた楽曲、気候変動問題について語るGreta Thunbergの演説を乗せた「The 1975」は「It is time to rebel」(今こそ反逆の時だ)という一節で終わり、そこからPeopleへと続くことを念頭に置いて聴いてみるとまた面白いと思います。前作「A Brief Inquiry Into Online Relationship」と内容がリンクする部分も多いようです。

 和訳だけ読みたい方も多いかと思うので、の部分について註釈は下段にまとめました。気になる方はご一読していただけだけるとより楽しめると思います。

 


The 1975 - People (Official Video)

 

Wake up! Wake up! Wake up!

It's Monday morning and we've only got a thousand of them left

Well, I know it feels pointless and you don't have any money

But we're all just gonna try our fucking best

Well, my generation wanna fuck Barack Obama

Living in a sauna with legal marijuana

起きろ!起きろ!起きろ!

月曜の朝だ、こうやって同じ朝を迎えられるのもあとたった1000回くらいさ(※1)

ああ、何をやっても無意味に思えるのは分かってるし、あんたに何かを変えられるような財力もないさ

だが俺らはただベストを尽くすだけだ

ああ、俺ら世代はあのバラク・オバマを欲してる

サウナのような地球にいながら、合法のマリファナを求めて生きてるのさ(※2)

 

Well, girls, food, gear

I don't like going outside, so bring me everything here!

(Yeah, woo, yeah, that's right)

ああ、女たち、食料、薬物(※3)

外に出たくないから、全部ここに持ってきてくれ!

 

 

People like people

They want alive people

The young surprise people

Stop fucking with the kids

人々はみな人類を愛していると言う

誰もが皆に生きていてほしいと願っているらしい

若い世代がそんな彼らを驚かす(※4)

そんな「子供たち」をばかにするのは止めろ(※5)

 

Wake up! Wake up! Wake up!

We are appalling and we need to stop just watching shit in bed

And I know it sounds boring and we like things that are funny

But we need to get this in our fucking heads

The economy's a goner, republic's a banana, ignore it if you wanna

起きろ、起きろ、起きろ

俺らはぞっとするような存在だ。ベッドの上に横たわったままくそったれた状況をただ傍観するのを止めなくちゃならない

退屈に感じるのも分かるし、俺らは楽しげなものを好む

でも俺らはくっそたれな頭で、この厄介ごとを考えなくちゃな(※6)

経済の先行きは真っ暗で、自分の国が「バナナ共和国」になったとしても、望めばあんたは無視できるだろうね(※7)

 

 Fuck it, I'm just gonna get girls, food, gear

I don't like going outside, so bring me everything here

(Yeah, woo, yeah)

くそったれ!俺はただ女たち、食料、薬物、これさえありゃいい

外には出たくないから全部ここに持ってこいよ

 

 

People like people

They want alive people

The young surprise people

Stop fucking with the kids

人々はみな人類を愛していると言う

誰もが皆に生きていてほしいと願っているらしい

若い世代がそんな彼らを驚かす

そんな「子供たち」を馬鹿にするのはやめろ

 

People like people

They want alive people

The young surprise people

Stop fucking with the kids

人々はみな人類を愛していると言う

誰もが皆に生きていてほしいと願っているらしい

若い世代がそんな彼らを驚かす

そんな「子供たち」を馬鹿にするのはやめろ

 

解釈・註釈

 

※1 あと月曜日の朝が訪れるのは1000回しかない、なんて恐ろしいですよね。年月で考えてみると1年が約52週間なので、だいたい19年ちょっとといったところでしょうか。気候変動について、国連は気候変動による深刻な影響を避けるための猶予は最悪の場合あと12年しかないというレポートを出しています。詳しくは以下にて。

https://www.bbc.com/japanese/45794174

 

※2 サウナというのが気候変動の影響で温暖化する地球を表すのは明らかだと思います。一方で今マリファナ=大麻の合法化の議論が相次いでいます。それは海外に限らず日本でも見られます。カナダあるいはアメリカの各州では積極的に議論が重ねられているようです。参照した下記の記事では若者を中心に合法化の声も多いそうです。この一節は、大麻といういわばイメージしやすく生活に直接関わりのあるものに対する議論は多く重ねられる一方で、あまりイメージしづらい気候変動についての議論は少ないということを揶揄しているように思えます。

https://www.sankei.com/premium/news/190603/prm1906030001-n1.html

 

※3  「gear」は道具などの意味がありますが、主にイギリスではヘロイン・コカインなど効果の激しい薬物を示すスラングとしても用いられます。または最新の流行の服という意味でも用いられるようです。直前の文章から、ここではヘロイン含む薬物を指していると解釈しました。

 

※4 おそらくですが、人類や地球が滅亡してほしいと心の底から願っている人はいないのではないでしょうか。しかしその一方で、人々は21世紀に入るまで地球温暖化といった未来に対する脅威に対し明確な対策をしてきませんでした。若い世代はインターネットでいろんな情報に触れることができる分、これまで続いてきたことについておかしいと思ったことにはおかしいと言える人々も増えたように思います。(それは「The 1975」に参加したGreta Thunbergも同様。)旧来の常識に捉われない若い世代は、今まで社会の中心にいた人々を大きく驚かせることになりました。

 考えを進めると、この部分では環境以外についても当てはまるように思えます。LGBT+に対する支持が広がったり、人種差別の問題や女性の地位向上などについてより深く考えようという人々が増えました。あらゆる場面で旧来の考え方をより良くしていこう、何が正しいことなのか、ということを多くの若者が考えています。

 

※5 kids」とはそのまま子供たちを表すのでしょうか。サマソニのときに行われたインタビューでボーカルのMattyは下記のように語っています。

マシュー:昔、劇団に所属していた時、これに似たうさぎの耳の帽子をつけて演じていたときがあったんだけど、その頃は自分のアイデンティティについて悩んでいた時期で。自分が何者かわからなくて、怖かった。だからぼくにとってあの帽子は、弱さだとか、傷つきやすさの象徴なんだ。あの帽子を被っていると、自分が子どもだったときの感覚を取り戻せる気がする。もっと奔放な気持ちになれるというか、それが気に入ってるよ。

https://rollingstonejapan.com/articles/detail/31750?n=1&e=31769

 

 私はこの「kids」は幼児のみを示すのではなく、上記のように弱く傷つきやすい、その一方で奔放に自分の在りたいように生きているすべての人々を示しているように思います。

 こんな「子供たち」ですが、まだまだ現状は苦しむ場面が多いまま。先述のように気候変動あるいはLGBT+や人種差別、女性の地位などについて、社会の決定的な変化は少ないです。つまりはここまで声を上げている存在や苦しんでいる存在が多くいるのにも関わらず、社会の構成員たる「人々」特に社会を変える権限を持つ人々はそれを相手にせず「馬鹿にしている」ように見えるのです。

 

※6 私が想像したのはベッドに寝転んだままスマホを見ている人々の姿です。余談ですが、海外ではツイッターSNSでひどいことを拡散させようとするとき「watch this shit」のような文面が度々用いられるようです。どんなにひどいできごとがあっても、ネットを通じて容易にそれを知れる一方で「へえ、そんなことがあるのか。」と情報の流れる速さも相まってスルーされることも多いです。小難しくて退屈なことよりも、なんだか楽しげなことのほうが話題を集めやすいことでしょう。

 

※7  バナナ共和国」とは政治学用語であり、バナナ輸出など第一次産業の占めるウェートによって、外国資本による影響が大きく政情が安定しない国家を示します。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%8A%E3%83%8A%E5%85%B1%E5%92%8C%E5%9B%BD

 

Notes On A Conditional Form [Explicit]