The 1975「I Think There's Something You Should Know」歌詞和訳・解釈
5/22にリリースされたThe 1975による4枚目のアルバム「Notes On A Conditional Form」収録曲である「I Think There's Something You Should Know」
この楽曲では、インポスター症候群などといった精神的な問題が描かれています。
和訳だけ読みたい方もいらっしゃると思いますので、脚注は下段にまとめています。気になる方はそちらもご一読いただくとより楽しめると思います。
和訳
I think there's something you should know
君に知っておいて欲しいことがあるんだ
I don't feel like myself, I'm not gonna lie (Lie)
なんだか調子が悪いんだ、嘘をつくつもりもない*1
How would you know? It doesn't show
ほんとに分かってくれてるの?表立っては見せないようにしてるのに
I think there's something you should know (Know, know)
君に知っておいて欲しいことがあるんだ(知ってくれ、知ってくれ)
I think there's something you should know
君に知っておいて欲しいことがあるんだ
I'm feeling like someone, like somebody else
自分自身が別人になったかのように感じる、赤の他人のように
I don't feel myself, it could be my health
なんだか調子が悪いんだ、これじゃ体調まで崩しそう
I'd like to meet myself and swap clothes
自分自身と会って、服を取り替えたいな*2
I think there's something you should know
君に知っておいて欲しいことがあるんだ
(I think there's something)
知っておいて欲しいことが…
(I don't wanna be someone else)
他の誰かにはなりたくない
(I don't wanna be someone else)
他の誰かにはなりたくない
(I don't wanna be someone-)
他の誰かには…
(I don't wanna be someone else)
他の誰かにはなりたくない
You get a moment when you feel alright
大丈夫だと感じる瞬間もある
You get a moment when you feel alright
大丈夫だと感じる瞬間もある
You get a moment when you feel alright
大丈夫だと感じる瞬間もある
You get a moment when you feel alright
大丈夫だと感じる瞬間もある
I feel so seen and I can't dream
分かるよ、全然夢を見ないんだ*3
Sleeping terrifies me, otherwise, I'm fine
寝ていてうなされるけど、調子はいい
See-saw back and forth, back on the door, back on the floor
二転三転して、行ったり来たり
Oh, please ignore me, I'm just feeling sorry for myself
ああ、お願いだから放っておいてくれ、自分自身に哀れに思うんだ*4
Feeling like someone, like somebody else, who don't feel themself
自分自身が別人になったかのように感じる、赤の他人のように
気分は晴れないまま
Paying for their wealth with their mental health
I'd like to meet myself and swap clothes
自分自身と会って、全く異なる服装を着させたいな
I think there's someplace I should go
向かうべき場所がある気がするんだ*6
I think there's something you should know
君に知っておいて欲しいことがあるんだ
I think there's something you should know
君に知っておいて欲しいことがあるんだ
I think there's something you should know
君に知っておいて欲しいことがあるんだ*7
解釈
*1:「don't feel like myself」とはいつもの自分じゃないみたい、から転じて精神的な面で調子が悪いという意で用いられるそうです。
*2:インタビューにて、この一節について「幽体離脱体験」のような考え方だというインタビュアーの指摘に対してmattyは、人の経験には限りがあり、五感で捉えたものに縛られる。だからいろんなものを想像することで考えを広げるのだと答えています。
*3:「I feel so seen」は海外でよく使われるネットスラング・ミームらしく、日本で言うと例えばTwitterで引用RTして一言付け加える際によくある「わかる」「知ってた」「把握」などといった感じでしょうか。
*4:Apple Musicのアルバム解説にてmattyは、メンタルヘルスについて状況を把握していない相手に話したくないということを述べています。
この楽曲の題材の1つは「インポスター症候群(インポスター体験)」だと明かされています。詳しくはリンク先の記事に譲りますが、簡単に言うと自身の達成したことや周囲からの賛辞に対して、自分はその評価に値しないと過小評価してしまう傾向のことを指します。インポスター(impostor)とは詐欺師やペテン師を指し、つまるところ自分は周囲を欺いてると考えてしまうものです。
このインポスター症候群の対処法の1つとして挙げられるのは、その感覚や感情について早いうちに他人と話すことだそうです。しかし先で述べたように他人に進んで話す気が起きない、なぜなら同じような体験を共有できる相手が少ないと感じているから。だからこそ孤立感の中で自身を哀れに感じるのでしょう。
*5:捉え方は2つあるように思います。1つはmattyがThe 1975の楽曲の多くでメンタルヘルスを題材にしているということ。本曲と同じアルバムに収録された「Frail State of Mind」もそうした内面、精神について描いています。
もう1つは自身の精神の健康と引き換えにアーティストとしての活動を進めているということ。長期に及び世界中を回るツアーの負担やSNS等における人々からの反応など、誰に限った話でなく多くのアーティストが精神的疲弊・ダメージを負いながらアーティスト活動を進めている現状があります。
*6:「Tonight (I Wish I Was Your Boy)」の歌詞
Unfortunately, I've been to this place in my life
という歌詞にもあるように、苦しみながらも進んでいくという意思を示してるように思えます。
脚注2で紹介したインタビュー記事においてmattyは、やるべきことを失ってしまえば、自分という存在は何なのか、何を目的に生きていくのかわからなくなってしまうと述べています。
ここまでの歌詞で、自分自身が全く異なる他人へと変わってしまう不安が述べられていますが、目標を見つけ生きていく中で自分自身を捉えるという方針がここに表れているのではないでしょうか。
*7:この楽曲のタイトルでもあり、何度も繰り返されるフレーズ。ここまでの歌詞の内容を押さえた上で考えると、あまり他人に伝えたくない孤立感やメンタルヘルスについて意を決して話すことにした、その第一声こそがこの「I think there's something you should know」ではないでしょうか。
メンタルヘルスの話、この曲においてはインポスター症候群についての対話がこの楽曲を通じて行われるという構造がここにはあるのではないかと私は考えています。そしてそれは、自身の内面の脆さの吐露というこの楽曲を含めたアルバム「Notes On A Conditional Form」全体のテーマの1つであり、大きな流れの1つなのではないかと思います。そしてそこには、音楽やリスナーに対する信頼が前提として存在するのではないでしょうか。