音楽紀行(アルバムレビュー)

邦楽、洋楽問わず聴いたアルバムのレビューを。あと、いい音楽を見つけるツールにも。

湖面に泳ぐ、魚を見上げて

CHVRCHES JAPAN TOUR 2019@豊洲PIT

 時刻は午前3時。「おはよう、CHVRCHES見に行くぞ。」友人からの連絡である。「へっ!?」寝れぬまま過ごす私は、東京へ向かう夜行バスに揺られながら出かかった情けない声を、なんとか両手で喉奥に押し戻した。

 「ライブで貰ったチラシ見ながら聴いてたらびびっと来た、だから見に行くしかない。」と力強く語る友人の言葉に(大阪ではPale Wavesと同日にライブがあったせいで)縁が無かったと思っていたCHVRCHESを、たまたま東京に来たタイミングでこうして友人の誘いをきっかけに見に行くのも面白そうだと思った。音楽の神様がいるのなら、きっとこれは素敵なお導きに違いない。「よっしゃ行こう。」そう返信し、何となく心をわくわくさせていると、気づかぬうちにバスはまだ薄暗い新宿に着いていた。

 

 Point 1 ドラムが加わったオーガニックなサウンド

 幸運にも当日券を手に入れ、入場しスルスルと2列目の端っこのほうに陣取る。適度に空いたスペース、まさに好きなだけ踊れ!と言われているようである。

 

CHVRCHES

Lauren Mayberry(ボーカル)

Iain Cook(シンセサイザー、ギター、ベース)

Martin Doherty(シンセサイザーサンプラー)

の3人組である。しかし昨年より続く今回のワールドツアーではサポートメンバーとしてドラムを担当するJonny Scottが加わっている。

 

 

これがライブでどんな効果を及ぼしているか、ライブの幕開けを告げた「Get Out」からそれは如実に感じられた。

 

 そもそもCHVRCHESの音楽はエレクトロ・シンセポップの類する。しかしドラムが打ち込みでなく生演奏になることで、わずかな音の強弱やコンマ単位のズレが楽曲を有機的にリアリティを持って響かせるのだ。こうした演奏によってよりパワフルになった「Bury It」や「Clearest Blue」「The Mother We Share」など最新アルバム以外からも幅広く披露され、会場は常に観客が躍り狂うダンスフロアと化す。

 

 途中にはマーティンがボーカルを担当し会場中が謎の一体感で盛り上がった「God's Plan」や「Under The Tide」、オープニングアクトも担当したコムアイ(水曜日のカンパネラ)を呼び込みコラボ曲「Out Of My Head」を披露するシーンもあり日本でしか見れない共演に会場中が大盛り上がりだった。

Point 2 底抜けな明るさではなくて

 今回のツアーで掲げられる新作「Love Is Dead」はCHVRCHES3枚目のアルバムだが、初めて外部からGreg Kurstin(Adellの大ヒット曲「Hello」のプロデュースをはじめ、Foo Fighters,Beck,Liam Gallagher,Paul MacCartneyまで幅広く仕事を共にする超売れっ子プロデューサー!)を招いて制作に取り組んだ結果、これまでの音楽性や魅力を増幅させつつ、より視界の広がったようなこれまでで一番ポップな作品に仕上がっている。

 しかしポップだからといって、決してそこにあるのは底抜けな明るさではなくて、裏には暗さが常に付きまとう作品ではないかと僕は感じる。「Love Is Dead」というアルバムのタイトルからも示唆されるように、ポップな楽曲群だが常にダークな部分を孕んでいる。先述の通り生命の躍動するような演奏も相まってか、ライブで特に印象に残っている曲はそんな「Love Is Dead」に収録される楽曲たちだった。

 終わってしまった恋をバスルームに書いた拙い落書きに重ねた「Graffiti」や、奇跡なんて求めていないと悲しいくらい現実的なことを言いつつ、それでも愛が奇跡を見せてくれるのかなと背反する希望を歌う「Miracle」など、愛をテーマにした楽曲で曲調はポップでも、ちゃんとそこには暗い部分も描かれていて、ローレンの歌声もきらびやかながらどこか切実な叫びのように聴こえるのだ。

 

 ふと思う。CHVRCHESの音楽は、暗い水中に差し込み棚引く光ではないか。差し込む光を浴びるようにその音に耳を傾け身体を揺らす僕らは、さしずめ波に揺られ光合成する海草のようで、だとすると音楽に歌声を乗せステージを舞うローレンは水面を華麗に泳ぐ魚みたいだ。「Never,ever,ever say die」と繰り返す本編ラストの「Never Say Die」の美しくも胸をきゅっと締め付けるような演奏に、堂々と歌い上げるローレンを僕ら観客は思い思いに見上げていた。

 

 今年のサマーソニックにもChvrchesは登場する。果たしてそのときのライブはどんなものになるだろうか。何とか詩的にまとめようと愚かしくも四苦八苦したが、結局はただひとつ。素敵な情景を引き出してくれるChvrchesの音楽が、僕はたまたま訪れることになったこのライブを通じて大好きになったのだ。そしてこのライブに導いてくれた音楽の神様に、誘ってくれた友人に感謝しているのだ。

 

(セットリスト)

  1. Get Out
  2. Bury It
  3. Gun
  4. We Sink
  5. Graffiti
  6. Graves
  7. God's Plan
  8. Under The Tide
  9. Out Of My Head
  10. Miracle
  11. Science/Visions
  12. Deliverance
  13. Forever
  14. Recover
  15. Leave A Trace
  16. Clearest Blue
  17. The Mother We Share
  18. Never Say Die

 

Love Is Dead

Love Is Dead

 

 

 

 

当たると噂のSummer Sonic 2019ステージ割り予想

 どうも、まさに「サマソニが組みそうなステージ割り」を予想することに定評があります(見たいタイムテーブルではなく)。まだまだ発表されたアーティストは出揃っていませんが、メインステージを中心に予想していきたいと思います。例年通り1ステージ7~8組と仮定してます。

 ちなみに的中率は3割、あとアーティスト予想はこんな感じでした。

 

yamapip.hatenablog.com

 

(東京1日目/大阪3日目)

マリン/オーシャンステージ

B'z

The 1975

[Alexandros]

?

The Struts

Pale Waves

Sam Fender

マウンテンステージ

Weezer

Two Door Cinema Club

?

Snow Patrol (Acoustic)

Michael Monroe

?

The Birthday

?

ソニックステージ

Robert Glasper

?

Rita Ora

Grace Carter

Bananarama

Björn Again

Psychedelic Porn Cramps

 

 雑誌やラジオでのスタッフの発言などからマリン/オーシャンステージの並びは結構自信あるんですが、マウンテンとソニックは予想しづらいですね。現在発表されているメンツを分けてみましたがビーチステージ等別のステージで出るアーティストもいるでしょうし、Snow Patrolが謎のアコースティックセットなのもどの位置で出るか予想しづらい一因。Two Door Cinema Clubは今年アルバム出ますしマウンテンかソニックの準トリで出そうな気がするんですが、Weezer前でもRobert Glasper前でもあんまりしっくり来ず笑。それともまだトリクラスが残っているのでしょうか。

 

(東京2日目/大阪1日目)

マリン/オーシャンステージ

Red Hot Chili Peppers

Babymetal

RADWIMPS

Machine Gun Kelly

Superorganism

Chai

?

マウンテンステージ

Bring Me The Horizon

Rancid

Man With A Mission

The Damned

Zebrahead

?

The Interrupture

ソニックステージ

Catfish And The Bottlemen

Foals

The Lemon Twigs

Circa Waves

Coin

?

Tom Walker

 

 この日はジャンルごとに分けて各ステージに固めると予想しています。(ファン的にありがたいし自分自身の願望込みですが)マウンテンステージにはパンクバンドを集めトリには今年発表の新譜でヘビーロックからより広いジャンルへと脱皮したBring Me The Horizonを置く。ソニックステージはUKロックバンド祭りにして、今月リリースの新譜が大好評のFoalsや同じく新譜リリース予定のCatfish And The Bottlemenがトリ候補でしょうか。予想しづらいのがChaiとSuperorganismでした。室内が似合いそうなのですが、人気や注目度の高さからマリン/オーシャンステージ予想。

 

(東京3日目/大阪2日目)

マリン/オーシャンステージ

The Chainsmokers

Zedd

Alan Walker

R3hab

?

?

?

マウンテンステージ

Disclosure

?

Brockhampton

Blackpink

Sofi Takker

Neneh Cherry

Octavian

ソニックステージ

Chvrches

?

Flume

FKJ

The Vamps

Jain

女王蜂

 

 この日のラインナップも本当に粒ぞろいです。マリン/オーシャンステージはもう最高のダンスミュージックステージになること間違いなしですね。マウンテンステージにはDisclosureがどっしりトリを飾りつつ、BrockhamptonやBlackpinkなど新進気鋭の個性が強いアーティストが揃うサマソニらしい並びになってほしいです。ソニックステージはエレクトロ要素が強いアーティストが並びつつ、よりポップなChvrchesやフレンチならではの音色が良いFlume,FKJが並ぶのもオツではないでしょうか。マウンテン、ソニックと準トリがまだ出てないのではないかと予想してます。僕の予想は3月末のプロモーション来日のタイミングでAvril Lavigneが発表されその枠に入るのではないかと。新譜をリリースし長い休止期間から復帰したばかりの彼女ですが、日本人気も高く現在ライブツアーの予定は無いものの期待できるのではないでしょうか。

 

 

以上、それっぽいステージ割り予想でした。いやあほんとに今年も楽しみだ。

 

2018年ライブ振り返り(秋冬編)

続きまして秋冬編。秋は少なめ、冬は多め。

 

Liam Gallagher

 2年連続来日かつ、ノエル兄さんに引き続きライブで見れるってOasisファンは恵まれてるなあという。(サマソニでノエルが「リアムによろしく」みたいなことMCで言ってた記憶)

 大阪で2日とも参加。まさかの最前列を取れた、しかし2曲カット&アンコール無し(今回の来日ツアーで唯一(苦笑))といろいろハプニング揃いだった1日目、ツアーラストで大盛り上がりだった2日目と素敵な思い出です。リアムのボーカルもバンドの練度も去年より段違いだなあと感じつつ、リアム自身がOasis大好きマンなのでとにかくファンの聴きたかった人気曲を大放出してくれて、大盛り上がり約束されますわそりゃ。

 

Homecomings

 良いライブでした、こちらは記事にしたのでそちらをどうぞ。

 

yamapip.hatenablog.com

 

 

 

 

Franz Ferdinand

 ニューアルバムが発売するタイミングで東京のみ来日公演があった(フランツ大阪にも来ての会設立の瞬間)1月から1年待たずに再来日。ずっと前から聴いていたバンドだったが、ライブはほんとに踊れるもので楽しめた。観客の盛り上がりも素敵。OAで出たRats on Raftsも良き。

 

 

Cero

 新譜が素晴らしかったのでチケットが当たればラッキーくらいの気持ちで応募し当選。しかしめちゃくちゃよかった。次々に変遷するリズムの即対応し各々が自由に揺れる観客たち、8人体制でとんでもない演奏を繰り出すバンド。こういうライブが日本で見れるんだなあ…と感激した。

 

 

宇多田ヒカル

 まさかライブを見れるなんて思ってなかったアーティスト。説明不要ですが幅広い年齢層から愛されてますよね。進化する音楽性、これまでのキャリアが誇る楽曲たちの不変の魅力の両面を心行くまま堪能できた。

 

L'Arc~en~Ciel

 まさかライブを見れるなんて思ってなかったアーティスト(既視感)。海外のアーティストや新進気鋭の日本のバンドを最近では見ることが多くなったので、こういう中高生の頃からずっと聴いていたある意味自身の音楽のルーツとも言えるような偉大なアーティストをこうして連続で見られたのは素晴らしかった。「Driver's High」や「Link」あたりが特にアツかったかな。

 

 

Spilit End

 急きょ友人に誘われて行ったライブ。でかい会場で見るライブが続いてたので、こじんまりとした会場は逆に心が落ち着いた。だがバンドの演奏は勢いがあってエネルギッシュだった。自分が知らないだけで素敵なアーティストはたくさんいて、それぞれが自分のフィールドで戦っているんだなあと。

 

 

2018年も素敵なライブに恵まれました。とっくに年が超えてしまいましたが、今年(2019年)も素敵なライブをたくさん見れますように。

 

 (おまけ)見たアーティストのアルバムジャケ並べて見てたら、下の並びになってなんか面白かった。

AS YOU WERE [CD]

AS YOU WERE [CD]

 

 

 

初恋

初恋

 

 

 

2018年ライブ振り返り(夏編)

 昨年下半期は忙しく、せっかく行ったライブの感想を書けてなかったので、簡潔にだが記しておきたい。そもそも誰が見てるかも怪しいライブレポートをなぜ残しているのかと言えば、ライブが楽しければ楽しい程にその記憶が残ってくれないという困った僕の特性(脳がその場を楽しむあまり記憶を残す作業を怠っているのでは?)から、覚えているうちに文章に残そうと考えているからである。

 

Sonic Mania 2018

 長かったグッズ列をようやく並びきり、お目当てのフェスTシャツを手にした後、最初に見たのはDorian Conceptだった。一曲だけ後方からちらっと見ただけだったが、「これは次の機会があればしっかり見たいな。」と思った。その機会は早いうちに訪れるのだが、それは別記事にて。

 

 続いてNine Inch Nailsだ。既に長いキャリアを誇るバンドだが、EP3部作をリリースしたばかりでジャンルに縛られない孤高の存在という認識があった。ライブは映像や照明など演出も凝っていて、そのうえでヘビーで熱い演奏に観客も狂喜乱舞していた記憶。

 

 そして本日のお目当て、マイブラことMy Bloody Valentine!誰しもが慄く音のデカさを警戒してたのも束の間、同行する友人に連れられ気づけば最前スペースに。

 ライブが始まる。出音でかさはやばかったのだが、それがうるさいのではなく心地よかったところがとにかく印象に残っている。全身に音を浴びるのがこんなに気持ちいいなんて…。ときおり耳栓も外して生音を楽しんだ。

 

あとはelrowみたりFlying Lotusチラ見したり、最高の夜更かし。

 

Summer Sonic 2018

Day 1

 ソニマニでくたくたになったので、ゆっくり目覚め朝食をとり会場へ向かった。楽曲が好きな感じだったので、デビューアルバム発売を控えたPale Wavesを見る。終盤のみだったが本当に素晴らしく、即大好きになった。

 

 Billie Eilishやアイドルソニックをチラ見したり、曲は知ってても普段ライブ見に行かないようなback numberをめちゃ近くで見れたりと、このごちゃまぜ感もサマソニならではだなあと。

 

 マリンステージに移動し、マシュメロでひとしきり汗をかいた後は本日のお目当てその1Noel Gallagher's High Flying Birdsを。前の来日公演以来で、新譜の曲が結構好きだったんで聴けてうおお!と1人盛り上がっていたら、「Little By Little」「Whatever」の2連撃で涙腺大崩壊。

あとはやっぱりでかい会場での「Don't Look Back In Anger」大合唱は良かった、スマホライトも今っぽくて素敵ですね。

 

 急ぎソニックステージに戻り、Tame Impalaを見て「こっちはこっちで全編見たかったなあ…」なんて思いつつ最前列を確保。深夜帯では独特の世界観を持つ女王蜂、キャリアに裏打ちされた安定感が頼もしかったSparksを経て、本日のお目当てその2Wolf Alice!まだ2作しかアルバムを出していないが既にアリーナが似合うバンドだなあと感激した。良いライブが見れました。

 

Day 2

 本日は気楽にいろいろ見て回ろうと考えてました、どのステージも見たいアーティスト揃いだったので。Knox Fortuneで一足先にAll Nightを予習したり笑、Petit Biscuitチラ見して、Walk The Moonは1曲も知らなかったけどすこぶる盛り上がって楽しかった。Rex Orange Countryもチラ見だったけど人多くて驚いた記憶。

 

 マリンステージに移ってまず見たのはマイクシノダ。ここまでの経緯を踏まえての、日本のLinkin Parkのファンたちの愛とそれに答えるマイクシノダの姿が美しかった。

 

 そして本日のお目当てChance The Rapper!!!!とにかく最高のライブで、ひたすらに楽しげでひたむきな彼が素敵すぎましたし、観客の「盛り上がってやるぞ!」という熱意溢れる感じも良かった。僕自身ヒップホップを聴き始める大きな契機になる大切な経験になりました。

 

余談になるが、近くにいて仲良くなったイギリス人2人組、ラップ部分完コピで「さすが!」となった。

 

その後は新譜「Colors」が素晴らしかったBeckや、夜のビーチステージというロケーションと相まって最高の空間になっていたGeorge Clintonで今年のサマソニを〆た。初めて3日全日参加したが、人生で一番音楽にどっぷり浸れた時間だったように思う。名演ぞろいで迷いますがベストアクトはChance The Rapperでした。

 

 

Pale Wavesタワレコインストアライブ

 余韻を完全に引きずったまま翌日はインストアライブへ。ヘザーによるアコースティックギター弾き語りだったが、9月発売のアルバムから世界初披露の「Karl」など記憶に残っている。

 

 

以上、夏終わり!秋冬に続く。

 

yamapip.hatenablog.com

 

 

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世界一分かるThe 1975「Love It If We Made It」歌詞和訳&解釈

youtu.be

 The 1975「Love It If You Made It」は、様々な社会情勢を取り上げつつ強いメッセージを歌い上げた素敵な楽曲です。今回は歌詞の和訳とともに解釈や註釈を加えようと試みました。和訳だけ読みたい方も多いと思うので、和訳部分のがある部分について解釈は下段にまとめました。よろしければそちらもご一読していただけると幸いです。

 

The 1975 「Love It If We Made It」

We're fucking in a car, shooting heroin
Saying controversial things just for the hell of it
Selling melanin and then suffocate the black men
Start with misdemeanours and we'll make a business out of them

カーセックスをやる、ヘロインを打って

単なる面白半分で物議を醸すようなことを言う

黒人をビジネスに利用しながら、裏では黒人男性が息の詰まるような生活を過ごしている

軽犯罪から始めて、彼ら抜きでビジネスをやろうよ(※1)


And we can find out the information
Access all the applications that are hardening positions based on miscommunication
Oh Fuck your feelings
Truth is only hearsay
We're just left to decay
Modernity has failed us

そして僕らは世界中の情報を知ることができる

あらゆるアプリにアクセスしなよ、困ったことにそれらは誤解にまみれて凝り固まってしまっているけどね

ああ、あなたの気持ちなんて知ったこっちゃねえ!(※2)

「真実」と言われてることなんて噂でしかない

僕らはただ腐ったまま取り残されて

現代が僕らを見捨てたのさ


But I'd love it if we made it
Yes, I'd love it if we made it
でも、だからこそ何かを成し遂げることは素晴らしいのさ

そうさ、何かを成し遂げることは素晴らしい


And poison me daddy
I've got the Jones right through my bones
Write it on a piece of stone
A beach of drowning three-year-olds
Rest in peace Lil Peep
The poetry is in the streets
Jesus save us
Modernity has failed us

どこかの立派な誰かさん僕に毒を盛ってくれ(※3)

僕は骨の髄までヘロインに浸っている(※4)

そのことを墓標に刻んでおくれ

3歳児が溺れているビーチ(※5)

Lil Peepよ安らかに眠れ(※6)

あなたの詩が町中に

神よ我らを救いたまえ!

現代は僕らを見捨てたのだから

But I'd love it if we made it
Yes, I'd love it if we made it
Tell me something I didn't know

でも、だからこそ何かを成し遂げることは素晴らしいのさ

そうさ、何かを成し遂げることは素晴らしい

僕の知らないことを何か教えておくれ


Consultation Degradation
Fossil fuelling Masturbation
Immigration Liberal kitsch
Kneeling on a pitch
議会 腐敗

化石燃料 マスターベーション(※7)

移住 自由主義の低俗な産物

ピッチに跪いている(※8)


"I moved on her like a bitch"
Excited to be indicted
Unrequited house with seven pools
"Thank you Kanye, very cool"
The war has been incited and guess what you're all invited
And you're famous
Modernity has failed us

「ビッチみたいな女が俺を誘惑したんだ!」(※9) 

起訴されるのが楽しみだ(※10)

7つもプールがあって、それでいて報われない家(※11)

「ありがとうカニエ、すごくイケてる!」(※12)

戦争は今もなお勃発しているし、あなただって争いに巻き込まれるのさ

そして皆死んでしまって初めて有名になるのさ(※13)

現代が僕らを見捨てたのさ


And I'd love it if we made it
Tell me something I didn't know
And I'd love it if we made it

だからこそ、何かを成し遂げるのは素晴らしいのさ

僕の知らないことを何か教えておくれ

だからこそ、何かを成し遂げるのは素晴らしいのさ

 

解釈・註釈

(※1)

 「Selling melanin」は直訳すると「メラニン色素を売る」となるのですが、メラニン色素はその比率によって人間の皮膚や髪の色に影響を与えることから、黒人を示していると考えられます。つまりここでは、黒人は生活の中で今でも困難が多い一方で、黒人がビジネスに利用され搾取されているという矛盾を指摘しています。

 黒人のビジネス利用として今問題になっていることは2つ。まずは黒人文化の搾取です。音楽好きの多くの方々は分かる通り、古くから黒人音楽(ブラックミュージック)は多くの人々を魅了し影響を与えてきました。現在では人種を問わずブラックミュージック的要素を多分に含んだ楽曲が人気を得ていますが、一方で非黒人によるブラックミュージックなど黒人文化をビジネスに取り入れることへの批判も大きいです。いわゆる「文化の盗用」です。(黒人文化の例ではありませんが、先日にはアリアナグランデに対する「文化の盗用」批判がヒートアップしたことが記憶に新しいですね。アリアナが「日本語の勉強をやめる」とまで発言したのは、「七輪」と書いたタトゥに対する日本人のセンスの無いツッコミが原因ではなく、その実はアメリカ国内での「日本文化の盗用だ」というバッシングが原因だったと思われます。詳しくは下記事)

アリアナ・グランデのタトゥ「七輪」は文化の盗用か? - wezzy|ウェジー

 

 もうひとつは、黒人受刑者の労働利用です。アメリカにおいて現在でも黒人の逮捕率は高く、

(参照) 白人と黒人の逮捕歴の比率を調査した結果・・・ | とざなぼ

またアメリカでは現在約240万人もの受刑者がいると言われます。(日本は約6万人)受刑者の多くを黒人が占める中、問題視されてるのは受刑者の労働搾取です。あらゆる分野の企業が受刑者を平均時給25セント(=約28円)という劣悪な環境で断る自由もなく働かされており、中国人労働者を利用するよりも安価だとして企業の依存が深まっています。

(参照)

アメリカの刑務所の実態に迫る - 安価な労働力としての受刑者 - NAVER まとめ

こうした背景から、軽犯罪を犯して黒人ではない私たちが刑務所に入ることで「彼ら抜きで」ビジネスを始める、という歌詞につながっていきます。

 

 

(※2)

2016年にアメリカ大統領選におけるドナルドトランプ陣営のキャンペーンTシャツから引用。

 

(※3)

 「Daddy」と言われるとお父さんをイメージしますが、ここでは頼りがいのある男性、もしくは有名人をファンが呼ぶネットスラングとして用いられているように思われます。またここの一節から、直近にあった毒殺未遂事件を連想した方々もイギリス現地では多かったようです。

(参照)

 【元ロシア・スパイ】毒殺未遂事件の容疑者を公表 英政府 - BBCニュース

 

(※4)

 「jones」はヘロインを指すネットスラングなのですが、直前に毒を盛ってくれという歌詞がある点を見るに、もしも1978年に「ジョーンズ」タウンで起こった集団服毒自殺事件と韻を踏んでいるのだとするととんでもないリリックです。

(※5)

 2015年に撮影され話題になった1枚の写真。トルコのリゾート地ボドルムのビーチに横たわる3歳のシリア人少年。彼はシリアから紛争を逃れヨーロッパへと向かう難民の一人でしたが、命がけの渡航の末に命を落としました。この事件をきっかけに難民問題は世界中でより深刻に取り上げられるようになりました。

 一方でヨーロッパ各国は異国から流れ込む多くの難民への対処に多くの問題を抱えるのも事実であり、アメリカ大統領ドナルドトランプはメキシコとの国境に不法入国を防ぐ「壁」を設置することを主張しています。

(参照)

シリア3歳児の溺死写真が波紋、世界中が難民問題から目をそむけられなくなった(閲覧注意) | ハフポスト

【AFP記者コラム】難民たちの夢と悪夢の始点、トルコ・ボドルム 写真6枚 国際ニュース:AFPBB News

 

(※6)

youtu.be

 Lil PeepはLo-Fiラップと呼ばれる音楽スタイルで人気を博したアーティストであり、2017年に弱冠20歳にしてデビューアルバム「Come Over When You're Sober」をリリースするとヒップホップを牽引する存在として注目されました。しかしアルバムのリリース後におこなったライブツアーの最中、誕生日を迎えてすぐ21歳の若さでオーバードーズ(薬物過剰摂取)によりこの世を去りました。

(参照)

Lil Peep、薬物過剰摂取による死亡が報じられる - letter music

 The 1975のMatty Healyは新曲「I Like America& America Likes Me」はLo-Fiラップに多大な影響を受けて作った曲だと述べており、後に続く「The poetry is in the street」という歌詞は、Lil Peepへのリスペクトと愛が詰まった素敵な一節です。

 

(※7)

 化石燃料は度々地球環境に悪影響を及ぼすとして槍玉に挙がりますが、燃料を用いて発電された電力をもとに今の私たちの生活は成り立っています。一方で、マスターベーションという言葉は、今この単語を目にしたあなた自身が感じたように低俗な響きであり、ネット上のポルノ画像などを検索して行われることに対し眉を潜めることも多いと思われますが、誰もが似たような形で快楽を得ていることも事実でしょう。

 つまりここでは、どちらもたしかに罪深いものであり批判されがちだが、翻って考えてみると自身もその恩恵を受けている1人なのだから、批判する資格など無いのではないか。そんな自省的な考えが見えます。

 

(※8)

 NFL(プロアメリカンフットボールリーグ)のサンフランシスコ49ersの選手であったColin Kaepernickは、2016年8月26日にオコナワレタ試合前に国歌演奏中ベンチに座ったまま立ち上がらず物議を醸しました。当時ルイジアナ州などで白人警察官が黒人を射殺する事件をはじめ、黒人や有色人種への人種差別的事件が多発していたアメリカ国内の状況への抗議を意を込めた彼の行動は、その後多くのNFL選手の間で広がり、スポーツ界以外からも賛同を得ました。その一方でスポーツ競技やアメリカ国家に対し失礼だという批判もあり、トランプ大統領も自ら口汚く批判しました。

(参照)

国歌演奏で起立拒否したNFL選手が物議 「虐げられる人々のため」彼が訴えたかったことは... | ハフポスト

黒人への暴力に抗議の米NFL選手たち トランプ氏に反発 - BBCニュース

 

(※9)

 2016年当時大統領選の真っ最中に、共和党候補であったドナルドトランプが2005年にテレビ番組「Access」の司会者であったビリーブッシュとの間で、女性蔑視と取れる卑猥な発言を繰り返す会話の内容が流出し問題になりました。

(参照)

Transcript: Donald Trump’s Taped Comments About Women - The New York Times

「俺は金持ちで有名だから女の◯◯を簡単にさわれる」トランプ氏、過去の発言を釈明(UPDATE) | ハフポスト

 ここからの歌詞は一貫してアメリカのトランプ大統領が題材となっていますが、彼が実際に発言した内容を取り上げ「Bitch」と先ほど取り上げた部分の「Pitch」で韻を踏むのは、先述の通り一連の抗議活動とトランプ自身のそれに対する反発を念頭に置くと、素晴らしい歌詞の運びだと思います。社会問題を取り上げメッセージを込めつつ、こうやって韻を踏んで音楽として昇華させるのはとんでもないです。

 

(※10)

 トランプ大統領の側近や選挙関係者が次々に起訴されていることを指した歌詞だと思われます。

(参照)

CNN.co.jp : トランプ氏の長年の側近起訴、流出メールで陣営関係者と連携の疑い

トランプ大統領のストーン元顧問を起訴、偽証や証人買収などで - Bloomberg

 一方ここで私が連想したのは、トランプ大統領の元支持者でもあるKanye Westが2016年に「Famous」のMVを発表し物議を醸した一件です。なかなかに刺激的な内容の映像で多方面から問題視されましたが、当の本人は「Can somebody sue me already #I’llwait」(誰が俺のこと訴えられる?待ってるよ)とツイートしたことで更に炎上しました。(ツイートは削除済み)

www.yahoo.com

この後に続く歌詞「"Thank you Kanye, very cool"」や「you're famous」の部分に意図的につなげているのだとすれば、ほんとにおそろしいリリックです。

(※11)

 トランプ大統領がニューヨークに所有するSeven Springs Mansionを揶揄する歌詞ですね。とても豪華な建物です。

www.youtube.com

(※12)

  トランプ大統領のツイートから引用。

 

(※13)

 ここの解釈は迷いました。戦争が起き誰しもが巻き込まれ、そして死んでいく中で有名になるのは誰でしょうか。1つは戦死者としてその名前が読み上げられること=有名になるという意味でしょうか。もう1つはそうした多大な犠牲の上に、大統領自身の名前が悪名高き存在として後世に残っていくという意味でしょうか。示唆に富みます。

 

 

 この曲は、これまで社会問題を取り上げた政治色の強い音楽を敬遠し、また曲の歌詞をあまり気にせずに聴いてきた自分を変えたとんでもない1曲でした。これだけ深刻な問題を多く取り上げながら、「何かを成し遂げるのは素晴らしいことさ」と締めるところも、希望に満ちていて素晴らしい。

 この記事が多くの方に読まれ、「Love It If We Made It」という曲をより多くの人が愛するきっかけになれば幸いです。そして、そんな彼らが今年のサマーソニック2019で日本にやってくる。多くの人々があの大きな会場でこの楽曲が演奏されるのを目の当たりにし、口ずさむ様子を夢見て。

 

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The 1975「A Brief Inquiry Into Online Relationships」を聴いて

 お気に入りのアルバムを聴こう。机に開いたノートには、アルバムの全楽曲の歌詞とその和訳が、稚拙ながら丁寧に書き連ねられている。左手にはコーヒーカップ。そうして、神前に向かう厳かな儀式を執り行うようにいつもの手順を追ったら、レコードに針を落とす。ツー、プツプツ…。冒頭のトラック「The 1975」が聴こえてくる。彼らのアルバムは全てこの同じタイトルの曲から始まる。同じ歌詞、だが全く異なる姿を見せる曲調。これからどんな時間が流れるのかを予告する楽曲であり、アルバムが内包する世界への招待状でもあるのだ。

 

 ふと思い浮かんだのは、たまたま大学の講義で知り合ったあの子。音楽が好きで意気投合した彼女。「最近レコードに興味があるんだよね、君詳しい?」と満面の笑みで聞いてくる彼女を見ていたら、今やニッチな趣味でしかないレコードの話を、つい長々としてしまいそうになる。彼女はこのアルバムをもう聴いただろうか。気に入った曲はあっただろうか。彼女と面と向かって好きなものの話をすることさえ、赤面してしまい憚られる。

 

 気になっている彼女にこちらから声をかける勇気も出ず、こうなると日常において好きなアルバムの話をする機会などめったに訪れない。そして今日もまたスマホを取り出す。SNSを通じて知り合った、同じ趣味を持った顔も知らない人々。彼らはいったいどんな思いでこのアルバムを聴いたのだろうか。各々が思い思いにアルバムを聴き、それぞれ思い入れの深い曲を見つけているのだろうか。自身の過ごす時間や考えを重ねているのだろうか。僕のように…。

 

 

 

「Give Yourself A Try」

@fraise95poisson

 私は音楽が好きだ。今どきの女の子は、SNS上に友達同士で出かけた写真や見栄えのするパンケーキの写真などを載せるものなのかもしれない。でも気づけばディスク○ニオンに足を運んじゃう。そんな私の背中を押してくれるようなこの曲が大好き。

 現実でもネットでも四六時中つながっているような今の時代、周りに合わせないことは時につらいし困ることだってあるけれど、「Won’t you give yourself a try ?」と素敵なサウンドに乗せて歌われたら、好きなものに正直に、思うがままにやって良いんだ!って思えた。

 歌詞からふと頭に浮かんだのは、律儀に和訳をし、わざわざコーヒーを入れてレコードを聴くという、変わり者の彼。音楽が好きで好きでたまらない、っていう顔でいつも話す彼はこのアルバムを聴いただろうか。今度会ったら聞いてみたいな。

 

 

「TOOTIMETOOTIMETOOTIME」

@playmeet2727

 軽快なリズムに乗って、「たった1度だけ」「2度はあったかも」「3回は無かったね」「4回以上はありえない」なんて言葉遊びのような軽妙さで、お互いの浮気について軽薄なやり取りが描かれる。ポップミュージックのためのあえての冗長さ、だろうか。

 大学生になった息子は自分に似たのか、レコードを聴くことに夢中らしい。そんな彼が家でずっと聴いていたのが気になり、私もこのアルバムを聴いてみた。1番のお気に入りはこの曲だ。嘘や浮気に関わる彼女とのやり取りなんて重々しくなりそうなのに、反直感的な歌詞は爽やかさすら感じられる。

 SNSを通じポンポンとリズムよくやり取りするのが今や普通だと聞く。そう考えると若者のフィーリングにぴったりマッチする曲なのかもしれない。だからこそ老いぼれの私には新鮮に映ったのか。若い頃の自分はどうだっただろう、この軽妙さは持ち合わせていたなんて言ったら、息子や妻に何と言われるか。

 

 

「How To Draw / Petrichor」

@paint_06q

 何かを表す言葉があるとき、それは人々がそれを捉えようとした証ではないか。「Petrichor」とは雨が降ったのちに地面から立ち上る匂いのことらしい。田舎の実家を思い出す。

 晴れ間の切れ目にさっと雨が降った日、家の縁側に座り、ひたりひたりと降る雨音に耳を澄ましていると、立ち上ってくる匂いが鼻に届く。素敵な思い出だ。何に似てるとも言い難いこの匂いが「Petrichor」という言葉によって初めてはっきりと捉えられるようになったのだ。

 私が心に抱く感情、それを表す言葉があるのだろうか。その言葉を持ち合わせない故に、捉えがたく描きづらい。それでも描くことをやめて、ネット上に溢れる他者により使い古された言葉に身を預けるのではなく、自分なりの言葉を探す努力をしたい。

 もしぴったりな「言葉」が手に入ったならば、きっと私にも素敵なものが見えるはずだ。

 

 

「Love It If We Made It」

@adventure04stuts

 ネット上の無責任な発言や誤報から、黒人文化の問題、アメリカにおける受刑者の過酷な労働利用、移民問題、偉大なアーティストの薬物による早すぎる死、政治、資源、自由主義、人種、変わりゆくアメリカとそれを取り巻く世界まで。

 Mattyの切実で悲痛な叫びのような歌声は、こうやって文字で羅列するだけでも長くなる、現在社会に溢れる問題を流れるように挙げていく。それはまるで、ちっちゃな島国にいながら、世界中で何が起きているか、スマホの画面をスワイプすればその一面をすぐさま知ることができるのと似ていた。

 ネット社会の現在には情報が次から次に溢れてくる、それ故に情報の真偽を見極める時間もない。誰もが情報の発信主になり得る、それ故に身勝手な情報により人々を右往左往させる。「Modernity has failed us」技術の進歩とともに、現代は人々の倫理も生活も置いて行ってしまったのだ。

 目をつぶり、耳を覆い、口をつぐみ、現代に悲嘆し何もしないことが身を守る術なのだろうか。いや、そうではない。こんなに悲惨な物事を並べ立て悲痛に叫ぶ彼は、それでも「Love it if we made it」と歌っているではないか。こんな世の中だからこそ、何かを成し遂げることは尊いことなのだ。

 私はこの春から海外に留学する。一年は帰ってこない予定だ。自分は何を成し遂げることができるのだろうか。慣れぬ環境、この目を通じて見る世界の有り様。抗って抗って、「何かを成し遂げることは素晴らしいのさ!」と高らかに宣言したいのである。この曲を伴って。

 

 

「Be My Mistake」

@tomato99lol

 間違いを犯す。自覚的に確信的に犯す。一度きりの間違いを犯す。その間違いが自分にとって甘美で素敵であるほどに、自分の罪深さをより感じ取ることになる。私の罪は人を傷つけるものだっただろうか。

 「若いのだから、考えなしに間違いを犯したって構わないんじゃない。」と言われた。残念ながら私には、喉に刺さった魚の骨に気付かぬような鈍感さは無かったらしい。せめて罪の意識に苦しむのは自分だけでありますように、だってこれは私の犯した間違いなのだから。

 人の心に侵入する歌声とアコースティックギターに聴き入り逡巡していたら、部屋のろうそくが今にも燃え尽きそうだった。

 

 

「Sincerity Is Scary」

@runrunrun_72

 朝起きる。カーテンを開け差し込む朝日に呻き声を上げる。朝食を作り、味付けが上手くいったななんてぶつぶつ言いながら食べる。歯を磨き、わくわくしながら支度をする。そしてお気に入りの靴を履いて出かける。ヘッドホンをつけ、トランペットが聴こえてくる瞬間から、輝かしい今日が始まるのだ。

 20分少々の道のりだってそこには発見で溢れてる。この季節にはこの鳥が鳴くんだな、あそこの店は看板を変えたんだな、この時間帯はサラリーマンが多いんだな…。世界を自分の目を通じて見れば、自分だけの感情が生まれる。それを皮肉に溢れるデジタル世界の流儀に沿って表現するなんてもったいないね。

 ネットともなれば無限にいる「周りの人たち」の考えなんて手に負えないのだから、気にしても仕方ない。自分を騙さず、自分に正直に、自分だけの言葉で心を表したいな。いつもの通学路、ハイハットのリズムに合わせて進む足はおのずと速くなる。

 

 

「I Like America & America Likes Me」

@tripvote11

 先月、私は留学中の友人に会いにアメリカに行きました。いろんな観光地へ行ったり、素敵なバーで音楽を聴いたり。日本から来たと言うと「サービスだ!」と多めにお菓子をくれた気さくなお兄さんとのやり取りは愉快でした。

 アメリカは銃社会だと言います。私も滞在中にたまたま本物の拳銃を目にすることがありました。調べてみると実際には約3分の1の世帯しか銃を所持していないそうですが、やはり銃とは無縁の日本に普段から住んでいる者からすると慣れないものです。

 アメリカでは銃規制の声もあり、実際に規制を支持する人は多いと友人が話していました。しかし国の成り立ちや合衆国憲法との関係、また生活における平等や安全という面から銃が生活の一部に含まれているものを一気に変えるのは難しいのも理解できます。

 社会を変えるのは若者です。50年も60年もかけてようやく変えることができるのではないでしょうか。正しいと思うことを信じ、自ら声を上げること。彼ら自身がアメリカという国を愛しているから。国民なくして国家なし、だから。

 日本に帰ってきて、アメリカとの違いはもちろん類似点がはっきりと感じられました。私も日本という国が好きです。「Believe, and say something…」

 

 

「The Man Who Married A Robot / Love Theme」

@iriswons08_now

 実家でこの曲を流していた時のこと。珍しく母親が寄ってきたかと思ったら「なに、この薄気味悪い曲は?」と一言ポツリとこぼすのだ。Siriが淡々と独白を続けるこの曲のどこが薄気味悪いのか、理解できず私はしばし頭をひねる必要があった。

 これまでの時代の当たり前が僕らにとってそうじゃないように、僕らにとっての当たり前が他の世代にとっては当たり前じゃない。機械の音声は今やそこら中で耳にするし、話し相手や楽曲を歌うボーカリストにさえなる時代だ。しかし前の世代の人には無機質で冷たい音声として響くこともあるのだろう。

 この曲で描かれる「ロボットと結婚した男」は不幸で哀れだと断じることはできるのだろうか。彼は希薄な人間関係しか持たず孤独であり、インターネットだけが大切な存在だった。二人で言葉を交わし、愛を確かめ、そして世界の片隅で死んでいった。

 しかし彼は、「Man does not live by bread alone.」と聖書の一節を引用する。生きるのに物体的満足では足りず、精神的なよりどころが必要だという意味である。彼は幸せだったのだ。先に言ったように時代とともに「当たり前」なんてものは変わる。ならば彼の幸せを今の時代の物差しで測ることなどできないのではないか。

 時代とともにテクノロジーは進化する。テクノロジーが進化し人々の生活も変わり、愛の形さえ変わる。だからこそ自分にとって何が大事なのかを見失うな、そう語りかけてくれているようで、やはり僕にはSiriの音声が暖かく感じられるのだ。

 

 

「Inside Your Mind」

@heartshapecat88

 君はどう思っているのかな、心を覗き込んでみたくなる。会っている時間も、会っていない時間だってSNSがあるから、ずっとあなたを目にしているようで、あなたのことばかり考えちゃう。ある意味文明の呪いよね、これは。

 インターネットがあるおかげで、物理的にも時間的にも精神的にも、相手との距離の概算を誤りがちになる。ふと届くと思って伸ばした手が錯覚をすり抜けるからこそ、正しい現像を捉えるために、君が何を思い何を好み何を夢見るのか知りたいのかな。

 

 

「It’s Not Living (If It’s Not With You)」

@grow19whiskey

 まるで麻薬のような甘い人間関係に溺れてしまう。決して叶わぬ慕情を抱く相手との、友達として過ごす時間。好きな本や映画、今日聴いていた音楽について話す時間。行ったことのない場所に二人きりで行って、見たことのないものに瞳を輝かす時間。

 仲の良い友達同士として振る舞えばとても楽しくて、好きな相手と過ごす時間は何物にも代えがたかった。このままでいればうまくいくのに恋人同士になりたい自分がいる。

 相手の友情に付け込んでいるようで、拭い去れない自分の思いを騙しているようで、身体の奥底から血液がバシャバシャと沸騰する。「Collapse my veins, wearing beautiful shoes」というこの曲の一節が聴こえる。

 薬物中毒のような2人の関係を断ち切ったとして、また友達としてやり直せるだろうか。どうしようもない自問自答を繰り返す間、軽快でポップな曲調に乗せて、「It’s not living if it’s not with you」と歌う歌声が鼓膜から伝わり、頭蓋骨に何度も反響した。

 

 

「Surrounded By Heads And Bodies」

@angela12riri

 同じ痛みを抱えた知り合いがいました。いえ、知り合いというにも足りないくらいかもしれません。一時期、私は放課後になると図書館に行き閉館までずっとそこで過ごしていました。イヤホンで音楽を聴きながら、気になった本を手に取り読んでいました。

 毎日通っていると、いつも同じ時間に少年がいることに気づきました。なのであるとき話しかけてみたのです。「何を読んでいるの?」「アメリカのポストモダン文学だよ、David Fosterっていう作家の本なのだけど。」

 私は国内の本はよく読みますが海外文学には疎く、その作品も知りませんでしたが、少しだけ興味を持ちました。毎日話すうちに彼も少しずつその作品について教えてくれました。無表情に見えた彼も心なしか人らしさを感じられるようになりました。

 やがて私は進学し、好きな音楽について話せる友達もできると、ぱったり図書館に通うことも無くなりました。そう、私は自分の好きなものについて語り合える友人を全く持たなかった故に、疎外感を避けるべく知り合いが誰もいない図書館へ行って、音楽を聴こうと思ったのでした。

 彼もそんな存在を求めていたのでしょうか。この曲を聴いていたら、ぼんやり彼とのやりとりを夢に見ました。彼への気がかりから夢を見たのか、この曲が私に夢をみせたのかはわかりません。

 

 

「Mine」

@flowerwerchrr

 流れる時間がほんの少し遅くなる。この曲が魔法をかけているようなのだ。優しげなJazzの響きは何十年も前から存在する普遍さがあってか、白湯のように沁みる。ゆっくりと進む時間が、考えを深める契機になる。

 私もあなたも、社会人になり相変わらず忙しく過ごしていますね。少し強めのお酒をグラスに注いで、少しずつ中身を枯らしながら一緒にガシューウィンを聴いていた時間が懐かしいです。今ではなかなかそういう時間が取れませんが。

 「I see sunshine because I know that you are mine」という一節がこの曲にはあって、ついつい頷いてしまうよ。忙しく日々を過ごしていても、君の存在が助けになってます。もっと関係を深めるべく一歩進めるべきなんだろう、だけど怖さもある。あなたの無限の未来を僕が狭めてしまうんじゃないかって。

 やるべきことをやらなくちゃいけないよ、歌声に絡むトランペットの音色はそう語りかけているようで、小さい頃に優しく言い聞かせてくれた僕のおじいちゃんの声みたいだった。

 

 

「I Couldn’t Be More In Love」

@intowneuro79

 今の時代、立ち止まる時間が僕らにはあまりない。ネットに出た情報はあっという間に拡散するし、そもそも大量に流れて行く。文化にしたってそうで、世界のどこにいたって、ネットを通じてすぐに出たばかりの音楽を聴けるし、本だって家から出ずとも電子書籍としてすぐに手に入る。

 人間関係だってそう。送ったら数日かけて相手のもとに届いていた手紙、往復にかかる時間だけ相手のことを考える暇があっただろう。それがメールとなり、SNSとなった今、タイムラグ無くやり取りできるようになった。

 時代のスピードに僕は付いていけてない。きっと、行き遅れた前時代の人種なのだろう。それでも良いのだ。あなたが好きで堪らないのだという感情を噛み締める時間を大事にしたいから。周りの風景はとんでもない速さで過ぎ去っていても失う恐怖はない、手を繋いでいるものの温もりを感じられているから。

 読み返してみると恥ずかしくなるけれど、あまりにもストレートに甘々に心の奥底から絞り出すように「I couldn’t be more in love」と歌い上げる歌声に少しだけ勇気をもらったことにしてほしい。

 

 

 

 

 …アコースティックギターストローク、そしてピアノの音色がそこに重なる。僕の一番大好きな曲、アルバム最後の曲「I Always Wanna Die (Sometimes)」にさしかかる。ぎょっとするタイトルに、壮大で王道のロックバラードだけど少し憂いのある曲調。でも不思議と僕は暖かさを感じるのである。たぶん僕の好きないろんなバンドの楽曲と同じ香りがするから、ではない。

 僕にとって孤独さとは無意識に自分の「死」を照らすものだ。考えて考えて考え込む。そして部屋の片隅に座り「いつも死にたいと思っている」かの様な表情を時折浮かべるのだ。しかし絶望の表情では決してない。死を思い、死に向かって進むからこそ、あらゆるものに影響されながら、うまくいかない生活の中で、それでもただただ何かを積み上げていくことができるのだから。暗い中にこそ希望が見えるのだと僕は考える。矛盾してるようなことを同じようにこの曲も歌っている。僕と一緒だ。これで良いのだ、無理にうまくやろうとしないで。人生幸せかのような表情でいなくとも。大事なことのために、できることをやっていく。これで良い。

 

 

 

 回転していたレコードが止まり、音が鳴りやんだ。1時間に満たない時間だけど、曲数の分だけ様々な感情が湧いてくる。僕が楽曲の歌詞をわざわざ和訳するのは、まっさらな状態で楽曲を初めて聴いて、そこに抱いた自分の感情を言語化する糸口を探したいからだ。自分の英語力の無さを恨むべきところだが、歌っている歌詞の大部分はそのままでは聞きとれず、理解もできていない。だから曲に対するファーストインプレッションは、常に音のみに対するものだ。音楽レビューを書いている専門家やマニアのように音楽性も他のアーティストとの関連性、時代を映す音楽シーンといった背景も分からず、ただただ聴こえてくる音だけに耳を傾ける。そして芽生えた感情の正体を知りたくて、この楽曲は何を歌っているのか歌詞から辿っていくのだ。果たして、自身の抱いた感情はうまく言葉にできただろうか。自分で判断できることではなく、同じ音楽を聴き、僕の言葉に目を通してくれた他人だけが判断できることなのだから厄介である。

 

 

 

 やはり僕は音楽が好きなのである、どうしてかはまだうまく言葉にできないけれど。いや一生できない気がするし、できなくて良い気もする。

 ブブブ…。スマートフォンが揺れる。誰からの連絡だろうか?手に取りロックを解除する。

「The 1975の新しいアルバム聴いた?めっちゃいい曲ばっかりなの! サウンドも歌詞もほんと良くて…。もし聴いてたらまた今度話そうよ、聴いてなかったらすぐ聴いて!!」

 僕はゆっくりと丁寧にフリック入力した。「聴いた!めちゃくちゃ好き!レコードも買っちゃった笑 なら明日授業終わりにでも話さない?学校の近所にレコード流してくれる喫茶店あるからそこで」

 

ネット上の人間関係についての簡単な調査

ネット上の人間関係についての簡単な調査

 

 

2019年サマソニヘッドライナー予想

年が明け、いよいよサマソニのヘッドライナー含め出演者の発表間近ですね。ネット上でも各出演者予想から真偽不明のリーク情報まで溢れ返っていて「盛り上がってきたなあ」と実感します。(この時期が一番楽しかったりする)一応今年も各フェスヘッドライナーや他の出演者を予想してみます。いや半分大いなる願望込みなのですが。

 

SUMMER SONIC 2019

DAY 1 

ONE OK ROCK or 宇多田ヒカル

その他 Bring Me The Horizon, Twenty One Pilots,Avril Lavigneなど

DAY 2 

Coldplay 

その他 The 1975, Teenage Fanclub

Paul Draper,[Alexandros]など

DAY 3

Green Day

その他 WeezerTahiti 80,ELLEGARDEN,B'z,

Zebraheadなど

大穴予想

U2,Childish Ganbino,Ariana Grande,The Chainsmokers

 

 20周年で3日間開催のサマソニは早くも公式発表で、日本人ヘッドライナー含め3組とも既にオファーがうまくいってるようですので、昨年同様ヘッドライナー以外のアーティストのブッキングも順調なんじゃないかと思われます。去年の新譜が話題となっていたThe 1975はサマソニにデビュー当初から出ているバンドであり、ここでメインステージ準トリに登場することが期待されます。またサマソニにゆかりのあるアーティストも多く出るようなので、第1回から出場していた中で、今年新譜をリリース予定のWeezerや既に来日が決まっているMansunのPaul Draper,あるいは昨年来日公演があったTahiti 80あたりが来そうな予感です。

 そんな中、ヘッドライナー予想ですが話題になってるのは日本人ヘッドライナー。BABYMETALなども予想されるが、去年サマソニ大阪会場を盛り上げ今年新譜リリース予定のONE OK ROCKが候補一番手かなと。個人的には「ボーダーレスなフェス」という公式記事の記述から、世界的に知名度があり、一方で海外公演を行わないアーティストが選ばれると、海外からサマソニに足を運ぶ方々も増えて良いなと考えてます。そういう点から、今年発売されるゲーム「KINGDOM HEARTS Ⅲ」でSkrillexとコラボした楽曲を含め主題歌や挿入歌を提供した宇多田ヒカルを推したいです。

 第1回のサマソニに出場し、今なお音楽シーンのど真ん中でやっているバンドがヘッドライナーとして帰ってくるのは、分かりやすく熱いストーリーではないでしょうか。多くのファンが長年待っているGreen Day、音楽ファンに広く愛されるColdplayがヘッドライナーなら安心です。

 大穴予想ですが、ポップに振った場合に、日本でも幅広く支持されるAriana GrandeとThe Chainsmokersのダブルヘッドライナーも盛り上がると思います。そして音楽ファンを最も驚かせるならば、ここ数年ずっと来日を期待されるU2が満を持して登場するしかないです。セットの大きさからなかなか単独公演ができてないU2ですが、フェスならばセットを完全に持ち込まなくとも済みますし、2年前には海外フェスにも出ています。もしくは、去年惜しくもブッキングできなかったChildish Ganbinoに再びオファーし、Chance The Rapperのように実現するか。

 おそらくあるであろう来週~再来週の発表に期待です!

 

(ちなみにフジロックのほうは、Arctic Monkeys,The Cure,EMINEM or The Weekndをヘッドライナーに予想します。その他James Blake, Florence + The Machine, Janelle Monae, Idlesなど)

 

今年も素敵なフェスが実現し、多くの音楽ファンが盛り上がると嬉しい限りです!!